2022/12/2 Fri
脚本が大事.
先日,Amazon Prime Videoにてアクション映画のおすすめとして『アイス・ロード』がアップされていた.
この手の映画で星4つ以下だとだいたいハズレ...
それが見事に当たってしまった.
なかなかの破綻しまくり脚本.
途中でマジメに観るのを諦め,ツッコみながら楽しむことにした.
まずそのプロット.
単純なようで複雑で,やっぱり単純?
ゆえに一部,解釈を勘違いしているかもしれんが,ストーリーはだいたいこんな感じ.
舞台はカナダの北部,4月頃.
えーと,ガスがしょっちゅう吹き出す危険な地下採掘場で,毎回毎回避難警報が出されていたら仕事にならないからと,経営者側が一部の労働者に金(月100ドル)を握らせてセンサーのスイッチを切らせていたと.
で,恐れていたガス漏れ事故が発生し,大型トラックが崖下に転落.
まだこの段階では作業員がたくさんいた坑道は被害なし.
しかあし,脱出の際にあわてた誰かが不用意に火花を散らせたために坑道が爆発.
26人が生き埋めになってしまう(←偶然).
空気がなくなるタイムリミットまで30時間.
救助のためには特殊な機械(巨大な土管)が必要(←形状からはどう使うのかわからない).
しかあし,あまりに重すぎて空輸は不可能,陸路輸送しかない.
最短ルートは湖が凍結してできた道路(アイス・ロード).
真冬ならともかく,暖かくなってきたこの時期は危険なので既に通行禁止.
しかあし,タイムリミットに間に合わせるにはこの道しかない.
政府は,ギリギリ通れるかもしれないこのアイス・ロードを走るドライバーを急遽募集.
さぁ,命知らずのドライバー達の限界ギリギリの大輸送作戦が始まる!...おおっ,これは面白いかも,と思っていた時もありました.
ここになんで意味不明な妨害工作を混ぜるかなぁ...
そもそも悪役の幹部職員は,いつ,どのタイミングで殺し屋集団と接触し,仕事を依頼したのだろうか?
センサースイッチを切らせていたことがバレるのが怖かった?
関係者も多いし,そもそも隠蔽は難しい.
鉄管モールス信号でいつ誰に真相が伝わるかわからん状況.
さらに第三者(多数)をからませたら,よけいにマズイ気がするけど(事後もたかられ続ける).
それに,輸送を妨害したいのなら,ドライバーを殺すよりアイス・ロードを一部崩落させておくとか,途中にはご丁寧にも重量制限がトラックの重さとほぼ同じ吊り橋があったり...いくらでも手はあったはず.
えーい,まどろっこしい!
ドライバー側もたいがいである.
途中の事故を考えて同じ機械を3台運ぶ?
それよりも重さが問題なら分解して運んだ方が安全では?
少なくともパイプ類は別のトラックに載せるとか?
ボス・ポジションのモーフィアス...じゃなかったローレンス・フィシュバーン.
輸送開始直後に亡くなってしまう.
ディーゼルエンジンにガソリンを入れられてトラブル発生(←妨害作戦の一貫).
問題は,他のトラックのウインチでひっぱろうとするが,氷が割れてトラックが沈んでいく.
その際,ワイヤが足にからまりモーフィアスも一緒に...(←殺し屋関係ないやん)
これに出演するなら,こっちに出てほしかった.
他にも「殺し屋が不死身過ぎて,どこのターミネーターやねん!」とかのツッコミもあるが,最大の問題は主人公.
作劇的な正しさで言えば,どう考えても最後に生き残るのはリーアム・ニーソンじゃなくて,弟の方だろう.
途中で一度死んだのをわざわざ蘇らせたのだ.
なぜもう一度殺す?
しかも,あれって明らかにおねーちゃんのミス.
兄(リーアム)を失っても,自立して生きていく弟を描くことで,ちゃんとオチがつく...と観た人間,全員が思ったのでは?
『アイス・ロード』の脚本家はペッシとプロシュート兄の名場面を熟読しろ!
脚本のひどさほど目立たたないが,カメラワークもイマイチ.
トラックの走行シーンも全く工夫が感じられないが,特に素手の殴り合いシーンに至っては...迫力ゼロ.
ツルツルの湖面での戦いというハンデがあるにしても,ちょっとなぁ...
「あーカナダにはこんな面白い道があるのだなぁ.スパイクタイヤのファットバイクで走りたいなぁ」と思えた点は...良しとしよう.
※ 本日スパイクタイヤに換装した.
さて,昔は映画の良し悪しを決めるのは監督の技量次第と思われていた(通は知らん).
最近は脚本の良し悪しがその作品のデキを左右することが人口に膾炙してきた.
そこで,最近話題に上がるのが,朝ドラ『舞い上がれ!』である.
前半の五島列島編.
ゆっくり慎重に染み入るように人の心の機微を描く.
子役と高畑淳子さん超絶芝居が素晴らしかった.
続くなにわバードマン編.
島編よりもやや落ちるとは言え,各キャラを比較的丁寧に描いていたと思う.
ロードバイクガチ勢にも話題になった.
問題は今の航空学校編.
新しいキャラに入れ替わったのは良いが,誰も彼もが掘り下げが浅いっつーか一貫性がない.
唐突すぎる変化に「あれ?1話飛ばしたっけ?」「何かイベント見逃したっけ?」と思うことしばしば.
それに主人公の行動パターンがおかしい.前週までと同じキャラとは思えない...
と,違和感だらけだったが,ネットでも話題になっていた通り,脚本家が変更になったらしい.それで納得.
一人でシリーズ全話書き上げるのは大変だとしても,もう少し”申し送り”してストーリー,キャラの整合性を煮詰めて欲しい.
舞台が帯広に移った今週は少し盛り返してきたけど,人物描写の粗さはまだ払拭できていない気がする.
何か最近も似たような話題を書いた気が...ああ,あれだ.
『仮面ライダーBLACK SUN』,最終回まで観た~生きることが好きさ(えっ?)
一方,ベタ褒めしたいのが『ぼっち・ざ・ろっく』.
アニメも絶賛放送中だが,原作を読むとさらにそのスゴさがわかる.
原作は基本4コママンガである(一応時系列).
それを神脚本が一本のストーリーとしてスムーズにつないでいる.
もちろんつなぎのアニオリ描写も追加して.
まさか,ここまで化ける,話題になるとは原作者も感激しているのでは?
脚本が話題のもう一本と言えば『水星の魔女』.
毎回毎回,これでもかとネタを提供してくれる.
少しずつ明かされる謎.
一見明るい学園モノと思わせつつも,先行き不穏な空気が全編を覆う.
これほど次の放送が楽しみな作品はここ最近なかったなぁ.
こちらもメインライターが1人だけで書いているわけではないようだが,『舞い上がれ!』と違って全く破綻を感じない.
このまま,最後まで,視聴者を楽しませて欲しいものだ.