2023/7/7 Fri
倍速視聴はしないけど
7/1より『ツール・ド・フランス2023』が始まった.
例年だと,一週目は出場選手の顔見世.
つまり,個人TT,スプリントステージ,丘陵ステージ,週末に一級山岳1つだけステージなど,ヴァリエーションに富むものの,まったりペースでスタートすることが多い.
だが今年は別物.
珍しくラインレースとなった第1ステージから全力全開.
早くも総合2強のポガチャルとヴィンゲゴーの争いが見られるなど,とんでもない展開.
第4ステージのスプリントもサーキットゴールが大混乱を産んだ.
道が広すぎ=ライン取りの自由度が高すぎて落車続出というスペクタクル.
そして,まさかのポガチャル失速からの倍返し!の第5,6ステージ.
面白すぎる.
今のところ天気も良く,悪天候続きだったジロの陰鬱さとは真逆.
毎日楽しみにしている.
さて,そんなツールだが,Kazchariは例によってJ-SPORTSオンデマンドの月払いパックで視聴中.
毎晩たいてい21時前後に放送開始となる.
とは言え,ずっと画面を見続けているわけではなく,山場を除き,洗い物やらZwiftなど何か別のことをしながらという,ラジオ的な活用をしている.
トイレ・浴室にも持ち込むけどな.
毎晩23時半には就寝するので,そこで視聴は中断.
続きは翌朝,というルーティン.
そう,ロードレースは中継時間が長いのだ.
一時,スーパースター・ペテル・サガンが「このスポーツは退屈すぎる.オレだったら最後の5分くらいしか観ない」なんてことを発言して物議をかもした.
確かに.
コスパ,タイパとうるさい昨今,競技時間が5,6時間かつほとんどの画面が「おっさん達のサイクリング」というエンタメが生き残っていること自体が奇跡.
さて,先日,このコスパやタイパ志向がすっかり強くなった現代人による映像作品の視聴スタイルについて言及した書籍『映画を早送りで観る人たち』を読んだ.
映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~ (光文社新書)
最初にこの本について知ったのは,数ヶ月前の岡田斗司夫ゼミだったかな.
そこで興味を持ち,図書館に予約を入れたのだが,人気本のためか,なかなか確保できなかった.それをようやく読了.
さて,内容をざっとまとめる,
最近,映画やドラマ・アニメなどの映像作品を倍速再生や飛ばし見視聴する人が増えている.
具体的には「会話のないシーンや風景だけの描写シーンは飛ばす」「連続ドラマのサブキャラのエピソードは飛ばす」など.
さらには「後悔したくないのでドラマ視聴前に先にネタバレ・考察サイトを読む」などのコスパ志向.
これらの行動,Kazchariには,この本の著者同様,作り手に敬意のない失礼な態度と感じらたのだが,本人たちは「買ったモノはどう扱おうが個人の自由」という思考.
こうした人が増えたのは以下の理由.
1)サブスクが普及し,膨大な作品をチェックする時間に追われている.
映画館に行く,ビデオを借りるなどの手間が不要な分,視聴が手軽になりすぎた.
2)SNSで共感し合いたいので,多くのコンテンツを知っておかねば.
多数の人と話を合わせるため,もしくはマウントをとるためには,とりあえす流行りのコンテンツを押さえておく必要がある.
3)全てをセリフで説明する作品の増加.
登場人物自身が状況,心情をセリフで丁寧に説明しまくり.構図や風景,表情からキャラの思惑を類推しなくてもよい=画面を観続ける必要がない.
ようするに,視聴が手軽になったコンテンツをできるだけ多く,早く”消費”したいという効率化が何よりも優先されている.
だが,それはもはや”鑑賞”とは呼べない.
一番驚くのは,ネタバレ禁どころか,むしろ自分からネタバレ・考察サイトをチェックしてから,その作品を観るかどうか決める人がいるということ.
ハズレを引きたくないというコスパ志向に加え,「予想外の展開や心が揺さぶられる内容は疲れるから避ける」という驚愕の理由.
現実の生活で心身ともに疲れ切っているのに,単なるエンタメに芸術性や高尚さなんぞは求めていない.ただ楽しみたい.ひたすら見たいものだけを観たい.激しい感情を喚起させられたくはない...
世の中ハラハラドキドキ,喜怒哀楽も全て体験してなんぼと考える厨二なKazchariには理解できん.
単なる現実逃避に思えるけどな.
...と,こうしたコスパ・タイパ至上主義者に賛同しかねるのだが,次の一文で論破されてしまった.
「自分もAVでは早送りする」といったお茶目な反応が複数あった.たしかに,“目的”のために“物語”を無視して“お目当てのシーン”だけを“繰り返し”視聴する映像ポルノは,快適主義が求めるものと要素としては同じだ.
えー,はいすいません.
ヒトなんて根っこのところではみな同じ.
優劣はないっつーことやね,きっと.
それでも,現代社会のこの膨大なコンテンツの海に放り込まれた結果,「ヒマ恐怖症」になりがちなのも確か.
少しでも時間があれば,スマホを手に取り「情報」という名のエンタメを注入され続けてる.
「我々は暇を恐れすぎている」と,エライ人が言っていた.
つまり脳を休ませて,これまでの知識や経験を整理整頓する時間が必要.
そうでないと,脳が汚部屋になるだけ.
ようするにデジタルデトックスが重要ということやな.
そこで登場するのはやはりチャリ.
「ツール」の放送もダイジェスト版があるけど,やはり同じような画面が延々と流れるLIVE中継を,ダラダラと酒でもチビチビ飲みながらボーッと観るのが心地よかったりする.
そして何より,頭からっぽにして夢を詰め込めるブルベがやっぱり最高.
例えば400ブルベの200~300kmの間なんて,究極の退屈さ.
チャリこそ人生を満足させる最強のコンテンツ!...と言いたかっただけ.