2023/1/20 Fri
◯◯◯◯じゃが仕方がない.
復活したKindle Paperwhiteにて数十年ぶりに『獄門島』を再読した.
まず感想(軽くネタバレ).
なんだこれ.
最近の凝りに凝ったミステリーより圧倒的に読みやすい.
用語やセリフの言い回し,それに舞台設定・文化などは,現代視点だととんでもなく古いはずなのに,不思議だ.
◯◯◯◯という放送不可ワード使いすぎ問題はあるけど(これのおかげで映像化時の演出が大変).
プロットがシンプルだから?
雪枝と月代が殺されたタイミングだけがよくわからんけど.
改めて読むと,犯人は捕まるつもりだったと考えれば色々と納得(?)できる箇所もある.
俳句の書かれた屏風を金田一の寝室に置いた理由について「こうしないとフェアじゃないと思うたから」と言ってるしな(ただし,残りの二人は発狂と逃亡).
それ以前にKazchari自身も再読および映像作品を見まくっていたため,内容が頭に入っていたことも大きい.
それにしてもやっぱり“ヨコミゾ”はいい.
怨念,因習,恩讐,遺言,見立て,村や島,貴族階級,世相,戦後,猟奇事件,それにアバンギャルド感(死語).
初めて読書の喜びを与えてくれたのは,間違いなく横溝正史の一連の著作だった.
映像(ドラマ,映画)を観,原作を読み,その耽美な世界に酔いしれた...あっ,ちなみに当時9歳です.
今の息子と同じ歳...ホンマ変なガキやなKazchari.
横溝正史に関しては熱狂的なファンが多く,ネットにも書籍にも綿密に考証された資料であふれかえっているので,間違いや勘違いも多数あると思われるが,あくまでKazchari視点での思い出話を語る.よって信憑性はあまり高くありません.
横溝正史ブーム,つまり金田一耕助モノが全国的に人気になったのはやはりメジャーでの映画化の影響が大きい(片岡千恵蔵は...何か違う).
まずその皮切りは,角川映画第一作となる『犬神家の一族』(1976).
「世界でいちばん有名な溺死体」および「あのマスク」と相まって「スケキヨ」は「貞子」と同レベルの有名キャラになった(順番逆か).
「日本映画の金字塔」と称される本作の金田一耕助役は石坂浩二.
やや二枚目すぎるか.
極太明朝体フォントは超有名ロボアニメに受け継がれた.
翌年の松竹映画『八つ墓村』も大ヒット.
「祟りじゃぁ,八つ墓の祟りじゃぁ~」というCMでも使われたフレーズがあまりにも有名.この後に「ヒェ~ ヒェ~」と続けばドリフのコント.
ただし,当時10歳のKazchariはこの映画を劇場では見ていない(後でTVで観た).
近所に松竹系の映画館がなかったこともあるが,何より渥美清の金田一耕助に対して違和感があったためだ.
そう,Kazchariにとって金田一耕助と言えば,テレビドラマ『横溝正史シリーズ』の古谷一行である.そのイメージが強烈.
ちなみにこのシリーズで一番好きなのは文庫本のネタバレ表紙が有名な『真珠郎』だったりする(原作では由利麟太郎が探偵).
つー感じで,この時代,映画もテレビも書籍も,全てヨコミゾ一色だったなぁ...
Kazchari以外の小学生がどうだっかは知らんけど.
さて『獄門島』に話を戻す.
この小説のキモは犯人の設定だろう.
「当初の犯人を,奥さんのアイデアで変更した」と聞いたことがある.
確かに,そうしたからこそ,日本ミステリー界屈指の名作と呼ばれるようになったかもしれん.
ところが...1977年の市川崑監督の映画版では,その秀逸な犯人設定が変更.
見立て殺人のヴィジュアルは忠実だけど,なんだか平凡な作品になってしまった.
先に原作もTVドラマ版(こちらも微妙に変更)もクリアしていたKazchariは,劇場のシートで困惑した記憶がある.
今,こんなトンデモ改変したらネットで大炎上やろなぁ.
中学生になると,世間のブームも落ち着き,小説も『病院坂の首縊りの家』で一段落(悪霊島? 何それ?).
Kazchari自身のヨコミゾブームも沈静化し,中学生では筒井康隆の洗礼を受けた(人生狂った).ちなみに筒井康隆はうちの高校の先輩だ.
その後も横溝作品の映画やドラマは不定期に作られ公開されているが,Kazchariはほとんど観たことがない.
あのブームの時とは何かが違うように思われるのだ.
「見たら負け」みたいな変な意地もある.
実際,監督と主演が同じだけでなく,脚本や設定どころか構図までフルコピーされた2006年版の『犬神家の一族』はあまり評判がよろしくない(鑑賞したはずだが,どこかあいまい).
やはり”あの時代”に観たということが重要なのだろう.
9歳のKazchariは,あの時代に読んだ横溝作品をどう受け止め,自身の血や肉に変えたのか?
現在同年齢の息子に無理やり読ませれば...いやよそう.
でも,『進撃の巨人』のコミックを食い入るように読んでるしな.
残酷耐性(だけ)は高めかもしれん.
今回,このネタを書くために『獄門島』で検索してたら以下のドラマがヒット.
全く知らなかった.
長谷川和己の金田一か.
ネタバレ回避のためかはっきり言及しているサイトなどは見つけられなかったが,どうやら犯人は原作通りらしい.
久しぶりに映像化された『獄門島』を観たいかも.
NHKオンデマンドで¥220かぁ...
だーからー,受信料払っているんだから,ちゃっちゃとアーガイブ開放しろって!NHK!