2022/8/23 Tue
魔の3日目.
夜更けの紋別セントラルホテル.
これまでは熟睡が続いていたが,夜中に何度か目が覚めてしまう.
さすがにストレスを感じているようだ.
なにせ釧路方面「暴風雨:確率70%」である.
頭の中にDNFの文字がちらつく.
「なんとか釧路までたどり着ければ,電車で札幌まで行って,そこから当別太美駅...」などのマイナス思考が駆け巡る.
そんなこんなで3時半に起床.
昨夜買っておいた惣菜パンと缶コーヒーをかっこみ,手早くパッキング.
カーテンを開け,外を見ると,ここ紋別に雨は降っていない.
路面も濡れていない.
これからかな?
ありがたいことに,このホテルの大浴場は一晩中入れる.
さすがにサ活する時間はないが,10分ほど温まれた.
ホンマ神ホテルだ.
今日も足の調子は悪くない.
予防措置としてテーピングはするけどな.
エレベーターで1階に降りる.
ホールにはAさん,Bさんのチャリが停めてあった.
同じルートとホテルなのに全然会わんな.
そやけど,こういう長距離ブルベを2人で走るってどうなんやろ?
向かい風ではローテが組めて楽?
あー,ワガママなKazchariにはそれ無理.
多少ペースが落ちてもボッチを選ぶ.
会計を済ませ,5時前に出発.
紋別の超有名オブジェと追えば...
【603.1km:通過チェック6 カニの爪オブジェ】8/23 4:52
オブジェの周囲にはクルマが数台.
釣客だろうか.
国道238号へ.
平日なので交通量が少ないことを期待したが,トラックが多く怖い怖い.
橋があれば側道に逃げる.
このあたりもコンビニが少ない.
いい加減に腹が減ってきた頃,自販機を発見.
左のレトロな自販機はゴミ箱.
右の白い建物は公衆トイレだった.
素晴らしい.無人コンビニやん.
サロマ湖を横目に,次のチェックポイント,能取岬を目指す.
その手前,卯原内の町中でいきなりハンドルがぶれだす.
路面のせいかと思ったが,見事に後輪がパンクしていた.
ブルベ初のパンクである.
「あーあ」とため息一つ.
チャリを歩道にのせ,リアタイヤを外す.
チューブを外して,タイヤの裏側をチェック.
極小,極細の針金を発見.こいつを拾ったか.
タイヤを構成している側のワイヤでなくて良かった(だったらアウト).
修理を終え,小型ポンプでシュコシュコやってると,どこからともなく「おーい,パンクかい?」という声が.
周囲を見ても誰もいない.
さらに「上だよ,上」という声が聞こえる.
写真のシャッターの建物の主が2階の窓から声をかけてくれていた.
ご親切に「ポンプあるよ.貸そうか?」と提案していただいたが,たぶん仏式バルブには使えないと思います.
結局パンクのおかげで20分ほどロス.
ここから能取岬はまだ距離がある.
アップダウンもあり,風も強くなってきた.
昔,クルマで来たなぁ.
【715.7km:通過チェック7 能取岬】8/23 10:26
長居は無用.
写真を撮ってさそくさと退散.
登り返しがキツイ.
やたらに細く荒れた道を抜け,網走の市街地に入る.
久々の都会.
道の駅「網走流氷街道」着.
まだ昼前だが腹が減った.
「確かここって食堂があったはず...」と2階へ.
名物らしい「海鮮ちゃんぽん」をオーダー.
味は悪くないが量が...って,あれ? 昨夜も同じこと言ってたような.
これは食べても食べても食べてもすぐに消化してしまう,ブルベチャリダーの宿命なのか?
食べながらSNSをチェック.
週末に行われる「北の国から400」のスレッドが立っていた.
そこに便乗して「現在,1300中」と報告.
「風があるので気をつけて」との励ましの返信をいただく.
そう,この「1300」ブルベもほぼ半分を消化.
ここからが正念場.
認識できない疲労が間違いなく身体に堆積しているはず.
食事を終え,外に出ると...なんと雨!
すっかり忘れていたが,今日は「暴風雨・確率70%」なのだ!
現状小雨だが,これから釧路まで降り続くんやろなぁ...と憂鬱になる.
「いいや,これもブルベの醍醐味.大自然の猛威を全身で受け止めるのだぁー」と覚悟を決める.
そそくさと買ったばかりのモンベルのレインウェア上下を着用.
出発する.
さすが最新ウェア,軽いぜ! これならどんな雨でも楽勝...なわけあるかい!
レーパン膝下の素肌にペタっとまとわりつくレインパンツ.
アッパーはアッパーでムシムシして暑い.
じっとしてても汗をかく.
それでも我慢して2,3km進むが,あかん,これやったら濡れた方がマシを脱ぐことにした.幸い今は雨が止んでいる.
おー,キャストオフ,なんて気持ち良い!
爽快な気分でしばらく進むと,やがて路面も乾き,日差しも出てきた.なんじゃそりゃ? 網走だけのゲリラ豪雨やったんかい!
そして,本日,いや場合によっては本ブルベのボスキャラに立ち向かう時がきた.
藻琴山,小清水峠へのヒルクライムである.
その頂上にある「ハイランド小清水」.そこが通過チェックとなる.
実はこのあたりから頸から肩,背中(肩甲骨の間)に痛みが出てきた.
まだ頭を上げてはいられるものの,うわさの「シャーマーズネック」の足音が徐々に聞こえてきたかも.
対策としてポジションを頻繁に変えることにした.
必殺技として,TTバーのレスト部分を手でつかみ,肘を伸ばしたいわゆるママチャリ乗りを試す.うん,かなり楽.
本格的な登りの前に,まずは芝桜公園で休憩.
チャリダーにとってハイパーポーションたる赤コーラを充填.
再スタート.
結果...経験上,最も辛い坂とあった.
見知らぬ土地ということもあるが,ほぼ直登で6~7%が延々と続く.
視界が悪い.道も悪い.頸が痛い.
「ハイランド」へ右折してからのトドメの10%越え.
これはタヒ...
霧のせいでほぼ視界0の中,ようやく到着.
【770.7km:通過チェック8 ハイランド小清水】14:36
探した探した.
本来ヒトがいてはいけない領域のような雰囲気が漂う.
ちゃっちゃと下りよう.
本来,ご褒美のダウンヒルだが,これだけ視界の悪ければ罰ゲーム.
恐怖しか無い.
それほど寒くないのだけが救いか.
標高が下がると徐々に霧が晴れてきた.
屈斜路湖が美しい.
国道391号に合流.
追い風基調の中,弟子屈に生還.まさに生還.
セイコマを見つけピットイン.
すっかり忘れていたのが「暴風雨:確率70%」の件.
それが何と,ここまで来ても雨が降っていないのだ!
路面こそ濡れているが,雨も風も既に通り過ぎたようだ.
スマホの天気予報をチェックする.
これから向かう釧路方面の降水確率もどんどん減っていっている.
なんたる幸運!
まさか「暴風雨」の魔の手から逃れられるとは!
とは言え,釧路までまだ残り約80km.
補給を行う.
この「1300」の計画を立てる際,参加者が悩むのが,この3日目の宿泊ポイントだそうな.
弟子屈の宿に早めに入り,まったりとリカバリするのか?
それとも釧路まで走りきってしまうのか?
なぜなら,この先,弟子屈-鶴居-釧路を結ぶ道道はアップダウンの連続.
相当足を削られるらしい.
Kazchariの選択は後者.
後半戦に向け,残り距離をできるだけ短くしておきたい.
その方が気分的にも楽.
つーことで,魔の三日目,第二章に突入!
事前情報+まだ明るいせいか,思ったほどのダメージはない.
足も絶好調.
小清水峠登攀時に感じていた頸肩の痛みも今は消失している(気分の問題?).
覚悟を決めてスタート.
確かに丘陵コースだったが,それほどキツくなかった.
まだ明るかったことも影響しているのかも.
18時少し前,中間地点である鶴居村に到着.
セイコマもあったが,その隣りにある「鶴居たんちょうプラザ つるぼーの家」のソフトクリームが気になった.
JAFの割引が効いて¥300.美味し.
店員さんに「ここから自転車で釧路に行くんですけど,どれくらいかかりますか?」と尋ねる.
店員さん曰く「・・・自転車で行ったことはないのでわかりません」.
そらそうだ.
すると店長さんらしい人が手助け.
「距離はそんなにないけど,湿原の中を走るからアップダウンが大変だよ」とのこと.
残り35kmなので,1時間半を目指していたが,難しいか?
暗くなってきたのでライト類をスイッチオン.
本日,最後の戦いだっ!
その道道53号.
時間的に釧路へ帰宅するクルマが多く,結構な交通量.
幸い路肩が広く,割りと安心して走れた.
時折登坂車線が設けられるようなキツい坂もあったが,ここまでの苦労を思えば大したことはない.
やがて釧路の明かりが見えてきた.
油断したのか,路肩の縦割れ段差にタイヤをとられヒヤリハット.
やばいやばい.
最後まで気を抜かないこと.
街に入る.
複雑怪奇なルーティング.
ようやく明日以降との重複コースに入る.
「ここまで来たらホテルに向かう前に通過チェックをクリアすべし」と,かの有名な橋に向かう.
【877.3km:通過チェック9 釧路市 幣舞橋】 8/23 19:43
今日のライドも終了.
止まると風の強さを感じる.
それにしても助かった.
今日も天に愛されたなぁKazchari.感謝,感謝.
撮影を終え,ホテルに向かうが,これまで同様チェックイン前に夕食を済ませたい.
そこに目が停まったのが「ラーメン天二郎」.
ここにするか.
時短営業中なので8時でオーダーストップ?
今,何時だ? 7時50分.セーフ!
よくわからんメニュー表示だったが,定番の味噌ラーメンを注文.
美味かったがにんにく量がなにしろエグい.
つまり口臭が...って,誰に気をつかう?
まっ,ええか.今日も相当体力使ったし.スタミナ,スタミナ.
店を出た後,近くのローソンで,就寝前に欠かせないプロテインを購入.
朝食は...買わない.
本日の宿は朝食付き,しかも朝5時半から食べられるのだ.
で,その「コンフォートホテル釧路」チェックイン.
時刻は20:40.上出来だ.
事前情報では,チャリの部屋への持ち込み不可.
裏の小屋みたいなところに入れて施錠してくれる,という話だったが,フロントで尋ねたところ,持ち込みOKにしてくれた.素晴らしい!
スタート地点の「万葉の湯」同様,応対スタッフによって対応が変わるのだろうか?
すかさず「タイヤ拭きます」とウェスを取り出す.
この作業を初めてしまえばこっちのもの.
前言撤回される前に,そそくさとエレベーターに乗り込む.
ふー,助かったぜい.
早速,ウェアを全て脱ぎ捨て全裸モードへ.
洗濯機の場所もしっかり確認済みだ.
さらに,このホテルにはドロップボックスを送ってある.
この3日間,および残りの行程を熟考し,入れ替えるもの,送り返すものを検討
・ Di2バッテリの充電.特殊形状のコネクタとACアダプターなので,今充電して送り返す.
・ 着替えのジャージ.「気分転換に」と入れた.残り2日は新ジャージで.
・ ネックサポーターを取り出す.小型軽量ゆえ,サドルバック内に収納でき,フレームがわりになる.
・ 交換チューブ.パンクしたのでありがたい.
・ マッサージガン.超ありがたい.両大腿と肩甲骨周辺の筋肉を入念にマッサージ.
・ 洗剤小袋.
・ 交換用ブレーキシュー.
不要だったもの.
・ いつも使ってる「Specialized Powerサドル」⇒ケツに問題があった時用.
・ サドルに合わせたオルトリープ
・ 予備タイヤ
・ 予備薬
・ 予備エナジージェル
この先2日間,雨は降らないとのことでレインパンツも送り返す.
レインジャケットは防寒着代わりにもなるので引き続き携行.
洗濯が終わったと思われる頃,回収しにいく.
そばには自販機も設置されていた.
さらに製氷機と紙コップまで...
「い,いかん」と思いつつも,カラダはココロと裏腹に缶チューハイの購入ボタンを押してしまっていた.アルコールは筋肉を破壊するというのに...
まぁ良い.
無事,魔の3日間を乗り切った自分に対し,そして,悪天候の試練を与えてくださらなかった慈悲深い天に...乾杯.
本日までの総走行距離:878km/1309km