2023/1/17 Tue
リアルとファンタジーのあいだ.
Zwiftの友である「Amazon Prime Video」にて山岳映画を2本連続で観た.
まずはこれ.
現在,同題名の物語は4つ.
まず原作となる夢枕獏の小説『神々の山嶺』(「いただき」では変換しません).
かなり以前に読んだ.
「発見されたマロリーのカメラは本物か否か」のミステリー仕立てから始まって,とんでもなく自我が肥大した山岳家の「冬季エヴェレスト無酸素南西壁登頂」への挑戦...と,当時の読書録には書いてある.
評価は見事に星5つ.
作者自らが「どうだまいったか!」と言っていた記憶もある.確かに.
次に『孤独のグルメ』で有名な谷口ゴロー...じゃなくてジローさん作画によるコミック版.
Kindleで購入し読了済み...だったことをすっかり忘れていた.
いまさら再読.これまた素晴らしい.
生涯ベストのコミックに上げる人も多いという.
特に山の画力は圧倒的.
この質感は写真トレースでは絶対に出せないだろう.
そして食事シーンの素晴らしさ.
その詳細な説明と描写も相まってリアリティの鬼.
さすがジローさん.
ただ,原作にもある(?)無理矢理感なアクション要素が玉に瑕.
羽生のモデルになった人(森田勝)に実際にこんなことが起きた? それはないだろう.
個人的にツボなのはカトマンドゥの描写.
Kazchariも1990年,インドからバスでネパールに入国.
ポカラからカトマンドゥまで旅をした.
登山?
ポカラから日帰りで行けるトレッキングはしたなぁ.
つまりマチャプチャレのふもと?
途中の山道で巨大なザックを背負った日本の登山隊の人たちに挨拶した記憶がある.すんごい迫力でした.
次に邦画の阿部寛&岡田准一主演の『エヴェレスト 神々の山嶺』.
リンクを貼っているものの未鑑賞.
実際にベースキャンプまで登って撮影したという宣伝文句には惹かれるものの,「ギアが全てスポンサーの新品モンベル製で不自然」だとか「ストーリーが変な方向に改ざん」と聞き,すっかり興味をなくした.
レビューを見ると賛否両論(どちらかと言えば否多め).
もともと昨今の邦画の「お涙頂戴過剰演出」と「説明ゼリフだらけ」にイライラさせられることが多いので観る予定なし.すいません.
ただし,原作,コミックにある超有名な羽生のモノローグ.
これはしっかりと描写されているらしい.好ポイント.
やすむな。 足が動かなければ手であるけ。 手が動かなければ指でゆけ。 指が動かなければ歯で雪をかみながら歩け。 歯もだめになったら目で歩け。 本当にだめだったら、本当にもう動けなくなったら、思え。 ありったけの心で思え
で,ようやく本題のアニメ『神々の山嶺』の感想.
なぜかフランス製作である.
ざっくり言うと,コミック版を元にして再編集っつーか,上映時間内におさまるように印象的なエピソードをオリジナルでつなげた感じ.
結論.
レビューでの評判は上々だが,Kazchari的にはイマイチだった.
確かにセリフが少なく,BGMが抑え気味なのは好印象.
それを受けてか,ストーリーもものすごくタンパク化.
リアリティと言えばそうなのかもしれんが,熱さはあまり感じず,物足りなかった.
さらに,なんつっても...先程あげた,羽生の”あのモノローグ”が丸々カット.
さすがにこれはない.
フランス人にはわからん感性なのか?(偏見)
日本の描写もそれっぽいというかほぼ違和感なし.
少なくともZwiftの「MAKURI ISLAND」よりずっとジャポネしている.
たぶんスタッフに日本人がいるのだろう.
しかし,なぜか岸の遭難死を伝える新聞だけが変.
わずか数秒の描写だが,岸の写真の周りが「震災直後の福島発関連記事」だった.
なぜ?
チェックミス?
つーことで,手軽さ(再読しやすい)や面白さ,満足度ではコミック版が一番,続いて原作かな.
山岳コミックでは,超美麗な作画と壮絶なストーリー展開の坂本眞一の『孤高の人』が印象に残る.
本格的に山やっている人だと,また評価は違ってくるのだろうけど.
で,「次に観る」で上がっていたのが,これ.
原題『EDIE』.
脳梗塞で倒れた夫を30年間介護し続け,80歳を越えてしまったイギリス人女性,イーディ.
夫の死後,娘に老人ホームの入居を勧められる.
部屋の片付け中,昔の日記を娘に読まれて関係悪化.
一人残されたイーディは,昔,父からの絵葉書に描かれたスコットランドのスイルンベン山に登ることを思いつく...というお話.
以下,ネタバレ.
まぁ,それにしてもこのばーさん,性格が悪い.
もしくは不幸な人生により悪くなってしまったのか...いずれにせよ非常に頑固.
一方で「正直に生きたいと思いつつも,それを口に出してはいけない」という変な縛り(我慢?)を自分に課してたりする.
そう,めちゃめちゃ面倒くさいのだ.
象徴的なのが冒頭,こっそり肉を焼いていたのを,娘に「こんなの不健康」と咎められ,捨てられてしまう.
ここでばーさん,何も言わない.非常に腹立たしい.
高齢者ほどタンパク質重要なのに!(そっち?)
それらの不満は日記にぶつけてきた.
結婚してから今まで,ずっとこうだったのだろうか?
そういうのは絶対,顔や態度に出る.
夫や娘との関係がよろしくなかったのも,このばーさんの性格が主な要因の一つだろう.
さて,夫が死に娘と離れ,自由になったイーディは,山に登るため列車に乗ってスコットランドに向かう...と思いきや,一旦やめかける.
あーイライラする.
うん? もしかして,視聴者にそう感じさせる時点で監督の術中に,見事にはまっている?
ホームコメディ,ハートフルムービーとは真逆のアプローチ!
実に新鮮.
当然この後「このばーさん,かわいい,かっこいい!」という風にもっていく展開になるはず...と思っていた時期がKazchariにもありました.
その先もジョニィを始め,出会う人々(ついでに自分)に悪態付きまくり,ここまでかわいくないばーさん,邦画では絶対ありえない(たぶん).
なんだかんだで後半.
ジョニィのガイドを断って,一人で登ることを決意.
ドローンを駆使した映像も相まってようやく旅の始まりを予感させる.
ここからはばーさんの逆襲,視聴者の好印象も爆上がり!...になるはずが,いきなりボートを湖に下ろす際に手伝ったもらった他のハイカーを罵倒.
びっくりした.
文句ばっかりでは何なので良かったところ.
終盤も終盤,ザックを置いて這うように崖を登るイーディの姿.
役者の演技も相まって,ここはヘタな雪山映画よりも迫力あった.
ここは,ここのシーンだけは素晴らしかった.
そうまるで,羽生の例のセリフ「想え」がかぶってもおかしくないぐらい.
しかし...この後がよくない.
マジで全て台無し.
電話がつながらないことに不安を覚えたジョニィが,慌ててイーディの後を追う.
まずザックを発見,さらに途中で疲れ果ててひっくり返っているイーディを発見!まだ死んでなかった(失礼な).
そして...ジョニィに支えられながら無事山頂へ...ぐわぁ~全てブチ壊し.
ここはイーディが一人で登らんとアカンやろ~
これまでの意地はなんやったんや~
以下はあくまでKazchariの願望.
ラスト,少なくとも山頂まではイーディは一人で登る.
ジョニィがイーディを発見するのは,山頂で佇む彼女の姿⇒エンドで良いのでは?
それこそファンタジー? 非リアル?
いやいや,それなら一言も話さない山小屋狩人のレスキュー話は不要.
最後の最後までスコットランドの天気のようにすっきりしない映画だった.
やりたいことやる高齢者という視点では『ダージリン急行』が面白かったなぁ.
全然毛色の違う映画やけどな.
さて,山登りと言えば,Kazchari家恒例の高齢の息子と男二人キャンプ.
昨年のGWは日高のアポイ山に登った.
登る前も,そして帰宅後も「二度と山は行かねぇ」と文句ばかり言っていた息子だが,結構,事あるごとに山での出来事を話す.
そう,辛くて強烈な記憶ほど脳内に残るものなのだ,息子よ.
さて,次はどこを登らせてやろうか...