2024/6/16 Sun
Nouvo Toilette Paradiso
晴れ時々曇り.温度:23 ℃,湿度:68%,体感温度:23 ℃,風速;9.5km/時,風向:SSW
前回はこちら ⇒ Flèche Hokkaido~おだってるJAPAN,かく戦えり(その2)
なんてこった.
PCが閉まっている.レシートが手に入らん.
ドアの張り紙を確認する.
「人出不足により24時間営業を取りやめて午前0時閉店にしました」
とのこと.働き方改革めぇ.
現時刻は0:45.完璧にアウト.
万策尽きたかと思いきや,Pikaさん,慌てず騒がず.
証拠写真で認定はされるとのこと.
雨の中,iPhoneにて3人の顔と店名が入った写真を自撮り.
これで訪問の証拠はクリアだが,問題は補給である.
この後,クライマックスの狩勝峠越えが控えているのだ.
食料が手に入らないとなると,急に空腹を感じてきた.
「鹿追で補給すべきだった」と後悔しても後の祭り.
もちろん町内の別の店も全てクローズ.
近くに大きい町はない.
すると,Kさんが「あっちに食料の自販機らしいものがありますよ~」と指さす.
確かに.
行ってみる.
...残念ながら“お店の味を再現”系の冷凍ラーメンだった.
こうなれば進むしかない.
とりあえず,登攀直前にあるシェルターまで移動する.
シェルター着.
ここで手持ちの食料を確認.
まるで無人島に漂着,もしくは山中で遭難したかの有様.
幸い,何の食料も持たないというメンバーはおらず,餓死,もといハンガーノックは避けられそう.
ちなみにKazchariはミニクリームパン2個.グミ少々,塩タブ数個,エナジージェル2パックを残していた.
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休憩後,各自ウェアやチャリをチェック.
1:30.いよいよ約束の地(いくつあるんだ?)狩勝峠の公衆トイレまで10kmのヒルクライム開始である.
ここも斜度はそれほどキツクない.
基本2~3%,時々6%程度.昨日の三国峠と似た感じ.
良くも悪くも「合」ごとに標識がある.
路面も広く,交通量も(皆無とは言えないが)少なく,快適に踏む.
時折,林の中からガサガサ音が聞こえるのがご愛敬.
9合目を越えると,トンネル風の長い覆道が出てくる.
ここを通過する頃,ようやく“あれ”がやってきた.
そう,睡魔である.
朝6時起床として,既に20時間起きている.眠くなって当然である.
思えばKazchariの400ブルベの平均タイムは19時間前後.
まだその距離には達していないものの,時間の方が活動限界なのだ.
マイクロスリープのやばさはないが,頭にもやがかかる中,最後のふんばりで狩勝峠着.
白い霧の中,ほんのりと明かりが灯る公衆トイレが見えた.
逡巡することもなく,チャリごと中に入る.
広くて立派な施設だ.
これまでも昼間に使ったことはあったが,どういう構造だったか覚えていなかった.
実はこのトイレ,狩勝峠を深夜通過するブルベでは,最強の休憩場所として有名.
一番の理由は暖房が入っていること.
試される大地,北海道では夏の夜と言えど,一桁気温になることはめずらしくないのだ.
特に個室は暖房便座も設置され,中にはそれを抱きかかえて寝落ちした猛者もいるとかいないとか.
さてKazchari,とりあえず,しっとり濡れたレインウェア,グローブ,ヘルメット,キャップをキャストオフ.
ジャージもインナーもビブも汗やら何やらで,びしょびしょである.
それがおっさんの体臭とブレンドされて異臭を放つ.
まぁ,これは長距離チャリダーの宿命ですな.
さて,予定通りここで仮眠タイム.
この暖かい部屋(あくまでトイレです)で,壁に背を当てて座り込む.
うん? 何かおかしい.
な,なんじゃこりゃ! 床が暖かいぞ!
そう,前知識ゼロだったが,このトイレ,暖房は暖房でもなんと床暖房装備だったのだ!
幻覚ではない.手をつくと確かに暖かい.
ここはパラダイスですか? いつの間にか三途の川を...
いや,まだ生きている.
となればすることは一つ.
まずウェア類を床に広げる.
横になって,ジャージの背中と袖を乾燥させる.
身体の保温と衣類の乾燥の一石二鳥!
もちろん,これはマナー違反.
良い子はマネしちゃダメです.
だがしかし,もう夜中の2時を過ぎている.
こんな時間に峠越えするドライバーもおらんじゃろ...と意識がもうろうとしてきた.
その途端,スマホのアラームが.
3時である.
仮眠というより30分ほど目を閉じていたが正しい.
それでも競技は続いている=アドレナリンが出まくっているのか,とりあえず眠気は去った.
出発の準備をする.
念のため,持参したカフェイン錠を服用.
処方上は1回2錠とあるが,1錠にとどめた.
ある意味劇薬やしな.
南富良野へのダウンヒルに備えPikaさんも防寒準備.
フェイスマスクまで用意したほぼ冬仕様.
Kazchariはウインドブレーカーの上にレインウェアという,手持ちの装備をフル活用.
これ以上は厚着できない.
ただし,床暖のおかげでジャージとインナーはすっかり乾いている.
快適に走れそうだ.
トイレの外に出る.
北国の夏は夜が短い.
霧は多いものの,既に空が白みかけている.
それよりなにより...寒い.
ゆっくりと漕ぎ出す.
もちろん北海道名物,固定式視線誘導柱,つまり「矢羽根」が並んでいるのだが,この国道のモノはグリーンの点滅式.
注意よりも眠気を誘う.
路面凸凹,それに濡れてスリッピー.
おまけに脳は半分寝ている.
慎重に下る.
その時である.
左の森から茶色い塊が飛び出し,しばし並走.
そしてKazchariの前を横断して,反対の森へ走っていった...鹿だ.
数秒速く下っていたら衝突していた.シャレにならん.
標高が下がると気温が上がる.
太陽も上がる.夜明けである.
ここでウルトラセブンの戦闘BGMが脳内再生.
太陽は偉大だ.
だいぶ眠気が消えてきた.
それに路面も明らかに乾いてきた.
峠を境に天気が異なっていたようだ.
下り+追い風も相まって,幾寅駅前にある約束の地(いくつあるんだ)「セブンイレブン南富良野店」に颯爽到着.
PCでもなんでもないが,昨夜からロクな物を食べていない.
ここで朝食とする.
¥30引きのブリトーシリーズ美味し.
ここから徐々にウェアを軽くしていく.
まずはレインウェアをキャストオフ.
道の駅「南ふらの」を通過.
うむ.徐々に自宅からの日帰りサイクリングエリアに近づいてきた.
事故多発地帯の樹海峠(三ノ山峠)をクリア.
次のPCを目指す.
ここで先頭を走るPikaさんの挙動が変.
急にスピードが上がったり,落ちたりとムラがある.
何かのメカトラ? そう言えばタイヤは大丈夫なのか?(忘れてた)
やがて停車.こちらを振り向いて「すいません.眠む味(?)がひどいです.服脱ぎます」とのこと.
一度聞いただけでは意味不明だったが,ようするに厚着のせいで睡魔に襲われたらしい.
停車場所はちょうどコイン精米所の前.
おっ,これは“ブルベあるある”の「精米所仮眠」が見られるのか?
そやけどすっかり明るくなったこの状況だと周辺住民の目線が...単にジャケットを脱いだだけだった.
走行再開.
そして見えてきたのが【PC3:334.2km地点 セブンイレブン富良野山部店】である.
ここまでは順調.そう,ここまでは...
(その4)へ続く.