『Giro d’Italia 2020 Stage20』の感想

2020/10/25 Sun

弱ペダのパクリや!

『Giro d’Italia 2020 Stage20』は,これまで誰も見たことがない展開となった.
いや,日本のサイクリストなら既視感が…そう,まるで『弱虫ペダル』
本来エースでない二人が,しかも友人の二人が,ゴール直前でアタック,追いつく,並走,抜くの大激闘!
しかもコンマ差の同タイムで明日の個人TTに挑む!
マジかっ!

昨日のレース短縮も,選手会と主催者の言い争いもこの戦いの前には些末事
全てはこの日のために用意されていたかも.
これマジで台本ないよな.
どちらが勝っても,確実に歴史に残り,後世に語り継がれるStageとなるだろう.そう,あの「2018-Stage19」のように.

少し冷静になろう.
このStage20は本来,以下のコースが設定され,クイーンステージになる予定だった.

変更前

獲得標高5300mの極悪コース.
当初より天候(積雪)が心配されていたが,結局フランス側の自治体が新コロ感染予防のため,レースでの使用を許可せず.
次にプランBとして,2018年にフルームが駆け上った未舗装路のフィネストレ峠通過コースも検討されたが,積雪で断念.

結局,プランCとしてイタリア領のセストリエーレ峠を3回登るルートに落ち着いた.
走行距離190km,獲得標高3500mとなり,斜度も緩くなった.
難易度が大幅に下がったことで何が起こるのか?
チームの牽引力より個人の登攀力が試されるのだろうか?

スタート後,コース前半にスプリントポイントがあるため,デマールが逃げにのる.
サガンは静観.
結果,チクラミーノは確定となった.
サガン,引退とか言い出せへんかな.

一回目のセストリエーレの登攀開始.
しばらく先頭を牽いていたアスタナの選手(誰?)にINEOSのベン・スイフトがさかんに話しかける.
あれは何やったんやろ?「いつまで牽く?」とか訊いてた?

残り60kmでいよいよINEOSが動く.
2018年と同じ,アシスト総動員で集団を崩壊させ,各チームのエースを置き去りにする作戦か?
プッチョ⇒トップガンナ⇒カストロビエホ⇒スイフト,そしてローハン・デニスが満を持してV-Max発動! Ready!
ゲイガンハートを引っ張る引っ張る.
そして太陽戦隊ケルデルマンが遅れ始める.もちろんニバリフルサンも!

INEOSの2名に追随するのは現状2位のヒンドレーのみ.
Stage18(もしくはインターハイ1年目)の再現か!

ここで解説の土井ちゃんが興味深い分析をしていた.
太陽戦隊(SUNWEB)のエースは本来ケルデルマンであり,しかもマリア・ローザ候補.
ヒンドレーはあくまでアシスト.
通常であれば,ヒンドレーはケルデルマンの元に降りて,牽く必要があった.
しかしStage18では,ヒンドレーはそのままINEOSの二人について行った.
チームオーダーはどうなっていたのか?
Stage18のゴール後のインタビューにて,ケルデルマンが,ヒンドレーが先に行ってしまったことについて尋ねられると「I don’t know」と答えていたのが印象的.

そう,ケルデルマンは来年BORAへの移籍が既に決まっている.
ロードレース界には,移籍予定の選手に冷たいという不文律があるそうな(あぁフルーム).
土井ちゃん曰く,今のSUNWEBの監督さんは超ドライ.
ゆえに,今回,その不文律が発動したのかもしれぬと.

Stage20(インターハイ2年目)に戻る.
つーことでケルデルマンは見捨てられ,タイムを失い,マリア・ローザも失う.
そして先頭の3人.
ローハン・デニスのV-Maxはさらに強化され,逃げ集団をガシガシ吸収.
セストリエーレの周回も残り一周.
タイムボーナスは足をためていたヒンドレーがGetするものの(この時点で4秒差),3人のままゴールを目指す.

残り3.5kmになって,ヒンドレーが何度もアタック!
死にそうな顔になっていたゲイガンハートもその度追いつく! このあたり,ホンマに弱ペダ!
互いの身体がくっつきそうな並走.

きっと互いに「ティオーっ!」「ジェーイっ!」と叫びあっていたに違いない.

そして残り150mでゲイガンハートが最期の踏み! そしてゴール!
1位と2位のボーナスタイム差は4秒! そう,ツール史上初の最終ステージ前同タイムとなった!
さすがにKazchariも画面観ながら叫びましたよ! なんじゃ,この面白さは!

こここでまた,土井ちゃんの解説.
ヒンドレーの心理状況について.

Stage18では,ずっとゲイガンハートに付き位置で,ゴール直前でアタック,そしてステージ優勝を果たしたのだが,これは男気として納得いかない,いやはっきり言うと”ズルイ”勝ち方である.
エースが後方にいるからという大義名分もあり,チーム戦略的には正しい行動であったにせよ,本人的にも,一アスリートとしてモヤモヤの残るレースだったようで,ゴール後のインタビューでも全く笑顔がなかったらしい.

しかし,今日は違う.

Stage18同様の戦略でもよかったはず.
ましてや個人TT能力ではゲイガンハートに劣る.
最終的にマリア・ローザを狙うのであれば,どの様に言われようが,勝ちにいくべきだっただろう.

しかし,ヒンドレーはそうしなかった.
正々堂々と勝負した.
正に漢(顔は中性的だが)

同タイムではあるが,TT-Stageのコンマ以下のタイム差によって,マリア・ローザはヒンドレーがGet.
ミラノでの最後のTT,マジックが炸裂するか?
それとも,これまたエースではなかった男,ゲイガンハートの初優勝か?(Stage優勝は1000%トップガンナ

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