NHKスペシャルドラマ『こもりびと』を観た

2020/12/14 Mon

答えは見つからない.

録画していた『こもりびと』(NHK-G)を観た.
完全なノンフィクションというわけではなく,様々な事例の組合せで構成されている.

こもりびと

現在,日本には約100万人の“ひきこもり”がいるらしい(どうやって調査?).
その半数は40歳以上の中高年.
こうした状況から,いわゆる「8050問題」が取りざたされることが増えてきた.

厚労省では“ひきこもり”を,

様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたっておおむね家庭内にとどまり続けている状態を指す現象概念

と定義している.

「8020(80歳で歯を20本)」と混同しないように.
あれ?
両親に事情があって孫と暮らす高齢者問題もあるか?

あらすじは以下の通り.

主な登場人物は3人.

主役は「マツケン」こと松山ケンイチ.
30から40歳までひきこもり中.
大学受験に失敗し,非正規のままファミレスの“名ばかり”店長へ.
激務によってうつ気味に.
...この手の話ってよく聞くけど,やはりファミレスって超ブラックなのだろうか?

母親の介護のため(もしくは口実に)退職.
母の死去後はひきこもりとなる.

40歳を越えると,行政のひきこもり支援事業の対象外になる.
かと言って“高齢者”でもない.
精神科は本人が受診しないと診断も薬の処方もできない.
ようするに八方ふさがり.

マツケンの趣味はマンガとTwitter(っぽいSNS).
ブルーハーツの詩の元に自虐ネタをツイートしている.

えー,Kazcahriはブルーハーツや,同時代の尾崎豊に特に思い入れはない.
流行はちょうど大学生の頃か.
特に悩みはなかったな.
ただ旅がしたかっただけ.

マツケンはその一方で社会保健福祉士,精神保健福祉士などの資格取得や「ひきこもり当事者の会」のサイトも検索.
社会復帰を考えていないわけではない.
夜間にコンビニに行くという習慣はあるが,なぜか無関係の客にまでおびえる.
最近,自分のツイートに同じくブルーハーツネタでリプライしてくれる“パンク先生”がいて,少しうれしい(?).

こうしたヴァーチャルでの匿名交流で,マツケンが社会復帰への足掛かりを見つける...というような展開を想像してたら...全然違いました.

“パンク先生”の正体は父親である武田鉄也だったぁ!
鉄也の設定は元高校教師.
典型的な昭和ガンコ親父で根性論と世間体が何より大事(このバカチンがぁ).
妻をなくした後,ひきこもってしまったマツケンのために家事をこなす.
直接会うと説教ばかりしてしまうので,マツケンからは避けられている.

ある日,胃痛のため受診すると末期の胃がんだったことが判明.
マツケンの将来を真剣に考えるようになる.
ここでなぜ言わない?(言えないんやろうけど)

鉄也はスマホを使っており,(マツケンからは姪)の手引きによってマツケンのTwitterアカウントを発見.
ブルーハーツを拠り所にしていることに気づき,さっそくCDを購入.
ファンを装いリプライ.
たまに追い込むようなことも書いてしまうが,徐々に息子の気持ちを知ろうという意志が芽生える.

鉄也は「ひきこもり家族を持つ家族の会」にも参加.
これまでのマツケンへの言動を反省し,接し方をあらためようとする.

やがて,“パンク先生”が鉄也だということが,マツケンにバレてしまい,自殺ほのめかしツイートに誘いだされ,跨線橋にてマツケンと対峙することになる.
互いの本音を言い合う中,鉄也が吐血.
そのまま救急搬送され,亡くなってしまう.

鉄也の妹や姪が葬式の算段,
喪主である頼みの長男は海外出張中.
そこへ,マツケンが「俺,やるよ」と立候補.

しかし,当日会場には姿を現さず.
あわてる家族.
喪主不在のまま式が終わろうとする時,入り口でびびりまくっていたマツケン登場.
事前に書いておいた哀悼文を読む.
内容は...感動的でもなんでもなく普通.
特に印象に残らず(ここはリアルやねぇ).

こうして具体的な解決法は全く示されないまま,ドラマは終わる.
散髪し喪服を着て人前に立ち,スピーチしたことを一歩前進ととるか,結局そこまでととるかは視聴者の印象にゆだねられる.

完全にドラマとして作られており,「ひきこもりとはなんぞや」といった説明は一切ない.

当事者や家族への批判はしない.
そういう状況が許されているねんなぁ...という認識しかもてない.
それでも生きていけるのが今の日本.

親が生きている(=収入あり)間はなんとかなる.
最大の問題はその死後.
翌週放送された,NHKスペシャル『ある,ひきこもりの死 扉の向こうの家族』は,マツケンのその後を描いているかもしれない.

Kazcahriも一歩間違えば,ひきこもっていたかもしれない.

大卒後入社した会社を26歳で辞めて,アジア放浪の旅に出た.
幸い,様々な状況が上手くかみ合い,今は比較的安定した人生を送れているのだが,タイミングしだいでは「こもりびと」になっていた可能性もかなり高かったかもしれない.
おっと,その前に海外に居ついてしまって「外こもり」してたかも.

日本を降りる若者たち (講談社現代新書)

まぁ,退職理由は“ブラック”でもなんでもなくて,“ただ面白くないから”だったので,ドラマのマツケンとは事情が異なるが.

残り時間が少ない(といっても30年くらいあるかも)Kazchariはさておき,気になるのは,うちの子どもたち.
子育てとは,親がいなくても生きていく術を身に付けさせること以外にない.
中でも,失敗=終了ではなく,何度でも立ち上がればよいと自信を持たせることが重要.

虐待などの極端な場合を除けば,親の影響力なんて微々たるものらしいので,こちらが期待してもしゃあない.

子育ての大誤解〔新版〕上――重要なのは親じゃない (ハヤカワ文庫NF)

とは言え,このひきこもり問題,少子化が進む日本で放置できない.
単純に40~50万人の労働力が眠っているわけで...(ドライな目線

コメントを残す