2023/4/8 Sat
賞味期限.
近所のイオンシネマにて上映中の『グリッドマン ユニバース』を観てきた.
素晴らしかった.
何しろシリーズ2本(+1)を完走したファンの要望,すべてに応えている.
例によって考察サイトや動画をシャットアウトして感想(ネタバレ)をつらつらと.
その完成度の高さですでに話題.
世間的にはそれほどの人気作ではない.むしろマイナー.
さて『ユニバース』を鑑賞するにあたり,まず,Amazon Prime Videoにて配信中の『SSSS.GRIDMAN』(2018)を再び鑑賞.
SSSS.GRIDMAN
全12話.やはり面白い.
フレームがしっかりしているというか,綿密に練られたプロット.
それに製作スタッフのオリジナル作品『電光超人グリッドマン』へのリスペクトと,“特撮愛”,”ウルトラマン愛”に満ちている.何よりもそこが大事.
主題歌もめっちゃ良い.
Kazchariのハスラー内でヘビロテ(死語)だ.
SSSS.GRIDMANオープニング主題歌「UNION」
放送終了して5年も経つため,ネタバレを気にする人も少ないと思われるが,以下,ストーリーの核心.
『GRIDMAN』の舞台は,満たされない毎日を過ごす少女(新条アカネ)が,とある永遠の命を持つ宇宙人にそそのかされて作ったデータ世界.
彼女は誰もが自分を愛してくれる世界の神となり,気ままに,かつ気まぐれに暮らしている.
だが,自分で作った人間や怪獣,および時空を越えてやって来たハイパーエージェントとの交流により,自己否定の泥沼から抜け出し,現実世界で目覚める場面で終わる.
先程も書いたが,『GRIDMAN』にはオリジナルがある.
それが特撮番組『電光超人グリッドマン』(1993年).
電光超人グリッドマン
どこかウルトラマンに似たデザインはTSUBURAYA作品だから.
こちらも(かつて)Amazon Primeで配信されていたので前半のみ視聴.
コンピュータがらみの事件発生,そして,プログラム内での戦い.
IoT世界の危うさを予見していた作品である.
時代を先取りしすぎた...とも評されている.
コンピュータ内での戦いという意味での類似作品としては『トロン』(1983)と『マトリックス』(1999)の間(強引?).その後『ゼーガペイン』(2006)もあったか.他にもたくさんありそう.
その『電光超人』だが,Kazchariは10話程度で挫折.
そのうち無料配信が終了し,全話視聴ならなかった.
ゆえに『GRIDMAN』で描写されたらしい数々の小ネタにはちと弱い.
それでも大まかなプロットに変更がないことはわかった.
そして,キレイに完結した『GRIDMAN』を受け,続編『SSSS.DYNAZENON』(2021)が作られた.こちらも全12話.
SSSS.DYNAZENON
こちらもリアタイで視聴していたが,その時は『GRIDMAN』ほど,はまらなかったなぁ.
『DYNAZENON』は前作とは別の世界.
新条アカネは無関係と考えて良いのだろうか?
それとも,アカネが考えた最初の世界がどんどん分岐していってパラレルになった?
このあたりはよくわからない.
成長したアンチくん(グリッドナイト)が出てくるので,てっきり未来の世界かと思ったが,「こちらの世界に干渉...」というセリフから,どうやらマルチバースの一つだと思われる.
で,その『DYNAZENON』も映画館に行く前に急いで再視聴.
すると...いやいやいや,驚くほどに面白い.
主題歌の『インパーフェクト』の意味がようやくわかった.
インパーフェクト アニメジャケット盤
新条アカネの情動に焦点をおいていた前作(彼女の世界だから当然なのだが)と異なり,こちらは群像劇にシフト.
『GRIDMAN』世界では,各住民の記憶もアカネに作られたものなので,個々の内面に言及するのが難しい.ゆえにどこか浮世離れしたキャラばかりとなる.
一方『DYNAZENON』のキャラはそれぞれがしっかりと自分の過去を持っている(怪獣優生思想のメンバーはアレだが).
ゆえにこの二作が異なる作風になるのは自然なこと.
初視聴時は,そのことに気づかず「キャラにクセがありすぎる」「暗い」「GRIDMANの方が爽やか」だけで片付けてしまっていた.
『DYNAZENON』のキャラは,何かが欠けていたり,歪んでいたり,こだわり続けている.
その克服の物語となっている.
結果,前作に比べ,キャラの内面描写がぐっと増した.
怪獣そのものも「人の情動を吸収して種から発生する」という設定になったしな.
そして最終回にかけて,この2作の雰囲気が統合されて,それぞれが“けじめ”に向かって動く.これぞユニバース.
で,『グリッドマン ユニバース』である.
結論から言うと,ここ数年で最高の映画体験だった.
もちろん,先週観た『RRR』はエンタメとして圧倒的に面白い.
『RRR』を観てきた~インド映画はカロリー過多
その前の『シン・仮面ライダー』は,Kazchariを含む一部の人には刺さるが,庵野成分が濃過ぎ,手放しで傑作とは少々言い難い.
『シン・仮面ライダー』を観てきた~やりたい放題
両方とも好きやけどな.
その点『ユニバース』は好バランスというか...正直,色々泣けます.
ストーリーに,というだけではなく,まず(オタクの)おっさんを容赦なくノスタルジーの海に沈めてくるのだ.
巨大ヒーロー,怪獣,恐竜,ドリル,剣,変形,スーパー合体,ドラゴン...(Kazchariは専門外だが)プリキュア的要素まである.
カラダはおっさんになってしまった元男児のココロをくすぐりまくる.
戦闘シーンに関しては,CGの進化のおかげで,あの複雑極まりない線の多すぎるデザインが破綻なく動きまくる...というだけで驚愕なのだが,元々のTVシリーズからクオリティは神がかっているので,さほど驚きはない.
そやなぁ,ロボの作画に関してはもう来るところまで来た印象.
ただ...正直『めぐりあい宇宙』における手書きの安彦ガンダムやゲルググの方が,ずっと色気があって,かっこいいと思う.
別のノスタルジーは「学園祭の前日」...この強力なキーワードよ.
もちろん,黒歴史になっている御仁も多いかと思われるが,たいていの人にはほろ苦い思い出に包まれてしまうのではないだろうか.
まっ,それだけではなく,あの時代の空気感や友人関係.
その何とも言えない状況をこれ以上なく凝縮したのが『劇場版うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』だった.
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]
もう文句のつけようがない名作中の名作.
原作者は大激怒らしいが,面白いものは面白い.
余談だが,令和版『うる星やつら』は視聴断念.
原作に忠実だと言うが,メガネが出ないだけで,これほどつまらなくなるとは...
ただ,2期の製作も決定したらしいので,イマドキの視聴者にはこれでいいのだろう.ここにもおっさんのノスタルジー...
『ユニバース』に話を戻す.
基本的に『GRIDMAN』世界をベースに話は進む.
ハイパーエージェントが姿を消して数カ月後の世界.
グリッドマンに憑依されていたアラタは,かつての戦闘の記憶がない.
逆にその時の記憶を有しているのは内海と六花だけ.
この内海くん,TV同様我々ポジションでメタ的発言も多い.
そこへ久々に怪獣出現.
新世紀中学生も,ついでグリッドマンも復活.
アラタ,妙に飲み込みが早く,再び戦うことを決意.
グリッドマンとなる.
しかし,慣れない戦いにピンチ.
そこへ現れるダイノレックス! パイロットはガウマもとい,新世紀中学生の新人レックス.
家を出る直前まで『DAYNOZENON』を観ていたので懐かしさはないが,それでもこのシーンは熱い.
もうこのあたりまで,終始ニヤニヤしっぱなし.
この戦いの後,世界が徐々におかしくなってくる.
マルチバースが重なって,世界が崩壊するかもしれないマルチクラッシュ(?)が起きるかもしれないとのこと.
『GRIDMAN』の世界に『DYNAZENON』のメンバーが徐々に侵入してくる.
暦とアラタの家が同じとか芸コマ.
なぜこうなってしまったのか?
エネルギー体であるグリッドマンそのものが宇宙と融合してしまったから.
どうも,前回の戦いの後,弱っているグリッドマンのココロを新たな敵対宇宙人(?)が侵食して支配,ちらばったマルチバースを一つに集約しようとする.
それがこの事件の真相(たぶん).
それを阻止しようとアカネがアレクシスと共闘し宇宙を救う...というのが全体のあらすじ.
以下,雑感・考察.
この映画の主役は六花.
キャラ人気を考えれば納得.
『GRIDMAN』で決着がついてなかったのが,その六花とアラタの関係.
正にそのケジメで映画は終わる.
ヨモギとユメの関係にユニバース.
クライマックスの戦闘,さすがに「♪ベビダンダン」は採用されず.
安心したような残念なような...
実写パートのアカネ役の子が,もう少しアカネっぽかったら...と思わんでもないが,リアルな自分を否定していたから作ったキャラなので別人に近いほど正解か.
5000年前,つまり紀元前3千年紀がどういう世界だったのかよくわからんままだったが,中国の黄河に「龍山文化」が勃興していた時代やねんなぁ(Wiki調べ).だから龍=竜=“ダイナ”ゼノンなのか.
ガウマと姫,かつカニ好きの伏線回収が素晴らしい.
「怪獣優生思想」メンバーの復活は無理だったか.
途中でアカネがプリキュア風に変身した時,てっきりムジナになるのかと思ったわ.
実は『DYNAZENON』世界でのアカネ=ムジナ設定だったとか...
以上,『グリッドマン ユニバース』の感想でした.
まだまだいくらでも考察できそう.
鑑賞後,情報量の多さや情感の揺さぶりに疲弊し,しばらく呆けてしまった.
とりあえず「今を懸命に生きよう」「人生に賞味期限あり」と再認させてくれる“面白い”を超越した素晴らしい映画でした.
オススメです.