全ては夢の中~『GQX』の考察から

2024/1/27 Mon

みんなで騙されよう

テレビ番組の番宣映画としては異例の大ヒットとなっている『機動戦士ガンダムGQuuuuuuX-Biginning-』(以下『GQX』).

Kazchariもネット(サムネ)による不意のネタバレを回避するため,初日に鑑賞した.

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX-Beginning-』を観た~開始0.5秒で泣ける

「下手にネタバレすると,観ていない人に〇されそう」なレベルだったので,このブログのみならず,良識あるYouTuberさん達も核心には触れず,小出しに情報を発信していた.
これって珍しいパターンでは? それくらい力のある作品だった.

で,公開してから1週間以上経過し,公式もネタバレPVを打ち出し始めたため,界隈でも解説・考察動画やブログがバシバシアップされるようになった.

そのいくつかを鑑賞&拝読.

ポスターや画面の隅にちらりと映る小物,キャラのセリフ,ちょっとした表情から真意をくみ取り,パンフのスタッフ発言,または古今東西の名作のプロットを参考に『GQX』ワールドを解き明かし,今後の展開を予測する...

いやぁ,スゴイわ.
シャア!これが人の叡智だ!

Kazchariなんて単純に「ファーストのパラレルやろ.面白ければなんでもあり!」レベルで観てたけど,考察マニアの方々には超一級のミステリとなっている.

映像作品では一時期タイムリープ物が大ヒット.
有名どころでは『バタフライエフェクト』『まどかマギカ』など.

ついで『スパイダーマン:ノーウェイホーム』によって,マルチバースという概念(手法)が一般人に浸透.

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を観た~そう来たか!

では『GQX』も,単純に”マルチバース”で片付けていいのか?

前半と後半での絵柄の違いをどう説明する?(『スパイダーバース』では様々なルックのキャラが同居しているけど)

それに,1年戦争の描写と違いクランバトルにはまるでリアリティがない(民間人にMSの整備は無理?).

それらの疑問に対し,数名の方が『GQX』=「作中作」説をあげている.

要するに,前半の「ジオン勝利の物語」は,マチュ達の世界で広く読まれている「架空戦記小説」であり,実際には戦争は継続中,もしくは勝っていたとしてもシャアの活躍なんてなかったのが「現実」.
もしくは,後半のマチュパートこそが「物語」であり,正史の中で読まれているラノベ的書物である,という説.
「現実感がない」とつぶやく主人公.いわゆる「胡蝶の夢」的構成.

一番近い構成の創作物として,フィリップ・K・ディックの『高い城の男』をあげている人も数名.

さらには,当然ながら『GQX』そのものが物語=作り物であり,その世界を観ている我々も物語の一部...あぁキリがない.

カラーと言えば旧ガイナックス.
『エヴァ旧劇』で,映画を観ている観客(オタク)の実写画像を公開した前科もあるしな.

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に

かなり信ぴょう性が高い考察ではあるが,こうした一般視聴者が思いつくようなネタは外してきそう,”あの”カラーなら,さらに越えてきそうな気がする.

そうそう,『エヴァ』と言えば『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開前に「最初の「序」「破」「Q」は「NOT」ルートと「NOTなし」ルートを交互に上映している」という考察を上げている人がいて感心した.

「序」⇒ YOU ARE (NOT) ALONE. シンジ君は一人じゃない
「破」⇒   YOU CAN ADVANCE.  シンジ君は進める
「Q」⇒ YOU CAN (NOT) REDO.  シンジ君はやり直せない

確かに映画の内容と合致.
となると,NOT有り無しが逆転したルートもあるので「別の機会に映画化されるのでは?」と期待したが,『シン』は意外にも普通の続きモノだった.

正確には「全てのエヴァにさよなら」なので,「NOT有り無し交互説」も含んでいると言えば含んでいるのだが.

閑話休題.「作中作」に話を戻す.

「作中作」もしくは「劇中劇」作品の歴史は古く,Gemini先生に訊いてみると,『アラビアンナイト』『ドン・キホーテ』『カラマーゾフの兄弟』などが例として返ってきた.
映画だとクリストファー・ノーランの『インセプション』も該当(?).
夢の中で夢を見る夢.完全に頭のいい人向け映画.

インセプション(字幕版)

「作中作の代表」では検索にひっかからないけど,『GQX』は鈴木光司の『ループ』に近い物語構造だったりして.

『ループ』は,言わずとしれた大ヒットホラー『リング』3部作の最終章(スピンオフもあるけど).
初めて読んだ時は「なんじゃそら」と思ったが,「呪い」に整合性を求めるなら”あり”な設定かも.

現実世界においても,古文書や戦記物の記載はあくまで勝者の歴史.
真実とは限らない.
誰かが書いた「物語」が遠い未来では正史として採用されるかもしれない.

ちょうど先日の『べらぼう』第4話では公文書偽造シーンが出てきた.
アナログの方が改ざん記録が残らないため偽造しやすいかも.

まぁ,『GQX』も本放送が始まると新たな考察が乱立.
その後,謎が明かされるまでのお楽しみ期間ですね,今は.

最近はこうした複雑な構造を持つコンテンツが多くなったように思う.
やっか...いや,目が肥えてきた視聴者を満足させるのは大変.

いずれにせよ,公開日の1/17以来,『GQX』の前半パートのせいで,大量のおっさん達が夢を見せられ続けているのは確かである.

コメントを残す