2022/1/13 Thu
キレイは汚い 汚いはキレイ
自らの人生も含めた未来のヴィジョンにパラダイムシフトが起きた.
きっかけの1つはこの本を読んだこと.
ざっくり要約すると...
我々は山登りを終えて頂上=高原に到達してしまった.
つまり,
「経済が低成長に陥ったのではない。ただ、成長が”完了”しただけである」
という主張を様々なデータを元に論理的に展開.
今いるこの“高原”でココロ豊かに暮らす方法を模索すべし,という内容である.
そして,我々の生活は新コロ流行前には戻れない.
社会の仕組みも,人々の意識も変わってしまった.
状況の好き嫌いに関わらず,思考をアップデートしなければならない...という,前半パートは同意できる(わかりやすい)主張.
だが後半,その高原での生活のために提示された方法論がなぁ...
「真にやりたいコトを見つけ,取り組む」
⇒ そのためにも様々なことに取り組むことと提案しているが,それよりは社会が求められる仕事の中からチョイスする方が良いのでは?
「真に応援したいモノ・コトにお金を使う」
⇒ “真に応援”がよくわからない.誰の基準? 世代よって変わるのでは?
「ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入」
⇒ さすがにこれは無理だろう.ヒトは得することよりも損することに敏感.もらう側はともかく取られる側は納得できないのでは?
ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介
Kazchariの読解力に問題があるかもしれないが,作者のこれらの提案には賛同しがたい.
それに文体も後半になるにつれて,作者の思いが先走るのか,どんどん感情的かつ根拠があいまいで,論理的に破綻していく.
最終結論として,個々人の意識改革が必要とか...うん? かつてのサヨク運動を否定していた割には,一周回って同じこと言ってない?
「他人と過去は変えられない」という心理学の大原則で考えるなら「まず自分」というのは大正解やけどな.
ただし,世間というかテレビ,新聞,ネット記事に「もう日本はダメ」もしくは「日本スゴイ」といった両極端の主張があふれる中,それらとは一線を画したフラットな内容でした.
総論賛成,各論反対というヤツかな(会議で一番嫌われるタイプ).
もう1つは例によってYouTubeの岡田斗司夫ゼミ.
新年早々のネタに唸られた.
無料部分+切り抜き部分だけからの知見.
要約すると,
「今すぐ,ネットに上げた悪口や,悪口に対するリツイートを消せ.
なぜなら,あなたがそれを書いた証拠は,AI検索によりたちまち発掘される.
誰かがあなたを評価しようとする際,必ずそれは調査される.
いつも社会に対する不満を述べていたり,不満を述べている者に共感している行動は,社会に対する危険思想とみなされ,あなたの信用スコアが下がる.」
まさに『サイコパス』や『マイノリティ・レポート』の世界やな...
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さらに,この主張の根拠として上げているのが「漂白されていく社会」である.
昨今の,芸能人のスキャンダルに対する誹謗中傷や,ハリウッド映画やアメリカ企業の過剰なポリコレは,現状まだネタ的に捉えられているが,時代が進み,そうした主張が当たり前になると何が起こるか?
裏も表もない,純粋で正義な真っ白な”ヒト”だけが生き残る,漂白された社会となる.
Kazchariはその職業ゆえ,日々多くの若者と接している.
以前に比べ,良い悪いは別にして,どういう状況でも自分を繕わない“ありのまま”な学生が増えた気がする.
オープンな学生はいつでもオープン.おとなしい学生はいつでもおとなしい.
岡田斗司夫の主張を借りると,おっさんは「本音は汚い」と思っているのに対し,若者は「本音はキレイ」と思っている.
さらに,考察すると,
おっさんは「見た目がひどくても味が良ければOK」.
若者は「見た目がキレイでなければ味が良くてもダメ」 ⇒ 外も中もキレイなものしか受け入れない.
これが新コロ時代を越えた,次の世界の姿という.
以前に近い意見を持つ別の作家の記事を書いた.
こうした世界において,”汚い”と認定され,抑圧されたヒトの闘争本能はどこへ向かうのだろうか?
また(真波くんじゃないけど)肉体を酷使した時の「オレ,生きている!」という実感がないまま,ヒトは動物として存在していられるのだろうか?
やさしいだけの世界は心地よいのだろうか?
ココロの底に得体のしれないドロドロしたモノを抱えているのが自然.
それを様々な価値で,たまに発散していた昭和のおっさんは,この変化に「耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮ら」すしかないのだろうか?
頭に浮かぶのはピクサーの映画『WALL・E』.
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汚れた地球を捨て,宇宙船の中で生活している人類は,一日中,動くイスに座り(歩かない),ひたすら娯楽に興じている.しかし,めちゃめちゃ退屈そう.
ラストシーンで再び地球に降り立った人類は,大地に立ち,身体感覚を取り戻すのだろうか?
知らんけど.