2024/12/23 Mon
ひたすらに
Amazon Prime Videoにて『13人の命』を観た.
以下,簡単な(映画からの)あらすじ.
2018年,タイ北部(チェンラーイ)にある「タムルアン洞窟」に地元のサッカー少年とコーチ,13名が閉じ込められてしまう.
折しも季節外れの大雨によって洞窟は水没.
タイ軍のダイバーチームが捜索するも,13人の生死は不明.
そこでイギリス人他のレスキュー・ダイバーチームが召喚され,13人の無事を確認.
ただし,細い洞窟内をダイビング経験のない者が泳いで帰還することは不可能.
絶望に打ちひしがれる関係者だが,レスキュー・ダイバーには一発逆転の秘策があった.
それは麻酔科医監修の下,少年たちを眠らせて荷物のように運ぶこと.
誰にも経験のない,決死のミッションがスタートする...
と,もったいぶって書いてますが,一応ドキュメンタリなので史実通り,少年とコーチは全員救出されます.
ただし,洞窟のルート確保の際,タイ軍のダイバー一名がアクシデント(エア切れ)により溺死.
さて,この事故,日本でも報道されていたので記憶している人も多いはず.
Kazchariも知ってはいたが,どの様に救助されたのかまでは知らなかった.
麻酔科医,スゲーな.
で,映画の感想だが,脚本,撮影とも実に素晴らしかった.
あくまで実話ベースなので,わざとらしい誇張もなく質実剛健な作り.
140分という長尺を飽きさせない.
主役らしい主役は不在.
しいてあげれば外国人のレスキュー・ダイバー達だが,タイの軍人さんも,洞窟内に雨が流れ込まないようダム作りを行った水道技師,苗の全滅よりも子供らの安全を考え排水を受け入れた農家のみなさんなど,各エキスパート全員が協力的.
何もなかった洞窟入口に次々とテントが建てられ,食事を作るおばちゃんが集結.そう,食事シーンもちゃんと描かれる.
マスコミは...まぁどうでもいいや.
責任を巡っての知事と大臣の確執や,ミャンマーから逃れたシャン族のタイ国籍問題など,政治的な背景も少し描かれるが,深くは掘り下げられない.
発見された際,10日間ほど食料を口にしていない13人はちゃんと痩せている.
幸い水だけは豊富なので生き延びられたのだろう.
何よりもメンタルの強靭さに驚く.
劇中ではコーチによる瞑想が精神の均衡を保つのに役立ったと描写されていた.
タイ人は敬虔な仏教徒.一時的な出家も必須.
こういう時の宗教は強い.
細かい点だとタイ人がちゃんとタイ語を話していることもベネ.
外国人と話す時は,できる人だけが英語で応答.
こうした所にこだわっている映画は名作.
ストーリーは,その救出作戦に完全にフォーカス.
最初の1人が助かった後,残り12人はダイジェスト的に流すのかなぁ...と思ってたらほぼ全員にフィーチャー.そら,この上映時間になるわ.
水中撮影も秀逸.
洞窟の狭さや急流の表現.タンク残量メーターを見ての絶望と焦りも...うん,実感.
脳天気なハリウッド映画のヒーローと違って,過酷な作業にレスキュー・ダイバー達も疲労困憊.
カラダとココロも限界.イラつくし,弱音も吐く.
疲労感がこれでもかというほど伝わってくる.
そして全てが終わった後,みなそれぞれの場所に帰る.
日常の大切さを味わう.
この映画の制作は2022年.
なんとこの規模の作品で,劇場公開はされていないらしい(Amazon独占配信).
そうそう自分でも忘れていたがKazchariはダイバーでもある.
洞窟ダイブ(CAVE DIVING)の経験もある.
一番印象に残るのは,やはりメキシコのユカタン半島のセノーテ.
とんでもなく美しい所で,ダイバーなら一度は潜りたい場所.
何よりも,地上では決して見ることができない光のカーテンの神秘さよ.
浮上後,「This is my best dive!」と叫んだことは覚えている.
当時はデジタルの水中カメラを持っていなかったので,現地で「潜ルンです」(写ルンですの水中撮影用)を購入.
写りは期待していなかったが一応撮影.
だがしかし,空港の荷物検査X線でヤラれた(フィルムが感光して全滅).
記録より記憶に残っているのでヨシッ!
類似した出来事としては,2010年に起きたチリの鉱山事故も有名.
こちらも映画化されている.
以前観たことがある.
主役がアントニオ・バンデラスということで,タイの映画に比べると”いかにもな”脚色がされていたような印象.
確か,この映画ではオミットされていたと思われるが,閉じ込められた鉱夫のリーダーが,”たまたま”ドラッガーの愛読者であり,その理論に基づいて,各人の適性・能力に応じて坑内での役割を決定.
その的確なマネジメントによって,閉鎖空間においてもメンバーがパニックに陥らず,無事救出されたという話があったとかなかったとか...
タイの瞑想,チリのマネジメント.
ホンマ,いつどこで何が身を助けるかわからない.
豊富な知識と経験,これぞ人生のエッセンス.