『LONG WAY DOWN』の感想(その3)「エジプト~スーダン~エチオピア編」

2020/12/4 Fri

旅と旅行の間.

ユアン・マクレガーとチャーリー・ブアマンのアフリカ縦断バイク旅『LONG WAY DOWN』(LWD)をAppleTV+で視聴中.

今回はエジプト-スーダン-エチオピアの感想.
いわゆるアラブ・アフリカからブラック・アフリカへと舞台が移っていく.

以前も書いたが,Kazchariはこの番組をDVDで一度観ている.
にもかかわらず,内容を全く覚えていない.

なんてこった.

いくらDVDが英語字幕のみだったとは言え,これほど濃いドキュメントの内容すら忘れてしまうとは...自分の脳に絶望するなぁ.

実はこの現象は読書にも起きており,ここ数年は読了した本の内容をすぐに忘れてしまう.
その一方で,20代の頃に読んだ書籍,漱石やヘッセの小説に関しては,あらすじは元より,場合によっては印象に残ったフレーズやセリフまで覚えている.

結論.

若い脳は感受性が非常に鋭い.
入力された刺激や新発見を,自分の糧として取り込もうとする機能が最高潮に発揮されているということだろう.
言い換えれば,年齢を重ねる=残り時間が短いゆえに,提示された情報を,将来活用する可能性がないと脳が自己判断しているのかもしれない.

寂しい話だ.

では,探求の精神を諦めるのか?
たとえ,その場限りの喜び,好奇心の充足だけでも良いではないか,つまり「同じ対象であったとしても毎回新鮮な経験ができる」と前向きに捉えるのが良いかもしれない.
実際,老人施設などのレクリエーションを「毎回同じでつまらない」とグチっているのは当人たちではなく,スタッフ側ということはままある.

閑話休題.

さて,エジプト編である.
『水曜どうでしょう』における大泉ポジション,ユアンのスケジュールの都合があるのか,例によって急ぎ足の旅.
悪天候だろうがなんだろうがガシガシ進む.
観光名所だらけのエジプトの滞在すらも短い.
それでもしっかりピラミッドの脇をBMWで走り,内部も見学.
ええなぁ.

2004年8月のエジプトはひたすら暑かった.
あまりの暑さに一緒に旅していたヨメさんがダウン.
カイロのゲストハウスからほとんど動けず.
Kazchariはそんなヨメさんを放置して,国立美術館でツタンカーメン像を見学し,バスを乗り継いでギザへ.
冷房の効いたケンタッキーからスフィンクスとピラミッドを眺め,いよいよ敷地内へ.
そう,有名な話だがピラミッドは街に隣接している,というより後から街が発展したのだが.

OLYMPUS CAMEDIA C5050Z / 2004年8月17日

メキシコに次いで,何しろ暑かった.
確実に40℃越え
2リットルのペットボトルを持ち歩いていたのだが,それを一気飲みできるレベル.
水が残り半分になると不安になるので雑貨屋に買いにいくのだが,エジプトはこうした生活必需品を買う時でさえボッてくるので油断できない(厳密には紙幣を渡してもおつりを返してくれない).
他の国ではありえないので,印象はあまりよくない国の一つとなってしまった.

カイロ観光の前には,紅海沿いのハルガダにてダイビング.
Kazchari的にはピラミッドより紅海の美しさ(固有種だらけ)が印象に残っている.

OLYMPUS CAMEDIA C5050Z / 2004年8月13日

さて,『LWD』の一行は一週間に一便しかないスーダン行のフェリーにバイクとクルマを乗せるためアスワンへ急ぐ.
人は別便らしく,ここで不思議というかテレビ番組ならではの行動.

ユニセフのバイク診療チームのメンバーと会談するため,いったん飛行機にてケニアに入国.
交流後,再びアスワンに戻ってくるという旅程.

うーん.

こういうシーンを見せられると,やはりこれは「旅」ではなく「テレビ番組」なのだとあらためて認識させられるな.
途中でトラブルがあっても「演出でしょ」「何とかなるんでしょ」という思いが頭をよぎってしまう.

さて,スーダンへ.
これまた南北に分断される前の撮影.
サハラ砂漠とまでは言わないが,十分な悪路

舗装路がほとんどなく,チャーリーはともかく,ユアンは転倒しまくって「オフロードは好きじゃない」とグチる.
そら,パワーはあるかもしれんけど,あの巨大なGSやもんなぁ.
無理な走行が祟ったのか,ユアンとクラウディオのBMWのサスペンションが砂漠の真ん中で壊れる.
予備パーツが一つしかないので,ユアンのバイクだけ修理し,クラウディオのバイクはトラックを探してきて搬送することに...って,これも個人旅行では無理な話.

一方,自転車で旅している人も数人登場.
10年以上母国を離れ,現在スーダンを自転車旅というだけで,もう十分“アレ”な人たちなのだが...なんてうらやましい.
その間,歯の治療とかどうしてるんやろ?(そこ!?)

首都のハルツームは大都会.
イラクの副大統領が同じホテルに投宿しているらしく,やや緊張感.
しっかりBMWの修理を行い,エチオピア国境に向かう.

ちなみにスーダンから南スーダンが独立したのは2011年.
現在世界で一番新しい国家だが,その内情は悲惨.
失敗国家の代名詞とされている.

ゼロからわかる南スーダン「国づくり大失敗」の真相

お次はエチオピア

乾いた砂漠は濡れたジャングルに変わる.
ブラック・アフリカの入り口.

ジャマイカに縁のあるKazchariとしては,エチオピア=ジャーことハイレ・セラシエ,帝国のラストエンペラー
日本人にはレゲエ&ドレッドヘア&マリファナというイメージしかないラスタマンだが,本来はラスタファリズムという宗教の教えを具現化しているのがラスタマン(ラスタファリ)なのである.

ラスタファリ運動

ようするに,アフリカから奴隷として連れてこられた我らは,この退廃・堕落したバビロン(ジャマイカ)を脱出して,ジャーが統治するザイオン(天国)たるエチオピアへ帰ろう運動.
ボブ・マーリーの歌詞にもバンバンでてくる.

まぁ,実際のジャマ人は大多数がプロテスタントなので,ラスタファリは少数派.
病院で活動していたKazchariもラスタファリの患者さんを複数人担当した.

Nikon COOLPIX E950 / 2004年3月18日

さて,現代のエチオピアは,ジャマ人たちが焦がれる天国なのだろうか?
あまりそんな印象はないなぁ(特に某国に忖度しまくりのテドロス,てめーのせいだ).

さて,『LWD』の一行は,あまりのタイトスケジュールのせいか,スタッフ間の諍いが目立ってきたようだ.
ハンディカムでユアンとチャーリーが愚痴をこぼしまくっているのだが,こういう描写って誰得?

結局,こうしたギクシャク関係も快適な(?)都会のアジアアベバでの休養を経てクールダウン.

エチオピアのシャシャマネにあるラスタ村を訪ね,長老にラスタの教えを聴くユアン.
目が少々イッテル長老の話に「こいつ,何を言ってんのか,さっぱりわかんねー」という表情がナイス.
その直後,長老が倒れて『LWD』の随行ドクターが治療するという展開へ.
ホンマ,ラスタの人たちって健康なのか不健康なのかよくわからん.

現地に入植し,花卉ビジネスを展開しているイギリス人(?)のプラントも見学.
2007年当時,既にSNSが浸透しており,このイギリス人たちも,ネットで一行のルートを予測し,幹線道路に“歓迎”の横断幕を張って,二人が気づくことに期待していた.
その目論見は大当たり(仕込みでなければ...).

将来,『LONG WAY in ASIA』(仮)が制作される際には,Kazchari実行してみるかな?
稚内から樺太に渡るルート設定だと,旭川通過もありうる?

ジャマイカ&レゲエ A to Z 2010年増補改訂版

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