2021/1/30 Sat
旅と写真.
最後に海外旅行に出かけたのは2019年の12月.
このブログでも書いたラジャ・アンパットのダイビングクルーズである.
2020年は新コロのおかげで鎖国状態.
そんなモヤモヤの中,久々に「旅行人」のサイトを覗くと,蔵前仁一さんの新刊が発売されていた(4月やけど).
帯にはこうある.
1980~90年代、バックパッカーが自由に旅できた時代。それから世界は何を失い、どう変わってしまったのか。蔵前仁一が撮影した失われた世界へ旅する。
この文読んだだけで購入決定.
いつもならAmazon一択なのだが,書籍なら送料無料かつ蔵前さんのサイン入りということで本家サイトで購入した.
早々に届いたので読む.
思ったよりも小さく,薄い本だったが中身は濃い.
この年代は,ちょうどKazchariがバックバッカーだった頃とかぶる.
自分の旅した場所限定ではあるが,何もかもみな懐かしい.
章立ては以下の通り,
世界で最も変わってしまった場所:中国,クンジュラブ峠,チベット
時が変えてしまった場所:タイ,ベトナム,カンボジア,ミャンマー
失いきれないインドとその周辺:インド,パキスタン,ネパール
世界から失われてしまった場所:イラン,シリア,イエメン
旅行者に失われてしまった場所:アルジェリア,サハラ,マリ,ケニア,ウガンダ
蔵前さんの書籍は伝説の名著『ゴーゴー・インド』からほとんど読んでいる.
この本はちょうどインド旅行から帰ってきてから読んだと思う.
それまでのインド本と言えば,藤原新也『印度放浪』や椎名誠『インドでわしも考えた』など,旅行記というよりは比較文化論,ようするにやや硬い印象のモノが多い(後者は異論あり?).
両方とも名著やけどね.
一方の『ゴーゴー・インド』はゆるーいコラムとシンプルなイラストで構成.
経験者にとっては旅の追体験,“バックパッカーあるある”で大いに笑わせてもらった.
続く『ゴーゴー・アジア』『ゴーゴー・アフリカ』も読み,その他の著作も...ほぼ全部読んでいるはず.
さて,『失われた旅を求めて』だが,中国がその経済発展に伴って国内風景が激変しているのは納得だが,逆に「コルカタ(カルカッタ)は変わらない」が興味深い.
インドは時の流れが違う...というか,あの大陸には過去と現代と未来の全てが同居している.
こうやって書くだけでも,あの混沌のサダルストリートが思い出される...ホンマに変わってへんのかな.
写真もフィルムならではの質感がかえって新鮮.
この不鮮明さが,もう戻れない記憶の中の“あの頃感”をかもしだしている.
筆者も述べているが,やはり残っている(旅行中撮った)のは有名な観光地の写真が多く,街の風景を撮ったものは意外に少なかったそうな.
つまり(外国人に見せるため)観光地は変化が少なく,庶民が生活する街中の方がどんどん変わっていく,資料としては後者の方が重要ということやな.
フィルムの場合,一枚一枚が貴重.
気楽に撮れない.
キレイに撮れたかどうかの確認すらできない.
たくさん撮りたければ,フィルムそのものを大量に持参する必要がある.
現地で現像を頼むこともあるが,プリントの質も悪い.
荷物を減らしたい場合は,国際郵便で郵送するしかなかった.
まぁ,2000年以降のデジカメ時代になっても,wifiで自分のクラウドやSNSにアップするなんてのは,かなり後世の話.
そもそもネットカフェを探すのも一苦労やったし,回線状況も悪く,大量のデータを添付して送るなんてことも現実的ではなかった.
日本語環境がなくて,ローマ字でメール打ったこともあったなぁ...
世界中色々な場所に行ったけど,やはり1993年の1月から11月にかけて旅した東南アジアが一番印象に残っている.
タイ,ラオス,カンボジア,ベトナム,マレーシア,シンガポール,インドネシア,7つの国の物語.
何しろ自由だった.
そして旅は長くなればなるほど日常に近づいていく.
熱帯のけだるい空気の中に溶け込みそうやったな.
結局,居心地が良すぎたせいで油断し,睡眠薬強盗に遭って帰国という,恥ずかしい終わり方になってしまったけれど.
あれは「そろそろ目を覚ませ!」というお告げだったのかもしれん(ハード過ぎるやろ).
チャンネル登録しているガジェット系YouTuberが最近こういう動画をあげていた.
かなりクセの強い人物だが,概ね同意できる.
20歳以上年下やと思うけど,長期旅行者って同じような思考になんねんな.
特に「旅に出ると自分の実力がわかる」に関しては,ホントにそう.
自分が進まないと世界は動かない.
良い意味で世界の中心になれた.
旅のできる人生で本当に良かったと思う.
ブログで「カンボジア日記」を上げるようになってから,昔のネガフィルムをスキャンし,デジタル化する作業を少しずつ行っている.
そのままスキャンするだけでも悪くないが,少しレタッチすると,いわゆる記憶色により近いものになる.
Kazchariはレタッチソフトとして,ややマイナーな『SILKYPIX』を昔から使っている.
何しろ水中写真の補正に強い.
唯一無二.