『ロシアン・スナイパー』を観た~傷だらけの死の女

2022/3/1 Tue

まさか2022年に侵略戦争が起きるとは.

とんでもない世界情勢になった.
もはや局地戦を除き,人類は大規模な侵略戦争はしないはず...という推論が崩れてしまった.

しかもロシアである.
国連常任理事国かつ核兵器保有国.

SF作品の中だけの出来事と考えていた核戦争が現実に起こるかもしれない.

プーチンはもはや正常な判断ができなくなっているのだろうか?
参戦の理由がない元警官のアメリカ,脱カーボンのために天然ガスが欲しいEU,台湾侵攻の自信を得たい中国.
全てのタイミングが重なった.

そんな中,Zwiftの友として,戦争映画が観たくなった.
理由はわからない.
あえて,フィクションを観て現実逃避したくなったのか?

そして,Amazon Prime Videoザッピング中に,偶然にも見つけてしまったのがこれ.

ロシアン・スナイパー(字幕版)

以下,あらすじ.

1941年、ナチスドイツによるソ連侵攻がはじまった。まだ大学生だったリュドミラは、女ながらその非凡な射撃の才能を買われ、戦場に身を投じる。狙撃兵として次々と標的を仕留めるリュドミラは、やがて敵からは”死の女”と恐れられ、軍上層部には英雄として讃えられ、戦意高揚の道具として

2015年製作の,なんとロシア・ウクライナ映画だ.
ゆえに,ロシア人はちゃんとロシア語を話しているし,アメリカ人は英語を話している.
もしかすると,主人公はウクライナ語?(もしくはウクライナなまりのロシア語)なのだろうか.
そう,主人公は伝説のスナイパー,”死の女”ことリュドミラ・パヴリチェンコである.

原題はБитва за Севастополь ⇒ セヴァストポリの戦い

邦題はもちろんイーストウッドの『アメリカン・スナイパー』にかけていると思われる.
あちらはあちらで良い映画だった.

アメリカン・スナイパー(字幕版)

リュドミラ・パヴリチェンコはYouTubeの雑学系チャンネルでよく取り上げられる実在の人物である.
ゆえに,おおまかな半生は知っていた.

本作は史実とフィクションを織り交ぜたものとなっている.
予算の関係なのか,クライマックスであるはずのセヴァストリ攻防戦がかなり端折られているのが残念.

代わりにドイツ軍のスナイパーとのタイマンになってたけど,別の映画にこんなのなかったっけ? ⇒ 『スターリングラード(ENEMY AT THE GATES)』

スターリングラード [DVD]

話を『ロシアン・スナイパー』に戻す.

何より興味深いのは,リュドミラはウクライナ人ということ.
そう,当時,ソ連兵としてナチスと戦っているのだ.
その舞台もオデッサ,クリミアなど最近のニュースでお馴染みの場所ばかり.

ロシア映画にしては...と言っては何だが,かなりハリウッド風の作りになっている.戦闘シーンの迫力は今ひとつだが.

時系列が飛びまくる演出で少々流れが悪くなっている.
プロパガンダで赴いたニューヨークパート(ルーズベルト夫人との交流含む)をもう少し整理した方が良かったのでは?

役者も上手い.
超美人というわけではないが,品がある.
309人を射殺したパーフェクトソルジャーには見えない.
かと言って弱々しい女性でもなく,何か只者ではない人物として演じている.

そして,度重なる戦闘により,体中キズだらけである.
それを見たルーズベルト夫人のショックとその後の労りの言葉が印象的.

そして白眉は(本当に言ったのかどうかわからないが)最後のアメリカの参戦を依頼する演説.

「いつまで,私の後ろに隠れているつもりですか?」

ヒーローになりたがるアメリカ人をその気にさせる最強ワードやな.

一昔前,狩猟免許の取得を真剣に考えたことがある.
せっかく北海道に住んでいるのだがら,クマやらシカを撃ち放題...なんてバカなことを考えていた時期もありました.
視力の問題があって,今からの取得は難しいと思うけどな.

「兵器や戦闘がかっこいいからといって,戦争を肯定しているわけではない」とは,ミリタリーマニアがよく言うセリフ.

かの宮崎駿も,その矛盾に苦しんだという.
ゆえに,ゼロ戦映画なのに,その戦闘シーンが全くない映画を作ったりする.

ヒト(男子の間違い?)の本能として,徹底的に無駄を省いた機能美の塊である”兵器”には心を動かされざるを得ない.

そして,”戦闘本能”も拭い去ることはできないのだろう.
その代替手段として格闘技やスポーツがあるわけだ.
最大の祭典であるオリンピック開催中から既にきな臭かった.
それにまだパラも控えているというのに...

ロシアは隣国である.
この侵攻が成功するにせよ,失敗に終わるにせよ,確実に良くない影響が日本にも及ぶ(すでにガソリン高騰中).

最悪の結果にならないことを願う.

『JUNK HEAD』を観た~情熱があれば

2022/2/25 Fri

究極のブンドド.

男の子のソフビ怪獣によるごっこ遊び.

女の子のシルバニアファミリーによるごっこ遊び.

そして...大きなお友だちによるブンドド遊び.

ロボやライダーのフィギュアだらけのKazchari部屋.
普段はディスプレイケースに飾ったままのことが多い.
たまーに取り出して“ブンドド”...ではなく,ポーズや武装を変えて再陳列する.

iPhone11 Pro / 2022年1月20日撮影

間違っても,こいつらを使って「映画」を撮ろうとは思わない.

世の中にはいわゆる「ストップモーション・アニメ」という映画ジャンルが存在する.
少しずつポーズを変えて,1秒あたり約24コマ撮るという.

その最も有名かつ成功した映画は『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』だろう.

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス コレクターズ・エディション(デジタルリマスター版) [Blu-ray]

この作品はストーリーも面白く音楽も素晴らしい.
セルアニメやCGにない独特の動きもクセになる.
ただし,セット,人形作り,撮影に恐ろしく時間がかかるのは想像通り.

そんなストップモーション・アニメで,最近話題になったのが『PUI PUI モルカー』...ではなくて,これ.

JUNK HEAD(字幕版)

Amazon Prime Videoで配信中の『JUNK HEAD』である.
以下,あらすじを引用.

環境破壊が止まらず、もはや地上は住めないほど汚染された。人類は地下開発を目指し、その労働力として人工生命体マリガンを創造する。ところが、自我に目覚めたマリガンが人類に反乱、地下を乗っ取ってしまう。それから1600年──遺伝子操作により永遠と言える命を得た人類は、その代償として生殖能力を失った。そんな人類に新種のウイルスが襲いかかり、人口の30%が失われる。絶滅の危機に瀕した人類は、独自に進化していたマリガンの調査を開始。政府が募集した地下調査員に、生徒が激減したダンス講師の“主人公”が名乗りを上げる。地下へと潜入し、〈死〉と隣り合わせになることで命を実感した主人公は、マリガンたちと協力して人類再生の道を探る。今、広大な地下世界の迷宮で、クセ者ぞろいのマリガンとの奇想天外な冒険が始まる!(C) 2021 MAGNET/YAMIKEN

製作期間はなんと7年.
クレジットを見ると,監督,撮影,脚本,パペット製作などのスタッフ名のほとんどが「堀貴秀」で埋め尽くされている.そう,ほぼ一人で製作しているのだ.なんという情熱.
まるで『鷹の爪団』

さて,本編の感想(ネタバレ)

これがもしマンガやアニメだったら...その“ルック”からして,よくあるディストピア物.
弐瓶勉の世界観に似ている.
下層に降りていく展開には『メイド・イン・アビス』感もある.

しかし,ストップモーション・アニメにしたことで,独特の世界観がかもしだされている.そして,何よりも宣伝で言うところの,作者の「熱意と狂気」(ホメ言葉)がヒシヒシと伝わってくる.
ようするに好きです.

全体にかなりグロい.
“キモカワ”という言葉もあるが,そういうのではなく単にキモイ.

特に敵のクリーチャー群.
『バイオハザード』...いや『サイレント・ヒル』
その昔,ギーガーの『エイリアン』のデザイン,特に幼体が“モロ”と評されたのがかわいいほどの”モロ”.
モザイクかけての排泄シーンもあり,生理的嫌悪感を覚える...人によるかな.
たぶん,うちの娘とか,見た瞬間に停止ボタン押しそう.息子は爆笑するかも.

人間(態)側のキャラは,地下生活が長い人の特徴を出すためか,ATパイロットのようなゴーグルを装着している者が多数.

主人公は将来の我々たる(一応)人類.
なんとか生き残って地上で暮らしているが,生命そのものは永遠でも,身体は腐ちてしまうのか,機械化が進んでいる.
仕事はヴァーチャル空間でのダンス教師だが,もはや身体的接触は危険とされているのか,非効率とされているのか,可能な限り”ふれあい”を廃した世界に生きている.

なぜか冒険がしたくなった主人公は,地下調査員に立候補する.
永遠の命に飽きたのだろうか?

彼を中心に話は進んでいくが,どうにも感情移入がしにくい.
もちろん,今の現代人とは思考・行動パターンが違ってて当然なのだが,作劇中,記憶をなくしたり,言葉をなくしたり,外見が変わったりで統一性がなく,あまり魅力を感じないのだ.
キービジュアルの「白いロボ」で通せば良かったと思う.

一方,サブ主人公たる3バカトリオはキャラが立っている.
最後は“シーザーァァ!”してしまうけど.わかりやすい死亡フラグやったな.

異世界感を出すために架空の言語も作っている.
字幕付きだが,これはなくてもよかったかな.
その方がこの世界に浸れそう.
そう考えると,一切字幕なしにした『クウガ』グロンギ語はすごかったなぁ.

さてさて,肝心のストーリーだが...これが残念ながらイマイチ.

「化け物に襲われる ⇒ 逃げる ⇒ 落ちる ⇒ 壊れる ⇒ 修理される ⇒ 化け物に襲われる」のワンパターン.

そして,尻切れトンボで突然終了.
あれ? 生命の木は?

ただ,少し調べてみると,何やら3部作構想らしく,続編で真相が明らかになるそう.
少し前まで,製作資金稼ぎのクラウドファンディングも行われていた.

「Junk Head 1」の続編「 Junk Head 2」制作支援のお願い。

今では終了しているが,220万円ぽっちで大丈夫なのだろうか?
Amazom Prime Video配信後だったら,もっと集まりそうな...(Kazchariも支援したい)

作者がTwitterでやらかしたらしいけど,これも資金が集まらなかった原因?

女性の観客を「奇女・珍女」扱い SF映画『JUNK HEAD』監督がツイートも謝罪「差別はしてないけど区別してた」

エンディングでは製作・撮影風景が流される.
ジャンクパーツで作られたセットや小物に,見知ったパーツはないか探してしまう.
S.F.3.D,ホルニッセ裏面のゴッドマーズ頭部のように(わからん).

こうした巨大ジオラマだと,YouTubeのガンプラ動画にもスゴイのあるなぁ.

自分のフィギュアでコマ撮りアニメなんて作る情熱は持ち合わせていないが,別の方法でトライする気は満々.

うちの職場の専門学校はもうじき卒業式.

卒業生に対し,在校生や教員からメッセージビデオを送る伝統がある.
ありきたりな言葉で寒~い空気が流れるのも面白くないので,Kazchariは自分の子供らと一緒に,毎回ピタゴラスイッチの「こんなことできません」風動画を作ることにしている.

【ピタゴラスイッチ】こんなことできませんの簡単なやり方・撮影のコツを紹介!

いや,違うな.
Kazchari家は出演するだけ.
撮影・編集は在校生の役割.

できた動画は,家族の思い出.
ヒドいセンコー(死語)だ.

話がそれましたが,『JUNK HEAD』ワールドの狂気にはまりたい人,オススメです.

沢木耕太郎『一号線を北上せよ』を読んだ~そして1993年へ

2022/2/20 Sun

旅に復讐されるかも.

iPhone11 Pro

このブログを初めた頃,旅の回顧録~1993年のカンボジアというテーマの連載(?)をしていた.

これは,1993年の1月から10月にかけて行った東南アジア旅の記録で,当時の日記を元にして書いた.
そのオリジナルは,今はなき「Nifty Serve」のミステリー小説スレッドにアップしていた文章.

当時のカンボジアは長らく続いた内戦が終了し,通常選挙がようやく行われるなどなかなかの混乱具合.
選管ボランティアの日本人青年が殺害されるなどの事件もあった.

国中あちこちに地雷が埋まっており,観光するのも命がけ.
夜間には銃声.
今思うに,よくふらふらと出歩いてたもんだ.

人類史上最大の愚行の一つ「カンボジア大虐殺」に関しては,この映画のアプローチがすごい.

消えた画 クメール・ルージュの真実

こうした世界の負の側面を目の当たりにするなど,20代にああした行きあたりばったりの旅をしたことは,今の人生に大いに役立っていると思う.
この後,結局長年の夢だった協力隊への参加も実現できたしな.

この『1993年のカンボジア』は国境を越えて,ヴェトナムに入国したところで終わっている.

もちろんその後も旅は続いた.

サイゴン(ホーチミン・シティ)から,バスや列車を乗り継いでハノイまで6週間かけて北上.
カンボジアほどのインパクトはなかったけど,これまたエキサイティングな経験だった.

Kazchariが初めて海外に渡ったのはいわゆる卒業旅行.
1989年のケニア-インドーネパール旅だった.
この時の期間は1ヶ月ほど.
全てが新鮮そして強烈だったが,所詮短すぎた.

そして就職.
その会社を辞め,帰国日を決めない無期限旅行を決意させたのは2冊の本がきっかけである.

一冊は蔵前仁一の『ゴーゴー・アジア』.

新ゴーゴー・アジア(上巻)

もちろん,前作の『ゴーゴー・インド』も読了済み.
蔵前の一連の著作のおかげで,世の中にはこんなに楽しい旅の仕方があるのだと知った.

もう一冊は,より人口に膾炙する名著,沢木耕太郎の『深夜特急』である.

深夜特急(1~6)合本版(新潮文庫)【増補新版】

いまさら解説しようがない.
この本のおかげで,何万,何十万の若者が旅立ってしまったことやら...
有名な話だが,第1便,第2便(文庫版では1~4巻)と第3便の間には,6年間の刊行ブランクがある.
東南アジアやらインドが含まれる1,2便の方が旅のネタには事欠かないはずなのだが,Kazchariは第3便のヨーロッパ編が一番おもしろかった.
作者自身の文章力の向上ゆえかな(なぜ上から?).

大沢たかおのTVドラマも話題になった(VHSで保存している).
松嶋菜々子の登場にはズっこけたが.

さて,沢木耕太郎である.
その最大の魅力は,もう沢木節としか言えない独特の格調高い文体にある.
特に,ボクシングというスポーツを,ここまで詩的に昇華させた作家はなかなかいないのでは?

その影響力は凄まじく,一時スポーツライターをやってた”五体不満足”な人も,その文体をマネしていた記憶がある.

沢木の著作はかなりの数を読んでいるが,今回図書館でたまたま手にとったのがこちら.

一号線を北上せよ~ヴェトナム街道編 (講談社文庫)

珍しく未読だった.
文庫版の表紙には「ヴェトナム街道編」と書かれているが,単行本にはそのような表記はない.
「一号線」「北上」と聞いて,すぐに「あっヴェトナムのことだ」とわかるのはパッカーのみであろう.

内容は沢木のプライベートと取材旅行記であるが,ヴェトナムだけでなく,「キャパのパリ」「フォアマンのアメリカ」「檀一雄のポルトガル」「アルペンスキーのアルプス」「酒場のマラガ」(Kazchari命名)も含まれた短編集である.
Kazchariはポルトガルとスペインも訪れたことがあるので,懐かしく,楽しく読ませてもらったが,やはり白眉はヴェトナム編の2本である.

奥付をみると,2000年あたりの旅のようだ.
Kazchariは1993年の訪問だったので,若干のズレがある.

一見して,旅のシステムがかなり整ったようだ.
当時のタイと同程度か.
沢木の旅からさらに20年近く経った今では,どうなっているのやら...
Wifiも当たり前やろうしな.
そういや,ここしばらく,ヴェトナムってかわいい小物だとかグルメやらで,女性にも人気の旅先だった.
新コロが全てを破壊したけど..

ここで思いついた.

『旅の回顧録~1993年のカンボジア』の続き,つまり『1993年のヴェトナム』をリライトしようと.
まぁ,30年近く前の旅行記に何の情報的価値もないが,しょせんブログなんて単なる個人の歴史.
SNSではないので,即時性とか気にするものでもない.

ただし,本書『一号線~』にこんな記述がある.

「旅は繰り返すものではないし,繰り返せるものでもない.それを知りながら旅をなぞろうとすると必ず手痛いしっぺ返しを受ける.旅に復讐される,といってもいい.」

実際に再訪するのでもなく,文章で追憶するのも同様なのだろうか?
当時の日記を読むと,どうしようもなく,あの頃(の自分)に帰りたくなることがある.
でも,同じ瞬間は,もう二度と起こり得ない.
全ては過去.もう取り戻せない.

そう,『ブレードランナー』のレプリカント,ロイの最後のセリフのような心境になる.

一方で,沢木はこうも書く.

「旅先で覚えたその痛切な思いは,決して消え去ることはない.私たちの体のどこかに眠っていて,必要な時に呼び覚まされることになるはずなのだ.」

いいなぁ.その通りだろう.
この文章だけでごはん3杯はいけそう.
『深夜特急』本編と比較すると,『一号線~』は”帰ってきた人向けの本”なのだろう.

とかなんとか色々それっぽいことを言ってますが,これもまた”終活”の一貫として,『旅の回顧録~1993年のヴェトナム』,近日スタート!
全く需要はないだろうけど,それでいいのだ.

以下,余談.

Kazchari家では『水曜どうでしょう』の何度目かの再放送を夕食時に視聴している.
ちょうど今放送中なのが「原付日本列島制覇」という回で,東京から高知までカブで向かうという企画.
2010年の放送なのだが,鎌倉付近を通過する際,大泉がカメラに向かって「いざ!鎌倉!」と吠えるシーンに震えた.
まるで,未来を予言したかのようなセリフ.

ご存知の通り『水どう』は2002年にレギュラー放送を終えるのだが,その最後の旅がカブによるベトナム縦断1800キロなのだ.
正に一号線を北上...ではなくハノイ発で南下する旅やけどな.

またしてもシンクロニシティ発動?

Kazchari的に,今ヴェトナムが熱い!

映画『マネー・ショート』を観た~知らないことを知っていると思い込むのが厄介なのだ

2022/2/18 Fri

What gets us into trouble is not what we don’t know.
It’s what we know for sure that just ain’t so.

何も知らないことが厄介なのではない.
知らないことを知っていると思い込むのが厄介なのだ.
マーク・トゥエイン

Kazchariは一応投資活動をしているが,いわゆる「ほったらかし投資」であり,金融についての知識は非常に乏しい.
「めちゃめちゃ利息の良い定額預金」程度の認識である.
トレーダーのように一日中モニターに張り付いて日々の平穏を乱すような生活はしたくないので,これで十分.
正にローリスク・ローリターンで絶賛運用中.

そんなKazchariが手を出してしまったのが,Amazon Prime Videoで配信中の映画『マネー・ショート』である.

例によって,3本ローラー練しながらの鑑賞なので,通しではなく,ブツ切れで.
元々この映画は長い.

マネー・ショート 華麗なる大逆転 [Blu-ray]

以下,あらすじ.

実話に基づき、4人のアウトサイダーを描いた物語。大手銀行、メディア、政府が否定した世界経済の破綻を予見した男たちによる大胆な投資は、銀行のいかがわしい闇を浮かび上がらせた。そこには人間も物も、何もかも信じられない世界があった。

鑑賞後,一言...

「話の筋がさっぱりわからん」

似たようなアルファベット3文字の金融用語の乱舞に頭が混乱.
そもそも邦題が悪い.
「華麗なる大逆転」ってなんだ? そのようなスカッとさわやかな話ではないぞ.

とは言え,「意識高い系」「選ばれし者」だけに向けられているというわけではなく,エンタメ性にもちゃんと配慮している.

例えば,話の途中でいきなり登場人物が“第四の壁”を越えて,観客(我々)に話しかけてくる場面があり,難しい専門用語をたとえ話で解説してくれる.
特にカジノにおける「合成CDO(合成債権担保証券)」の説明は非常にわかりやすかった.

さらに,実在の登場人物を超一流俳優が演じているので,彼らの緊張感のあるやり取りから,この後,何かとんでもないことが起こるであろう,サスペンス風味の表現も素晴らしい.
それに,揃いも揃って変人だらけで,全員キャラが立ちまくり.
彼らを観ているだけでも面白い.

そこで,冒頭に上げたマーク・トゥエインの言葉である.
有名なソクラテスの「無知の知」と大意は同じだろう.

この言葉は誰に向けて発せられたのか?

一つはもちろん劇中の金融バブルに踊らされた人たち.

もう一つは我々,観客であろう.

この映画を「さっぱりわからん」「つまらん」「駄作」と切って捨てるのはまだマシ.
「ほほぉ,何かややこしい金融用語が飛び交ってるけど,オレは”だいたい”わかるぜぃ.きっとこんな意味に違いない.深いなぁ...(何が?)」で済ませてしまうのが一番厄介.

とは言え,わからんもんはやっぱりわからんので,ここはやはり解説サイトの力を借りよう.
鑑賞後すぐに,こんな作業をするのは『TENET』以来やな.

『TENET』をネットの力で解釈

とりあえず,Google先生による検索上位サイトを片っ端から熟読.

億万長者も夢じゃない!? 《4000億稼いだ男たち》の実話には 「お金稼ぎのヒント」がいっぱい!

観る前にこれを知れば『マネー・ショート』がもっと面白くなる!5つの経済用語

マネー・ショート~”リーマンショック”を予期した4人のアウトローたちの葛藤

映画『マネーショート』からリーマンショックを解説~第16回インターン勉強会~

金融用語に振り回されない!どこよりも分かりやすい『マネー・ショート 華麗なる大逆転』解説

このように,解説サイトが山のようにある.
全く便利な世の中だ.
『2001年宇宙の旅』が今,公開されたとしたら,どれほどサイトが乱立するのやら.

つーことで一通り閲覧しました.
なるほど.
ようするに,住宅ローン債権が破綻した場合の保険に対して空売りを仕掛けていたわけだな.
金融用語や構成の全てを理解したとは言わないが,誰が何のために動いていたのかが見えてきた.

ただ,最終的に大金を稼いだ主人公たち.
リーマン後のアメリカ社会を見て,誰も彼もが複雑な顔で苦痛に満ちており,決して大喜びしていない.
Win-Looseのゼロサム・ゲームにおける勝利は(まともな感性を持っていれば)むなしいだけのかもしれない.

それに結局は誰も逮捕されず,不公正な仕組みはなおも残っている.
あれ? これって某国の某事件と一緒のような...

いずれにせよ,以前の記事にも書いたけど,今後の教育に金融リテラシーを取り入れるべきなのは間違いない.
公的機関が行わないのなら,各家庭の責務となろう.
そうでないとダマされる.

小学生にIT教育は必要?~それよりは...

いや,逆に知らない方が幸せという考えもある.
実際,リーマンショックの際,先進国の中で最も被害を受けなかったのは,投資よりも預金率が圧倒的に高い日本(の庶民)だけだったという話もある.
皮肉にも,冒頭文の「知らないことが厄介ではない」を具現化したのかもしれない.

余談だが,この映画,時折変な日本推しの場面がある.
ラスベガスの日本食レストランでの鉄板焼や歌謡曲(徳永英明らしい)など.
2006年頃はまだ日本が,アメリカの金融市場に影響力を持っていた証なのだろうか.

つーことで,映画『マネー・ショート』,各サイトにて金融用語について一通り予習してからの鑑賞をオススメです!

『FASTEST』を観て~VRは普及するのか?

2022/2/13 Sun

脳だけで生きていける?

Zwiftの友,Amazon Prime Video.
先日,GPライダー,バレンティーノ・ロッシの自伝的映画『FASTEST』を観た.

FASTEST [Blu-ray]

長年第一線で活躍していたロッシも2021年,ついに引退.
若いと思ってたけど,もう42歳か.
ロードレースで言うところのペテル・サガンとイメージかぶるのはKazchariだけだろうか?
ともにスーパースターであるのは間違いない.

とは言え,毎年全ステージを食い入るように観戦している自転車の「グラン・ツール」に比べると,それほど熱心にMotoGPを追いかけているわけではない.

Kazchariが最もオートバイにハマっていたのは80年後半から90年初め.
その頃の最高峰と言えば「2st/500cc」やね.

エディ・ローソン,ウェイン・レイニー,ワイン・ガードナー,ケビン・シュワンツ,ランディ・マモラ,ロン・ハスラム,サロン兄弟とか.

弱ペダ並にキャラが濃い.何もかもみな懐かしい.
そういやTECH21カラーのYZFに乗った平忠彦の8耐を観るために鈴鹿まで行ったなぁ.ひたすら暑かった.

2018年,パプアニューギニアのワリンディにダイビングしに行った時,バディだったオーストラリア人がバイク・エンスー(死語)で,Kazchariが先ほどのレーサーの名前を出す度に大喜びしてた.

「Kaz! シドニーに来たら是非寄ってくれ.うちの家は広いぞ.一緒にツーリングに行こう!」と誘われている.

現在もSNSでのつながりはあるが,いつ行けるやら...

さて,『FASTEST』に話を戻す.
この映画の公開は2011年.
ちょうど,小型オンボードカメラの黎明期(GoPro HERO3の発売は2012年).
この映像でも車載動画シーンがある.
まだまだ解像度や構図はイマイチなれど,時速300kmを越える世界を少しだけ感じることはできる.

バイクレースと言えば肘スリバンク(この時代はまだ角度が甘い)と転倒がつきもの.
Kazchariもスマートトレーナーという固定型に乗っての鑑賞だったから良かったものの,3本ローラーだと”つられ転倒”が起きてたかも.

実際,『アメイジング・スパイダーマン』を観ながらの3本ローラーはヤバかった.

アメイジング・スパイダーマン シリーズ ブルーレイ コンプリートBOX [Blu-ray]

とまぁ,明らかに身体の外部に映し出された虚像にさえ,脳が騙されて身体が反応してしまう.
これ,仮想空間,VRゴーグルがもっと普及したらどうなるんやろ?

最初に一般化(?)したのはPS4の拡張機器だったかな?(いや,任天堂のバーチャルボーイ?)

VRはいつから普及が始まった?仮想現実の歴史を紐解く

Kazchari家にこの手のハードはない.
いや「Wii」はあったか? あれもVRっちゃあVR.

こないだ呼んだ『スピリチュアルズ「わたし」の謎』にも,VRゴーグルを付け,高層ビル間に渡した板を歩くというアトラクションが紹介されていた.
あまりにリアルなため,一人で歩かせると認知的に”危険”なので,かならず両サイドにアシスタントを配置するらしい.

橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』~サイコパスは誤解

スピリチュアルズ 「わたし」の謎

しかし,「脳がない生物はたくさんいるが,脳だけの生物はいない」のも事実.
やはり肉体感覚は大事やな.

少々記憶があいまいだが,何かの記事で「VR内で積み木を学んだ子供は,リアルな積み木ができない」と読んだことがある.
つまり,視覚入力情報を受け,処理してからの出力は本来であれば,自分の手で形・重さ・質感のある積み木を触らなければならない.
しかし,それが「ボタンの操作」に置き換わってしまうと,認知の発達を促さないということなのだろう.

ただし,VR,そして周囲の状況を完全にカットするゴーグルの進化は否定できない.
何らかの事情によりとある場所ら移動できない人にとって,この技術は朗報.
もはや娯楽の域を越えて,スマホ並の必須機器として普及していくのだろう.

エレコム VRゴーグル スタンダードタイプ リモコンセット ブラック VRG-M02RBK

今,ざっくりとAmazonで調べたけど,もうこんなに安くなってるねんな.
知らなかった.
これだけ安いと「一つ試してみるか」という気持ちにもなるなぁ.これこそヤバい.

まぁ,どれだけ普及しようとも,使うか使わないかは個人の自由.
でも,こいつはひょっとすると人生最後の「尊厳死マシン」として使えるようになるかも.
自分の望む風景を観ながら,安らかに逝けるならそれも悪くないかも.

そうそう,最後にバイクレースと言えば『マン島TT』が一番ぶっとんでて”面白い”と思う.
言わずと知れた世界最凶の公道レース.

VRうんぬんは抜きでも,そのレース映像を観るだけでもとんでもない.

石の壁が続く,とんでもなく狭い街中や,アップダウンの激しい丘陵コースを走る360kmのレースの優勝タイムが,最近では1時間40分ほどである.え?

『グランド・ジャーニー』を観た~こういうのがいいんだよ

2022/2/8 Tue

かわいい子には旅をさせよ.

近頃は映画やアニメをやたら分析的に鑑賞するクセがついてしまった.
原因はいくつかある.

一つは岡田斗司夫をはじめとするYouTuberやブロガーの解説を目にする機会が増えたこと.たちの悪いことに,これらの裏読み解説は知的好奇心を刺激し,やたらに面白いのだ.

もう一つは,2年半ほど続けているこのブログ.
雑記系ブログなので,自分の周囲に起きたこと全てがネタ.

映画を観たとしても,こうしてアップするなら,単に「面白かった」では済ませたくない.
頭の中にうずまく観念を具現化する作業が面倒くさい.けど...それが楽しかったりもする.
まっ,わざわざブログ書いている最大の目的はボケ防止やしな.

結果,鑑賞後,妙に裏読みし,関連作品との比較,メタファーやら社会的意義まで強迫的に考察するようになってしまった(そういう作品を選んでいるのでは?).

そんな中,たまたまAmazon Prime Videoで見つけたのがこの映画,
「そうそう,こんなのでいいんだよ」と某ゴローさんが唸るような作品だった.

グランド・ジャーニー [DVD]

クリスチャンは風変わりな気象学者で、フランス・カマルグで雁の研究をしている。超軽量飛行機を使い、渡り鳥に安全なルートを教えるという、誰もが無茶だと呆れるプロジェクトに夢中だ。そんな変わり者の父親と大自然の中で過ごすバカンスなど、オンラインゲームに夢中な息子トマにとっては悪夢でしかない。Wi-Fiも繋がらない田舎で暇を持て余したトマは、ある出来事をきっかけにその無謀なプロジェクトに協力することに…

以下,鑑賞後のネタバレ&感想.

冒険心たっぷりなお医者さんが莫大な金と時間を使って,人力で日本人のルーツを探るような邦題だが,原題は仏語で「Donne moi des ailes」
訳すと「翼をください」だ.ガフの扉が開きそう.
実話ベースのフィクション作品である.

髪型が少々アレな14歳のトマ(どこか東洋人っぽい).
両親は別居し,母親の新しい彼氏と3人で暮らしている.
よくわからんけど,このあたりがフランスっぽい(偏見).

あらすじ通り,トマの父親クリスチャンは,渡り鳥に飛行ルートを“教える”プランを実行するのだが,その方法がとんでもなかった(職場の許可は得られず).

「渡り鳥は一度通った空路は忘れない」という習性を利用し,孵化直後の“刷り込み”に成功した雁(ガン)を,クルマでノルウェーの端まで連れていき,そこから(親と思わせた)パイロットむき出しの「モーターグライダー」で,鳥たちを引き連れて,元のフランスの湿地まで戻るという計画.

なんと! 2000年,実際に成功したらしい.

さて,劇中登場のモーターグライダーだが,日本では超軽量動力機=マイクロライトエアクラフトに分類される.

体重移動操縦型で,下面にフロートがついており,水面があればどこでも離着陸が可能.
日本(北海道?)では「モーターパラグライダー」はたまに見かけるけど,このタイプは見たことがない.
劇中,フランスでは15歳で免許が取れるとあった.
日本では,なんと国家ライセンス不要だそうな.

一般財団法人 日本航空協会

国交省の許可があれば飛べるとは!?
現状,大型ドローンと同じような扱い?
買おうかな? いや,ウソ,無理です.
スキューバダイビングと比べても,さすがに危険すぎる(フライングスーツよりはマシ).

それに劇中での高度,あれ相当やな.怖すぎる.

クリスチャンの本棚に「ニルスの不思議な旅」がおいてあった.
幼少期に読んでいたであろうトマが手に取る.
この伏線は,後で見事に回収される.

ニルスのふしぎな旅

さて,親父の不用心な行動により,偶然にもトマが一人でグライダーを操縦してノルウェーからフランスまで戻ることになった.

“ほぼ”CGなしの空撮が話題.
最近の「本当はバックがグリーンな場面」だとわかりつつも,超絶なアクションに慣れてしまった観客には地味に映るかもしれない.
でも,こういうのでいいんだよ.
しかしながら「ラピュタ」っぽい乱気流シーンは,さすがに実写では無理だったようだ.

さて,今風にSNSへの拡散やら,親切な人々の助けにより,なんだかんだでフランスに帰還するのだが,トマの旅の進行とともにクリスチャンとパオラの夫婦関係も修復されていく.

川で体を洗う奥さんをチラ見する元旦那が微笑ましくて良い.
そういや何のために出てきたのかわからない女性カメラマンやけど,パオラに嫉妬させる=復縁させる役割だったのだろうか?

前半では,トマの冒険心をちょこちょこ抑制しようとするパオラ.
その後,ノルウェーからトマが一人で飛んだことを知り,クリスチャンに大激怒.
トマの発見後も,クリスチャンは自分の不手際でこうなってしまったことに狼狽し,計画を断念しようとする(=鳥の羽根を折る).
ところが,息子の確かな成長を見た後の母親の変化が面白い.
クリスチャンの決定を無視し,トマをもう一度飛ばさせる.
ある一線を超えると,女性の方が度胸を見せるという描写が良い.
子どもの成長を素直に喜ぶ,いいお母さんやな.
会社でけっこうな役職についていそうなのも納得.

さて,この映画のもう一方の主役がカオジロガンのアッカ.
カリガネガンの群れの中に手違いで一匹紛れてしまった.
劇中,クリスチャンが「同じ群れにしておくことはできない」だのなんだの言うし,途中で2回ほど行方不明になるしで,いつ死ぬのかとヒヤヒヤした.

ちなみにガンとカモ,Kazchariは区別がつかない.

ガンとカモは何が違う?雁行の由来になった鳥

ちなみに,日本で一番有名なカモであるカルガモは渡らないそうな.

というわけで,博物館の館長だとか,ノルウェーの自然保護官だとか,知事だとか頭の固い杓子定規的な大人も登場はするものの,すっきりとした展開.みんな職務に忠実なだけ.
昨今のメタだの,パラレルだの,悪には悪の論理が云々といった小難しい映画ばかり観ている中で,一服の清涼剤になりもした.

まぁ,強いて言うなら,クルマでノルウェーまで行く間に,もう少し父と息子の交流シーンが欲しかったなぁ.フランスからは,あっという間に目的地に着いてしまった.
蛇足かな.

調べてみると,『グース』というアメリカ映画が1996年に公開されている.
未見だが,これもかなり評判が良い.

グース [Blu-ray]

テーマ的に本作と似ている?
動物,家族,そして飛ぶ! ヒットしないわけがない.

そういや,よりドキュメント寄りのこういう映画もあったな.

WATARIDORI ディレクターズ・カット -デジタル・レストア・バージョン- Blu-ray

この映画の製作に関わった人鳥類研究者がクリスチャンのモデルらしい.

さて,『グランド・ジャーニー』を純粋に少年の成長映画として捉えると...やはり旅ですよ旅.
男を鍛えるのは旅ッ! それも一人旅ッ!

「若い時に旅をせねば老いての物語がない」は,とある狂言から.

Kazchariとしては,アホ息子に「中学生で北海道一周,高校生で日本一周,大学生で世界一周しろ」と絶賛洗脳中.
最終的には宇宙飛行士か.

JAXA 宇宙飛行士候補者募集

13年ぶりの募集だそうな.

つーことで,映画『グランド・ジャーニー』,普通に鳥もかわいいし,オススメです.

『アルキメデスの大戦』からのぉ~教え子に会った日

2022/2/5 Sat

最も教師に向いていない男.

iPhone11 Pro

今日も旭川は良い天気.
降るには降るのだが,ほとんど積もらない.
このままだと,2月下旬にはロード練開始できるのでは? つまりモンキーも乗れる?(願望)

さて,諸般の事情により午前中は在宅義務.
朝食を食べた後,久々にZwiftの「Quatch Quest」(47km)を選択.
そう,「Alpe du Zwift」登攀である.
このコース,山が始まるまでが長い.
特にタイムアタックは考えていなかったのでのんびりと.

当然,Amazon Prime Videoがライドの友.
今日の映画は...アニメ以外で久々の邦画『アルキメデスの大戦』だぁー!

アルキメデスの大戦 Blu-ray

以下,Amazon掲載のあらすじ.

1933年。欧米列強との対立を深め、軍拡路線を歩み始めた日本。海軍は、世界最大の戦艦を建造する計画を秘密裏に進めていたが、省内にはこの計画に反対する者も。そのうちの一人である海軍少将・山本五十六は、巨大戦艦の建造がいかに国家予算の無駄遣いか、独自に見積もりを算出しようと考えていた。必要なのは、軍部の息がかかっていない協力者…。山本が目を付けたのは、元帝国大学の天才数学者・櫂直。ところがこの櫂という男は、数学を偏愛し、大の軍隊嫌いという変わり者だった。初めは頑なに協力を拒んでいた櫂だったが、山本の「巨大戦艦を建造すれば、その力を過信した日本は、必ず戦争を始める」という言葉に意を決し、帝国海軍という巨大な権力の中枢に、たったひとりで飛び込んでいく。同調圧力と妨害工作のなか、巨大戦艦の秘密に迫る櫂。その艦の名は、「大和」...

2019年公開.
何かと評価の高い映画である.
それにしても,山崎監督は作品の当たり外れが激しい.
「ドラ泣き」とか「宇宙戦艦キムタク」はアレやったし...

つーことで,全く期待せず観たが予想外に面白かった.
原作も完結しておらず,落としどころが難しかったと思われるが,非常によくまとまっている.
冒頭の戦闘シーンを除けば,戦争映画ではなく謎解きミステリー.クライマックスは法廷ドラマ.
山本五十六(舘ひろし)はじめ,おっさん達がいい味出している.

それにしても...改めて「大和」のデザインはかっこよすぎる.
倫理観よりも,何よりも”美しさ”に惹かれてしまう...技術者マインド全開になるのもやむなし.某映画の堀越二郎と通じる.

歴史改変はさすがにできないし,そういう映画じゃないしな.
Amazonのレビュー見たら,海軍の作法大和の兵装についてネチネチと文句つけている人がいたが,そこ大事?

細かい演出で気に入ったシーンがある.
冒頭の大和の戦いで,パルスレーザー...じゃなくて対空機関砲が敵機を撃墜.
パイロットがパラシュートで脱出すると,それをすかさず水上飛行機が救助に来る.
それを見た日本兵が唖然とするシーン.
個々の兵隊の生命,特に莫大なコストをかけて育てたパイロットを大事にする米軍と,無駄かつ無理な精神論だけで戦う日本軍との比較が面白かった.

また,これは勝手な想像だが,菅田くんは関西人なので鶴瓶のセリフ回しに相当引っ張られそうになったのでは?(そんなことないか)

さて,2時間以上漕ぎ続けてケツの痛みがむっちゃ気になる頃,ようやくゴール.
ターンして,下りは放置.
その間にシャワーを浴びて昼食.

午後からフリー.
2月に入ったので,毎年恒例,DOMANEをオーバーホールに持っていく.

クランカーのご主人としばし談笑.
相変わらず,完成車もパーツも全然入ってこないとのこと.
Project-ONEもオーダーストップ中.

ただし,運良くオーダーが通った場合,急に納期が早まったり,パーツがグレードアップされてたりするらしい.
”待てる”のなら,今が購入チャンスかも.
ディスプレイされていたProject-ONEのMADONE,実に美しい...

さて,チャリを預けて用品を眺めていると,「ひょっとしてKazchari先生ですか?」とお客さんから声をかけられる.
もちろん,ご時世柄のマスクマンなので思い出すのに時間がかかったが,6,7年前に卒業した教え子のSだった.

なんでも,クランカーさんで買ったTREKのクロスバイクを売りにきたとのこと.
子供が小さいので乗るヒマがないのと,将来的にロードバイクが欲しいので,というよくわからん理由.

Sとは,在学中「中札内」や「空知」のグルメフォンドに一緒に出たことがある.
いや,一緒ではないな.あくまで現地集合だった.

Kazchariの割とガチな自転車ライフについて熱弁し,ロード購入のあかつきには,ぜひとも”変態ワールド”に入国するよう誘っておいた.
レース,ブルベ,Zwift,スノーライドなど,一度足を踏み入れたらシャバには戻れんようなるけどな.ゲヘゲヘ.

とまぁ,色々話したが,どうやら彼が話したかったのはカメラ趣味の方だった.
なんや,そっちか.

S「先生はどこのカメラ使ってるんですか?」

Kazchari「オリンパスや」

S「えー,マイクロフォーサーズですかぁ?」

Kazchari「(ムカっ)おお,なんか文句あるんか!」⇒ ウソ.怒ってません

どうやら,子供ができたことをきっかけに写真にはまったようだ.
話の中にもちょくちょく専門用語が出てくる.

そのSが面白いことを言っていた.

「学生の時,先生が『写真を趣味にすると,世界の見え方が変わる』って言ってたじゃないですか? あれ本当ですね.今になってわかりました」

言った言った.
そして,それは絶対的真実.

常に構図を考えながら世界を観るようになる.
ここで,どう切り取れば自分だけの聖域に閉じ込めることができるか.
シャッターを切れば,その瞬間,自分だけの最強世界が爆誕する(by浅草氏).

そして,何より写真には撮り手の感情が写る.
これも間違いない.
それが最も具現化するのが,自分の子供を撮る時.

2006年5月撮影 OLYMPUS CAMEDIA C5050Z

卒業して数年経ってから「あの時の話の意味が,今わかります」と伝えてくれる.
こういうのが教師冥利に尽きるってヤツなのだろうか.
素直にうれしいね.

では,今度会った時には5時間コースで,カメラとチャリとオートバイとダイビングとプラモデルとキャンプとアニメと映画と投資の話をしてやろう! 覚悟しとけよ!

(迷惑なセンコーだ...)

橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』~サイコパスは誤解

2022/2/3 Thu

フリをしているフリをする

著作が出版されれば,必ず読む作家が2名いる.

一人は言わずもがなの森博嗣.

息子へのプレゼント~森博嗣『勉強の価値』を読んで

もう一人が橘玲(たちばな あきら)である.

この二人は毎回,Kazchariに知的興奮を与えてくれる.

先日,その橘氏の『スピリチュアルズ「わたし」の謎』を読んだ.

スピリチュアルズ 「わたし」の謎

氏の著作を初めて読んだのは10年少し前だったかな.
老後の資産形成を見据え,投資を考え始めた頃だった.

そのおかげで,インデックス長期分散投資の有利性を理解し,そして「PT」という存在を知った.
世間には,定住地を持たずタックスヘブンに資産を預け,諸外国を転々とする「永遠の旅人(Permanent Traveler;PT)」がいるらしい.
元来の旅人気質で状況が許すなら10年でも20年でも旅し続けたいと考えているKazchariには憧れの存在(?)だった.

最近は,国家間における金融取引の情報交換が厳密になり,合法的な節税がほぼ不可能になったらしいが,それならばと,昨今では早期リタイヤたるFIRE信仰が大流行している.
やはり労働嫌いっつーか,徹底的に好きなことだけしたい人間はどの時代も一定数いるねんなぁ.

その後も,人的資本の大切さを解説する『専業主婦は2億円損をする』や,最新の知見に基づく遺伝の影響を赤裸々に綴った『言ってはいけない』などの発表で,炎上騒ぎを起こしている(あくまで一部界隈だけだが).

専業主婦は2億円損をする

言ってはいけない―残酷すぎる真実―(新潮新書)

さて,今回読んだ『スピリチュアルズ「わたし」の謎』は,書名だけ聞くと”あっち系”っぽく,少々胡散臭いが,中身はヒトの“性格”を科学的に論述した書籍である.
例によって,世間にはびこる有象無象の自己啓発本とは一線を画した内容.

以下,簡単に概要を紹介.

パーソナリティ心理学における「ビッグファイブ(主要五因子)」をベースに,ヒトの性格を①「外向的/内向的」②「楽観的/悲観的」③「同調性」④「共感力」⑤「堅実性」⑥「経験への開放性」の要素に還元.さらに⑦「知能」⑧「外見」を加え,計8因子で紐解いていく.

その分析は3つの原則に基づいている.

(1) こころは脳の活動である
(2) こころは遺伝の影響を受けている
(3) こころは進化の適応である

これらの前提を元に,本書の内容をざっくりまとめると,遺伝や脳の神経伝達物質など,個人の力ではどうにもできない要素で,ヒトの性格は形成される.

その性格傾向を無視するような(日本人が大好きな)「努力すればなんとかなる」は幻想.
「努力できる」も持って生まれた才能の1つ.
やはり,現代社会を生き抜くには「適材適所」を見つける,これにまさる行動はない.

とまぁ,一応教育関係の仕事に就いているにも関わらず,今回も“言ってはいけない=身も蓋もない理論”に同意してしまう.

さらには,Kazchari自身の性格分析にも新たな知見を発見.

それは「共感力」に関する章.

この章では,「共感力」すなわち「相手と感情を一致させる能力」について述べている.
それに「メンタライジング」という「相手の“こころ”を理解する能力」という別の要素を掛け合わせて分析している.

つまり,「共感力」が高いか低いか,「メンタライジング」が高いか低いかで四象限のグラフを作ると,次のような分類になる(そのままの図を載せるのまずいので文章で).

(1) 共高/メ高 ⇒ コミュ力が高い
(2) 共低/メ高 ⇒ サイコ
(3) 共低/メ低 ⇒ コミュ力が低い
(4) 共高/メ低 ⇒ アスペ

おお,ものすんげー納得.

Kazchariは昔から,周囲の人間に「冷めてる」だの「ヒトデナシ」だの「ノリが悪い」だの「ワタシの気持ちをわかってくれない!」と(たぶん愛情こめて)ボロカスに言われている.

「共感力に問題がある=アスペルガー症候群」という言葉が世に出てきた頃,「あぁ,Kazchariはこのタイプかなぁ」と思い,周囲に「オレ,アスペっぽいかも」と自嘲気味に話していた時もあった.

ただし違和感もあった.
アスペルガーの場合,定義上「人の気持ちがわからない」という前提があるのだが,Kazchariにそれはない.
例えば,目の前の人が泣いている場合,事情を知れば「なぜ泣いているのか」は理解できる.
そこに至った過程,感情の推移,表情などのノンバーバルな情報,脳科学的知識で分析し「泣いている理由」は理解できる.
ただし,それと「共感」は別.
「そこまで泣かんでもええのに...」とついつい思ってしまう.

それがこの本の解説で目からウロコドロップ.
言われてみれば当然なのだが,「理解」と「共感」は別モノなのである.
これでKazchariも今日から立派なサイコパス!...ってこれもイメージ良くないけど.

映画『羊たちの沈黙』のおかげで,「サイコパス」という言葉に「異常犯罪者」や「連続快楽殺人者」といったレッテルが貼られてしまった.

羊たちの沈黙 [Blu-ray]

しかし,なんでもかんでも相手の気持ちに「共感」しまくっていたら,ヒトは合理的に効率的に,そして道徳的に行動できない.
リストラを断行する経営者,死地に赴くよう命令する将官,成功率の低い手術をする外科医.
あくまで結果が伴うという条件付きだが,社会的成功者には「サイコパス」が多いという.

岡田斗司夫も「自分はサイコパス」と言いまくって,宣伝文句にしてるしな.

橘玲は述べる.

「サイコは“障害”ではなく,男のごくふつうのパーソナリティ」.

程度の問題に過ぎない.

物事を「冷たい認知」つまりメンタライジングで観察することで,今何をすべきか,言うべきかが判れば,つまり演技すれば社会生活に問題はない.

フリのフリを最後まで貫けば,それはホンモノとなる(かもしれない).

つーことで,やはり面白い橘玲の『スピリチュアルズ「わたし」の謎』,超絶にオススメです.

『戦闘メカ ザブングル』の思い出

2022/2/2 Wed

芸人さんの話ではありません.

iPhone11 Pro

昨年末,HDレコーダーの番組表をチェックしていて目を疑った.
なんと『ザブングル・グラフィティ』が地上波で放送されるとのこと.
これは要録画案件.

ザブングル グラフィティ [DVD]

1983年7月9日に劇場公開された作品である.
内容としては,TVシリーズの(一応)総集編.

併映は『ドキュメント太陽の牙ダグラム』『チョロQダグラム』
ちなみに劇場には行かなかったなぁ.なんでやろ?

当時は毎年&毎日,TVでロボットアニメを放送していた夢のような時代.
その中でも,やはり頭1つ飛び抜けていたのが日本サンライズの作品群.

まずは富野カントクの『ザンボット3』『ダイターン3』『ガンダム』『イデオン』.夢中になった.

そして『ガンダム』『イデオン』の劇場版に続く(いや並行か?)富野作品が『戦闘メカ ザブングル』である.

本来は富野カントクではなく,別の人が担当する宇宙モノとして企画が進行.
色々ゴタゴタがあって,富野カントクが引き継ぎ,その際に設定を大幅に変更.
宇宙モノが,なぜか“西部開拓時代風SF活劇”になった.

それゆえ主役メカである「ザブングル」のデザインが,その世界観に絶望的にそぐわない.
ジェットエンジン+翼で空を飛んで変形合体なんて,いくらなんでもオーバーテクノロジー.
周りのメカがハンドメイドの土木系重機なので,浮きまくっている.
よくそのまま採用したなぁ.

HI-METAL R 戦闘メカ ザブングル ザブングル 約170mm ABS&PVCダイキャスト製 塗装済み可動フィギュア

その反動なのかどうかは知らんが,ロボアニメ初の主役メカが同型複数登場+途中交代は実に斬新.
特に後半の主役メカ「ウォーカー・ギャリア」のデザイン,設定はギリギリ世界観にマッチしている.

HI-METAL R 戦闘メカ ザブングル ウォーカーギャリア 約180mm ABS&PVCダイキャスト製 塗装済み可動フィギュア

そして,ザブングルのリアルver.とも言える「ブラッカリィ」にスタッフの意地を感じる.

HI-METAL R 戦闘メカ ザブングル ブラッカリィ 約185mm ダイキャスト&ABS&PVC製 塗装済み可動フィギュア

ストーリーは西部劇+『ナウシカ』もしくは『猿の惑星』
冒頭のナレーション「惑星ゾラと言われる地球」が正確には「惑星ゾラと言われるようになった地球」だったとは気づかなかったなぁ(棒).

ザブングルの売りは,なんと言ってもその動き.
特に第一話にはたまげた.
明らかに『未来少年コナン』を意識している.

『未来少年コナン』再放送&配信中

ただなぁ...そのクオリティは限られた数話のみ.
キャラデザイン+総作画監督の湖川友謙さん率いるビーボォーの担当回のみがズバ抜けていた.
まぁ,この時期のアニメは誰が作監かによって絵柄がバラバラなのがお約束(ああキリコ).
それに比べれば,昨今のアニメのキャラ崩壊なんてかわいいもんだ.

また,その後の富野アニメの悪癖である,最初は明るくても徐々に暗くなる展開も健在.
ソルトのエピソードとか,エルチの失明とか...元々そんなシリアスな話だっけ?

ただ全体的にはポジティブで元気なストーリー.
後の『キングゲイナー』と並び白トミノの代表作である.

さらにお気に入りのポイントと言えば,その主題歌である.
和田アキ子と声質がそっくりな串田アキラですよ! ギャバンですよ!

オープニングも素晴らしいが,Kazchari的にはエンディングの『乾いた大地』を神曲認定.
以前,ザブングルとかアニメとか全く興味にない友達が,Kazchariの部屋で,偶然この曲を聴いていたく感動していた.そう純粋に楽曲として素晴らしい.

もちろん,MIOの挿入歌も忘れてはならない.
イチオシは『忘れ草』
TVでたまにやってる「アニソンベスト○○」とかに全くノミネートされないのは理解に苦しむ(ヲタクの戯言).

さて,その録画した『ザブングル・グラフィティ』を,先日,小学3年生の息子と観た.
イマドキの美麗アニメを観まくっているヤツの目に,40年前のロボアニメがどう映るのか楽しみ.

さすがに全50話のアニメを上映時間90分に収めるのは不可能なので,ホンマにエッセンスだけ,つまり“本編視聴済み前提”で作られている.

導入部分は割と尺を取っているが,以降は場面がバシバシ飛ぶ.
Kazchari自身も放送終了後,全話見返したことはないので,ほぼ40年ぶりの再視聴となる.
そう,当時,我が家にはまだビデオデッキがなかったのだ.
つまり本番のみの一発視聴が当たり前の時代.

しかしながら,今でもストーリーの割と細かいところまで覚えている.
この映画でピックアップされたシーンにも,たいてい見覚えがある.
中学生の“記憶力(ちから)”の成さしめる業だろうけど,他の理由として,当時購入したムック本や,プラモ製作のためにメカ設定画をアホほど眺めていたことが大きいと思われる.

つーことで本編の感想.
文字通りグラフィティ=落書きだった.

時系列ではあるものの,前後の話に関係なく名シーンが映し出されたり,突然,絵が止まり「これが動撮だ! 間に合わないとこうなっちゃう」とテロップが入る(息子混乱),

また,いわくつきの「トロン・ミラン」回の前には「関西のみなさん,おまたせ」のテロップが入ったりと,メタ的視点も取り入れられている.

※ この第27話は,甲子園の試合が延長になり,関西地方では放送休止になった.

一番驚いたのはラスト.
死んだはずのアーサー様が実は生きており,失明したエルチを「イノセントの技術で治してあげよう」と申し出るハッピーエンディングに変更されてる.
あれ? これって後年,悪夢の『新訳版Z』でも似たような...ゲホゲホ.

つーことで,少なくとも本編を一通り観ているKazchariおじさん的には満足.
懐かしいだけでなく,よくできた構成だと思う.
このラストの改変も“本来の”ザブングルらしくて良い.

で,息子はというと「ロボットの走り方が良かった」らしい.
おお,本質をついとるではないか.

そしていつものお約束会話.

息子「とーちゃん,このロボットのおもちゃ持ってんの?」

Kazchari「あたりまえやろ.超合金のザブングルもギャリアもあるわ!」

息子「ちょーだい! ちょーだい!」

Kazchari「アホか! 自分で稼いで買え!」

平和だ.

さて,そんなザブングルだが,他にも気づいたことがある.
先程,再視聴はしていないと言ったが,正確には,かなり前にレンタルDVDでTVシリーズの1枚目を借りた.

『ザブングル』は版権の都合なのかどうかはわからんが,財団B(EMOTION)ではなく,「タキ・コーポレーション」という会社からLD,DVD化されていた.

同じく版権を持っていた『イデオン』はマシだが,『ザブングル』DVDの画質のひどさは非常に有名.
妙に色合いが濃く,赤っぽいのだ.
悪名高い『千と千尋』のDVDよりひどい.
これは見れたものではないと,2枚目以降のレンタル視聴を断念した.

それが,今回の『ザブングル・グラフィティ』では見事に改善.
自然な色合いになっている.
発売が予定されているTV版のBlu-ray BOXは期待できるかも...

「戦闘メカ ザブングル」Blu-ray BOX PART-1

と言っても,いまや時代はサブスク.
「BANDAI CHANNEL」で全話配信中らしい.
これ以上加入先を増やしたくないので,「Amazon Prime Video」でも解禁してくれへんかな.
ガンダム系ばかりは飽きた.

さて,当時のサンライズアニメと言えば,高橋カントクの『ダグラム』『ボトムズ』『レイズナー』『ガリアン』『ガサラキ』路線も忘れてはならない.

『ボトムズ』人気は相変わらずだが,昨今,『ダグラム』も『ガンダム サンダーボルト』で有名な太田垣康男氏の新作マンガが発売されるなど,盛り上がりを見せている.
えー,でも『MOONLIGHT MILE』『サンダーボルト』をちゃんと終わらせてからの方が...ゴホンゴホンオニャンコポン.

Get truth 太陽の牙ダグラム (1)

漂白される世界,その先

2022/1/13 Thu

キレイは汚い 汚いはキレイ

自らの人生も含めた未来のヴィジョンにパラダイムシフトが起きた.
きっかけの1つはこの本を読んだこと.

ビジネスの未来――エコノミーにヒューマニティを取り戻す

ざっくり要約すると...

我々は山登りを終えて頂上=高原に到達してしまった.
つまり,

「経済が低成長に陥ったのではない。ただ、成長が”完了”しただけである」

という主張を様々なデータを元に論理的に展開.

今いるこの“高原”でココロ豊かに暮らす方法を模索すべし,という内容である.

そして,我々の生活は新コロ流行前には戻れない.
社会の仕組みも,人々の意識も変わってしまった.
状況の好き嫌いに関わらず,思考をアップデートしなければならない...という,前半パートは同意できる(わかりやすい)主張.

だが後半,その高原での生活のために提示された方法論がなぁ...

「真にやりたいコトを見つけ,取り組む」

⇒ そのためにも様々なことに取り組むことと提案しているが,それよりは社会が求められる仕事の中からチョイスする方が良いのでは?

「真に応援したいモノ・コトにお金を使う」

⇒ “真に応援”がよくわからない.誰の基準? 世代よって変わるのでは?

「ユニバーサル・ベーシック・インカムの導入」

⇒ さすがにこれは無理だろう.ヒトは得することよりも損することに敏感.もらう側はともかく取られる側は納得できないのでは?

ベーシックインカムとは?海外の成功例・失敗例などの事例を紹介

Kazchariの読解力に問題があるかもしれないが,作者のこれらの提案には賛同しがたい.
それに文体も後半になるにつれて,作者の思いが先走るのか,どんどん感情的かつ根拠があいまいで,論理的に破綻していく.

最終結論として,個々人の意識改革が必要とか...うん? かつてのサヨク運動を否定していた割には,一周回って同じこと言ってない?
「他人と過去は変えられない」という心理学の大原則で考えるなら「まず自分」というのは大正解やけどな.

ただし,世間というかテレビ,新聞,ネット記事に「もう日本はダメ」もしくは「日本スゴイ」といった両極端の主張があふれる中,それらとは一線を画したフラットな内容でした.
総論賛成,各論反対というヤツかな(会議で一番嫌われるタイプ).

もう1つは例によってYouTubeの岡田斗司夫ゼミ
新年早々のネタに唸られた.
無料部分+切り抜き部分だけからの知見.

要約すると,
「今すぐ,ネットに上げた悪口や,悪口に対するリツイートを消せ.
なぜなら,あなたがそれを書いた証拠は,AI検索によりたちまち発掘される.
誰かがあなたを評価しようとする際,必ずそれは調査される.
いつも社会に対する不満を述べていたり,不満を述べている者に共感している行動は,社会に対する危険思想とみなされ,あなたの信用スコアが下がる.」

まさに『サイコパス』『マイノリティ・レポート』の世界やな...

PSYCHO-PASS サイコパス 第1期 コンプリート [DVD] [Import]PAL

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さらに,この主張の根拠として上げているのが「漂白されていく社会」である.

昨今の,芸能人のスキャンダルに対する誹謗中傷や,ハリウッド映画やアメリカ企業の過剰なポリコレは,現状まだネタ的に捉えられているが,時代が進み,そうした主張が当たり前になると何が起こるか?

裏も表もない,純粋で正義な真っ白な”ヒト”だけが生き残る,漂白された社会となる.

Kazchariはその職業ゆえ,日々多くの若者と接している.
以前に比べ,良い悪いは別にして,どういう状況でも自分を繕わない“ありのまま”な学生が増えた気がする.
オープンな学生はいつでもオープン.おとなしい学生はいつでもおとなしい.

岡田斗司夫の主張を借りると,おっさんは「本音は汚い」と思っているのに対し,若者は「本音はキレイ」と思っている.

さらに,考察すると,
おっさんは「見た目がひどくても味が良ければOK」.
若者は「見た目がキレイでなければ味が良くてもダメ」 ⇒ 外も中もキレイなものしか受け入れない.

これが新コロ時代を越えた,次の世界の姿という.
以前に近い意見を持つ別の作家の記事を書いた.

「霊肉分離」で納得してしまった

こうした世界において,”汚い”と認定され,抑圧されたヒトの闘争本能はどこへ向かうのだろうか?
また(真波くんじゃないけど)肉体を酷使した時の「オレ,生きている!」という実感がないまま,ヒトは動物として存在していられるのだろうか?

やさしいだけの世界は心地よいのだろうか?

ココロの底に得体のしれないドロドロしたモノを抱えているのが自然.
それを様々な価値で,たまに発散していた昭和のおっさんは,この変化に「耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮ら」すしかないのだろうか?

頭に浮かぶのはピクサーの映画『WALL・E』

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汚れた地球を捨て,宇宙船の中で生活している人類は,一日中,動くイスに座り(歩かない),ひたすら娯楽に興じている.しかし,めちゃめちゃ退屈そう.
ラストシーンで再び地球に降り立った人類は,大地に立ち,身体感覚を取り戻すのだろうか?

知らんけど.