『Giro d’Italia 2020 Stage10』の感想

2020/10/14 Wed

これぞスーパースター.

『Giro d’Italia 2020 Stage10』は今大会で一番面白かった.

なんとなく重苦しい雰囲気のまま経過してしまった第一週.
優勝候補であるの早々のリタイアが,総合勢の動きを保守的にしてしまった.
「TTで逆転されることがないなら,第三週の山まで勝負は待てばよい」的な思考がプロトンを支配してるような,してないような...

一方,“走りながらの休息日”になることが多い平坦ステージが超高速になるなど,予想外の展開も見られたりした.

そんな休息日明けのStage10では,出走前にとんでもないニュースが伝えられた.
総合優勝候補のクライスヴァイク,もう一人の“登れるスプリンター”ことマイケル・マシューズがともに新コロ感染でDNS
さらにはスタッフに感染者が出たチームもあり,結局,ユンボミッチェルトンがチームごとレースを去ることになった.

ある選手がSNSで曝露していたように,ツールに比べてジロの感染予防対策は不十分で,同じホテルに複数チームが泊まり,さらには朝食のビュッフェも一般客と同席など,感染しない方が不思議な状況らしい.
この適当さかげんが,イタリアらしいと言えばらしいのだが...

それでも,約140名がStage10をスタートした.
見るからに選手が減ったプロトン.
逃げの打ち合いがしばらく続くが,様相が変わったのは,超強力なガンナサガンが抜け出してからである.
数名が二人を追いかけて6人ほどの逃げメンバーが構成された.

徐々にタイム差が広がり,あわてる集団.
中でもポイント賞争いがかかるFDJのデマールはサガンを行かせたくない.
今日のステージでの逆転はないものの,優勝されてしまうと差が一気に縮まってしまう.
ゆえにデマール本人も先頭に立ち,FDJ総出で集団を引きまくる.
休日明けで休みたい総合勢チームの恨みの声が聞こえてきそう.
「これも全てサガンってヤツのせいなんだ...」

逃げ集団もローテーションが上手く回り,集団との差が縮まらない.
やはりサガンへのリスペクトがあるためだろうか?
中間スプリントポイントも誰にも邪魔されず,サガンがなんなくGet.

猛追していたFDJ,追走を諦める.
ほっとする集団.
補給やトイレタイムなど,ほんわかした雰囲気が流れる.
この後,逃げグループとは4分以上のタイム差が生まれる.

レースは後半のギザギザ部分に突入.
後半には20%近い激坂区間があるが,日本にあるような住宅街にポンと現れるタイプ.
そこをサガンが遅れることなくこなしていく.
”登れるスプリンター”の面目躍如である.
このあたり,クラシックレースの走りの様.

「サガンはもうダメだのなんだの」と,ツール以降,このブログでも悲観的な見方をしていたが…すいません反省します.
スターとは何かを忘れていました.
トレインを活用した集団スプリントではなく,個人戦で勝つのが実にサガンらしい.
YouTubeでの歴代レース紹介サイトで,一時期なんでもかんでも“サガン向けコース”と表示するネタが流行ったが,今日は正に大当たり.

やはりアマデウス=「神に愛される人間」はいるのだと思わざるをえない.
アルカンシェルジャージ(エリと袖口だけやけど)を着た男がゴールに近づくと,雨が一時的に止み,空に虹がかかる.
陽の光に照らされながら,ゆっくり落ち着いて両手を広げる.

もうこれ以上のカッコよさはない.

コメントを残す