2023/8/9 Wed
彼女が愛したのは...
サスペンス映画の視聴が続く.
本日のZwiftの友は『ザリガニの鳴くところ』(2022)である.
原題は「Where the Crawdads Sing」なので,そのまんま? いや「歌う」?
こんな意味不明の邦題,よく日本の配給会社が許したな.
オリジナル尊重は最近の傾向?
原作小説があるようだ.
で,「おすすめ」にアップされていた&変なタイトルに惹かれて再生.
なぜか吹替版しかない(Kazchariは字幕派).
もちろん予備知識ゼロで鑑賞.
以下,あらすじとネタバレ感想である.
1960年代,アメリカ南部(ルイジアナあたり?)の湿地帯.
まずはその豊かな自然がたっぷりと映される.
肝心のザリガニはいたっけ?
20mはある見晴台のすぐそばで,若い男性(チェイス)の死体が発見される.
警察が捜査.
死体周辺に足跡もなく,手すりにも指紋がない(誰かが証拠隠滅をはかった?).
事件性を感じた警察は,森の中で一人暮らしをしている通称「湿地の娘(カイヤ)」に疑いの目を向ける.
ちょっとしたボートチェイスの末,カイヤは逮捕される.
事件のことについてほとんど話さないカイヤに対し,陪審員裁判が行われる.
検察の求刑は一級殺人の罪で死刑.
ここで場面は10年ほど遡る.
湿地帯の森の中に住む子沢山の家族.
まず,母親と子どもたちの微笑ましい交流が描かれるが,そこに登場するのがDVオヤジ.
戦争帰りのPTSDなのかわからんが,些細なことで妻や子供を怒鳴り散らし,さらには暴力を振るう.
やがて,我慢の限界に達した母親は失踪.
続いて姉や兄も次々と家を出て,幼いカイヤと父親だけが取り残される.
近くに黒人夫婦が営む雑貨屋がある.
学校にすら行かせてもらえないカイヤを色々と気にかけてくれる.
この夫婦,当初はオヤジだけでなくカイヤへの態度もやたら慇懃.
原語ではどうなっているのかわからんけど,アメリカ南部の差別性,保守性を表現する秀逸な場面だ(時代が進むと少しずつ変化してくる).
やがて父親もどこかへ去る(この後は出てこない).
小学生(?)のカイヤだけが一人で暮らすことになる.
湿地で採れるムール貝を雑貨屋に売ることで,なんとか生計を立てている.
数年後,美しく成長したカイヤは,森の中で鳥の羽根が切り株に立てられているのを見つける.時には各種生活用品も添えられていた.
それは幼い頃に何度か見かけた青年,テイトの仕業だった.
カイヤに会うため,森に通い詰めるテイト.
読み書きのできないカイヤに字を教える.
なんだかんだで仲良くなっていく二人.
カイヤがその気になっても,なぜか一線は越えないテイト(怖かった?).
テイトはカイヤの観察眼や画才に驚嘆し,出版を薦める.
しかあし,都市部の大学に合格したテイトはしばし町(湿地帯)を離れることに.
「数カ月後の独立記念日には戻ってくる」と言い残す.
はい.当然テイトは数ヶ月どころか数年間,現れません.
ベタな「木綿のハンカチーフ」ですな(あれ,ついこないだも書いたような).
数年が過ぎ,以前に比べると湿地帯にも多くの人が訪れるようになった(ついでに開発業者).
その中にいかにもなチャラい青年,チェイスがいた.
なんだかんだでチェイスの誘いに乗るカイヤ.
見た目と違い,チェイスも割りと礼儀正しくて,カイヤがこばめば手を出さない律儀な面もある.
かろうじてキリスト教保守の価値観が残っているのか?
もしくはテイト同様,「こいつに手を出すとヤバイかも」という躊躇があったのか.
ただ,チェイスの性格についてはところどころ描写されており,カイヤの絵の扱い方や◯◯◯のシーンに,彼の身勝手さや粗暴さが表現されている.
うん,わかりやすい映画だ.
大学を卒業したのかまだ研究生なのかわからんが,テイトが湿地帯に帰ってきた.
チェイスと遭遇.彼の正体に気づきカイヤのことで諍いが起こる(おっと,ミスリード).
テイトは未練がましくカイヤに近づき,チェイスは悪いヤツだと告げるが,それはさすがにかっこ悪いぞ(♪けんかをやめて~).
滞納していた固定資産税を支払うために,図鑑の出版を企むカイヤ.
原稿を送ったところ,思った以上に評価されて無事出版にこぎつける.
名前が世に出たため,離れ離れだった兄(軍人)とも再会.
おおっ,徐々に話が良い方へ.
...と思いきや,カイヤ,なんだかんだでチェイスの正体に気づく.
別れ話を持ち出しても,しつこく迫るチェイスを拒絶するが,逆に殴られてしまう.
そう,チェイスはかつてのDVオヤジと同じタイプだったのだ(あるある).
なんとかしてチェイスから逃れ,静かに暮らしたい吉良吉影...じゃなかったカイヤ.しかし,この湿地からは何が何でも離れたくない.
で,場面は法廷に戻る.
結局,検察の主張が無理筋だったのと,弁護士の有能さにより陪審員は無罪の評決.
ここからは怒涛の展開.
テイトとも和解して結婚(裁判の時,お腹を触ってたけど...あれは?)
湿地の家にて静かに年を重ねていく二人.なんか『ターンA』の最終回っぽいな.
やがて老婆となったカイヤ.
森の奥から現れた若かりし母の幻を見ながら,水に浮かぶボート上で息を引き取る.
遺品整理をする老テイト.
とある画帳を開くと,そこにはチェイスの似顔絵と,殺害現場から持ち去られたとされる貝の首飾りがはさんであった.
そして全てを察するテイトだった...
終わり.
えっ,終わり!?
謎解きの答えとしては,法廷にて弁護士が「こんなことは不可能でしょう!」と説明していたことが実行されたということやろな.
他には,出版社の社長に話した「自然には善悪の概念はない」「時には弱者が強者にかつこともある」が,彼女の行動理念なのだろう(決意表明か).
サスペンス物としてはイマイチ感が拭えないが,とりあえず回想で殺人場面を再現しない点は良かったな.完全に蛇足.
そもそも”サスペンス”として作られていないように思える.
むしろ人生哲学.
結局,カイヤが愛情を向けるのはヒトでなく,自然=湿地そのものやったんやろなぁと解釈.
つまり(ナードっぽい)テイトや(ジョックスっぽい)チェイスという正反対のタイプに惚れるあたり,彼女にとって人間も純粋に観察対象.
これまで画帳に描いてきた湿地の生き物と同じレベルかもしれん.
残されたチェイスの似顔絵.
彼との関係を考えると,普通そんなん残しますか?
あまりにも冷静過ぎる.
そこに感情はないのかもしれない.
「湿地帯で静かに暮らす」という最大の幸福を邪魔する者は,何がなんでも排除する.という決意の下に行われた犯罪なのだろう.
テイトも無理に湿地からカイヤを引き離そうとすればヤバかったかも.
そやけど...演出のせいか,どうしてもカイヤに同情っつーか,感情移入できない.
少女時代から服も顔も小綺麗やし,何よりずっと健康そう.
コミュ症・人嫌いと言っても生活に支障をきたすレベルではないし.
「町の住民から虐げられている」と訴えるが,そんな描写もほぼない.
せいぜい聞こえよがしに陰口をたたかれる程度.
このあたりの不幸描写が弱いので,カイヤにイマイチ共感できなかったのかも.
レビュー評価は高めなので,まっ,好みの問題でしょう.
そうそう,これも以前アップした『フロッグ』のように,キャラをジョジョ絵にしても馴染む気がする.特に7部あたりの絵柄がぴったり!
Amazon Prime Videoで『フロッグ』を観た~脳内変換すると楽しめるゾ
つーことで,サムネの主演女優さんの表情にビビッ!っと来た人にはオススメです.