久々にアニメの感想:『黄泉のツガイ』が面白い

2026/5/29 Fri

これぞ王道

春アニメ『黄泉のツガイ』を最近見始めて,ようやく最新話まで追いついた.

黄泉のツガイ

原作未読組なので,最新の展開は知らない.
あくまでアニメ視聴のみの感想(8話まで)
面白さと既視感と違和感が混ざり合っている.

誰もが思う通り『ジョジョ(3部以降)』『呪術廻戦』『うしおととら』『からくりサーカス』などなど,大ヒット少年漫画の集大成(ジュビロ先生が2作も入っているのがご愛嬌)
それに『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』成分も.

ジョジョの奇妙な犬神家?~『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

言うなれば「ジャパニーズ・ファンタジーの伝統芸能」という名の王道作品.

一歩間違えば「パクリ」で炎上しそうだが,そこは荒川先生作,Kazchariを含め,世間的にも高評価(うちのヨメさんも観ている).
その理由を少し考えてみた.

【様式美という安心感】

『ツガイ』のような王道ストーリーが好まれる最大の理由は「知識・経験の共有」による安心感だろう.
「ツガイ」を見た瞬間,「スタンド,もしくは個別の能力を持つ妖怪みたいなもの」というルールを即座に理解できる.
視聴者はすぐに物語に没入できるので,ストレスなく展開を楽しめる.
ただし,今後,能力設定を複雑にしていくと,わけわからなくなるけど(「6部以降のスタンド」とか「星間飛行」とか...).

【貴種流離譚構造】

貴種流離譚とは『スターウォーズ』に代表される,実は高貴な血筋だった田舎の若者が,特殊能力を発現させ大活躍.立身出世し故郷に帰る物語を指す.
みんな大好き厨二病.これが嫌いな人はいない.

まぁ,この必勝パターンに荒川弘先生という「一流の画力」「名ストーリーテラー」の味付けが入った.つまらないわけがないわな.

てな感じで,過去の名作をリスペクトしつつも,現代のテンポ感(第一話ラストの衝撃,スピーディだが小出しの情報など)にアップデートしているため,目が肥えた視聴者も「懐かしさ」と「新しさ」を同時に味わえている.

...という定番的な面白さはあるものの,同時に,この作品には他にない強烈な違和感がある.
まだ序盤なので断定は尚早と思われるが,主人公のユルが親しかった村人を惨殺したガブやアサと,ほとんど何の葛藤もなく和解(協力)していること.これが非常に不気味.

死生観が異なる異世界転生物や歴史物,もしくは未来物ならわからんでもないが,あくまで現代日本が舞台(と思われる).
唐突にはさまれるギャグ描写のせいではないが,人の死に対する倫理観が微妙にズレている.
こういうのが気になってしまうのは,Kazchariの脳もいよいよ「ホワイト社会」に侵されつつあるからだろうか.

ただ,荒川先生があえて「ユルという主人公の異常性」を描いているとしたら納得.”まともに見える狂人”ハサウェイに通ずるものがある.

『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』を観てきた

ユルは文明から隔絶された村で育った.
それだけでも現代的価値観とのズレがあっても不思議ではないが,それに加えて狩猟者としても生きてきた.
獲物を殺す彼にとっての死は「悲劇」である以上に「諦念」「ふってわいた理不尽」という野生生物に近い感覚で捉えられている.
幼少期に山賊に殺されかけた経験もそれを補強.
よって,ユルは穏やかで現代的な常識人に見えるが,実は「目的を達成するために感情を切り離して最適解を選ぶ」というサイコパス的な合理性を持つ.

「村人を殺した相手を憎む」ことよりも「自分とアサの真実を知り生き残る」ことを優先する.
この順位の付け方が,道徳ではなく「生存本能」に振り切っているため,従来の主人公っぽくないユルに薄ら寒さを感じる...と解釈するしかない.

いずれにせよ,分かりやすいストーリーと未だ隠されている謎,同時に主人公の特異さが,先を観たいと思わせる原動力になっている.
さすが一流のクリエイターは違う.

楽しみと言えば,同時期の『日本三國』もとんでもない完成度.

日本三國

こちらの感想も後日書きたい.
今年の春アニメは豊作だな.