2023/8/6 Sun
えっ? そうなん?
続く雨の日曜日.
Zwiftの友,Amazon Prime Videoにて『ラストナイト・イン・ソーホー』という映画を観た.
これまたサスペンス映画つながりで「おすすめ」にアップ.
前回の『フロッグ』よりはメジャー? 題名は聞いたことがあった.
Amazon Prime Videoで『フロッグ』を観た~脳内変換すると楽しめるゾ
これまた一切前情報なし.
鑑賞後っつーか,途中で「えっ?そっち系!?」と声に出た.
以下,あらすじとネタバレ全開の感想.
原題はまんま『LASTNIGHT in SOHO』.
この映画を観るまで「ソーホー」は地名じゃなく,芸術家やIT起業家などが済むエリアを表す一般名詞だと思ってた(ニューヨークのソーホー(South of Houston Street)と区別がついていない).
舞台は現代のロンドン.
ど田舎に祖母と住んでいたエロイーズ(エリー)が,ロンドンのデザイン学校に合格し,上京するところから物語は始まる.
導入部分で既に明かされているが,エリーは“あっち系”,つまり霊が見えるらしい.
ただし田舎にいる時は,幼少期に自殺した母親の霊のみを認識していた.
髪型,服装とも野暮ったく,タクシーの運ちゃんの軽口にも過剰に反応.
後にBFになる黒人のジョンにも警戒心露わ.
おまけに寮のルームメイトのジョカスタは,ジョジョの『ストーンオーシャン』に出てきそうな不良&性悪女で,エリーはマウントを取られまくり,徹底して馬鹿にされる.
この時のジョカスタの陰口「あの子(エリー),今年中に自殺するわよ」がわりと伏線.
寮生活に嫌気がさしたエリーは,学校の掲示板で「入居者募集」のメモを偶然見つけ,ソーホー地区のアパートに引っ越すことにした.
高齢の女家主は長年この家に住んでおり,屋根裏部屋を若い娘に貸して生計を立てていた.
「禁煙」「男連れ込み禁止」「夜中の洗濯禁止」の条件を提示.
いかにもな雰囲気漂うこの部屋が気に入ったエリーは早速引っ越す.
就寝時.隣のフランス料理店の「赤青白」ネオンの点滅が引鉄になったのか,エリーの霊感能力が覚醒.
気がつくと,エリーは60年代のソーホーにいた.
ただし,タイムスリップではない.
過去に飛んだのはあくまで霊体(意識)だけという設定.
その世界でエリーはやたらに目が大きなブロンド美女(サンディ)に憑依していた(操れない).
鏡には元の自分の姿が映っている(他の人には見えない).
このサンディ,最初はてっきりエリーが超絶メイクで変身した姿かと思っていたが,よく見ると別人.いくらなんでも目の大きさが違いすぎる.
だとすると誰?
芸能界に憧れてロンドンに上京したけど,夢破れて自ら命を絶った母親?
でも年齢が合わないし,写真は残っているのに気づかないのも変.
ネタバレだが,まさか今も生きている人物だったとは...
サンディは当時最先端のダンスホールやクラブなど,当代きっての歓楽街として名を馳せたソーホーを巡る.
日本でいうところの渋谷みたいな? 知らんけど.
やり手のプロモーター,ジャックに目をつけられたところで,エリーは目を覚ます.
元々,60年代の音楽やらファッションに目がないエリー.
早速,デザインの授業にてサンディの着ていたピンクのドレスをオマージュ.
講師にベタ褒めされる.
その夜も60年代のソーホーへ.
サンディはジャックの手引でクラブ歌手としてデビューできそう.
ますます過去にドはまりしていくエリー.
リアル世界でも,アンティーク衣料店でサンディの着ていた高価なビニール製の白コートを買う.
うん?
これってもしかして,純粋な田舎娘の転落話?
まさかの女性版『木綿のハンカチーフ』?
サンディの人生とリンクして,借金まみれになって,夜のアルバイトからのお薬,売春というお約束ルート?
あの伝説の胸糞映画『ミスターグッドバーを探して』的展開?(※この映画,配信どころか未だにDVD化されてない)
だとしたら面白いかも...と,ここまでは思っていました.
ただなぁ,後半からは...
予想通りサンディは,ジャックに良いように利用されて転落していく.
歌手・ダンサーとしても大成せず,結局カラダを売るハメになってしまう.
同時にリアル世界のエリーもどんどん情緒不安定に.
昼間でも,サンディを買った男たちの幻覚が見えるようになり,日常生活がままならなくなっていく.
気分転換にと,ジョンに連れ出されたハロウィンパーティ.
チーム・ジョカスタに変なお薬を飲まされたエリーは,霊感感度マックス.
不安のあまり,ジョンを下宿先に連れ込むが,ベッド上でなんとサンディがジャックに殺される幻覚を視る.
恐怖のあまり,よくわからないまま突き飛ばされるジョン.
可哀想なジョンは大家にバレて家を追い出される.
エリーは警察に駆け込み,「昔,サンディという女性が殺された.捜査してほしい」と訴えるが,何のことやらわからない警察はエリーを病気(統合失調症)扱い.
リアル世界ですら,サンディの姿が見えるようになってしまったエリー.
図書館にて過去の事件の調べ物中,男たちの幻覚とジョカスタの区別がつかなくなり,刺し殺そうとしてしまう.
さすがに「もう無理.ロンドンにはいられない」と田舎に帰ることを決意.
ジョンと一緒に下宿先に向い,大家に退去する旨を伝えるが...
実はサンディの正体は...はい.もう言わなくてもわかりますね.
後半の,のっぺらぼうの男たちに襲われる様子はほぼゾンビ映画.
たぶんフェミ的には,弱みにつけこんでサンディを弄んだ男たちが諸悪の根源だー! 言うなれば性暴力反対映画だー!...なんだろうけど,監督/脚本家のスタンスがよくわからない.
チーム・ジョカスタもエリーをいじめるしな(女の敵は女?).
そもそも真犯人もあの人だし.
それに,殺されて壁に埋め込まれた男たちのエリーへの訴えは「助けて」だったりする.
ラストシーンには,リアル世界でサンディとにっこり笑い合うシーンがある.
なんやろ? 自分を殺そうとした老サンディと過去サンディは別人という認識なのだろうか?
それやったら別人設定の方がよくね?
それにサスペンス映画という割には,主人公が謎を解決するのではなく,全部犯人の告白やしな.
最初からヒントを小出しにするとか,老サンディの不気味さを強調するとか...
要所要所で,姿を全く見せず電話だけの田舎のばーさんが気になって,てっきり「サンディ=ばーさん説」も頭に浮かんだけど,そっちの方が面白くないか?
で,元刑事のリジーが祖父だったとか(ベタか).
ひょっとしたら,ストーリーはどうでもよくて,ロンドンのあの時代を知っている人なら大いに楽しめる『三丁目の夕日』的ノスタルジア映画だったのだろうか?(60年代つながりで)
その時代・風俗に疎いKazchariにはどの方向にも吹っ切れていない,中途半端な映画だったという印象.
後はあれやね.
都会で一人暮らしを始めた一人娘が闇落ちしないかと,親をビビらせる映画としては超優秀.
おおっ,そう考えると見事なホラーだ.