『セデック・バレ』を観た~台湾人って誰のこと?

2021/11/29 Mon

これも全てヨシムラってヤツのせいなんだ...

家事をしながらのYouTube視聴がすっかり習慣づいてしまった.
観れば観るほどGoogle先生がこちらの好みを分析し,次々とオススメ関連動画を表示してくる.
これははまるわ.アカン.
ホンマ,こんな超便利機器&インフラが学生時代になくて助かった.
全く勉強にならん.
実際,うちの職場の学生もネットの主な使いみちは文献検索...ではなくて,YouTube視聴が圧倒的.

それはさておき,先日,歴史解説つながりで「霧社事件」に関する動画を視聴した.

おなじみの霊夢と魔理沙ですな.
「へぇ,こんな凄惨な事件があったんや.知らんかった」と,さらにWikipediaで詳細を検索.

霧社事件

衝撃的な事件なのだが,その知名度があまりにも低い(オマエモナー).
なんらかの政治的意図が働いているのだろうか.

しかし,2011年に台湾人監督で映画化されているとのこと.
日本公開は2013年.全く知らんかった.
これは観たいと思い,ダメ元で「Amazon Prime Video」で確認.
なんと! サブスク配信されていた.

その名は『セデック・バレ』(”真の人”という意味)

よくよく確認すると,この映画は第一部「太陽旗」第二部「虹の橋」の二部構成になっており,それぞれ144分と132分,つまり計4時間36分の超大作であった.
ちなみに長時間で有名な,あの『アラビアのロレンス』ですら3時間42分だッ!(超名作だがな)

セデック・バレ 第一部:太陽旗(字幕版)

以下,あらすじ.

台湾中部の山岳地帯に住む誇り高き狩猟民族・セデック族.その一集落を統べる頭目の子モーナ・ルダオは村の内外に勇名を轟かせていた.1895年、日清戦争で清が敗れると,彼の暮らす山奥にも日本の統治が広がり,平穏な生活は奪われていく.それから35年,頭目となったモーナは依然として…

全然あらすじになっていないが,まぁ良い.
例によって,Zwiftしながら,4回ぐらいに分けて視聴.
さすがに分割視聴すると,それほど長さは感じなかった.
劇場で観た人は大変やったかもしれん.
いやいや,こんな凄まじい映画があったとは...

例によって評論・考察サイトの類は読まずに以下,感想.

面白いです.
後半の長過ぎる(クド過ぎる)点を除けば.

かなり史実に忠実に作られている(と思う).
お笑いシーンは一切ナシ.

なぜか動物(シカなど)がCGで表現されており動きがぎこちない.愛護団体対策だろうか.
その代わりと言ってはなんだが,人の首はポンポン飛ぶ,リアルな流血シーン満載.
そらそうだ,彼ら先住民族は,日本統治前はいわゆる首狩り族だった.

一部,アイヌ文化との類似性が気になる.
既婚女性の口の周りの入れ墨とか.
狩猟民族の生活は似てくるのだろうか.
それとも海洋交流があったとか.
こういうの調べたら深みにはまるんやろな.

太平洋戦争モノの映画における日本軍の描き方は変なモノが多い.

『パールハーバー』は言うまでもなく,リアル路線と言われた『シン・レッド・ライン』でも首をかしげるセリフやシーンがある.
何やら得体のしれないモンスターとしての描写は,ベトナム戦争映画のベトコンと通ずるものがあるな.
一番よくできていたのは『硫黄島からの手紙』か.
主人公のジャニタレが妙に現代人思考なのは,おそらく観客の感情移入を促すためと好意的に解釈.

一方,観たことはないが,隣国のいわゆる”反日”映画って,内容がめちゃくちゃ.史実捻じ曲げまくりというか,つっこみどころ満載と聞く.

この『セデック・バレ』はどちらでもない.
確かに日本兵や警官は悪役である.
高圧的,差別的,嗜虐的という描写もちゃんとある.
しかし,「ああ,たぶんそうやったんやろな」という説得力,リアリティがある.
ちゃんと,軍人の中にも理解のある善人もいるし.
日本人の俳優(安藤政信,他)も使っているので,日本人の言動や日本語表現も含め,整合性のある映画になっている.

この映画の最大の特徴は「抗日映画ではあるけど,反日映画ではない」ということ.

植民統治のメリット(文明の享受),デメリット(文化の剥奪)はともかく,暴動のきっかけは互いの無理解にあった.
ヨシムラがもう少し,社(村)の人と馴染んでたらなぁ...

確かに第二部の日本兵は,作劇的にしかたないとは言え,いくらなんでも弱すぎ.ハリウッド的な絵面や演出は悪くないけど.
毒ガス使用など,真偽が定かでないシーンに対して,Right Wingの人が激怒するかもしれないが,極めて公平な視点で描かれていると思う.

日本人には「霧社事件」は全然知られていないが,台湾では誰もが知る有名な事件らしい.
そして,台湾と言えば世界有数の親日国である.
過去にこのような凄惨な歴史があったにも関わらず,今ではそれを乗り越え,(某隣国と異なり)官民ともに良好な関係を築けている...と考えると素晴らしい話に思えるが,待てよ...台湾人って一体誰のこと?

映画に出てくるセデック族他の先住民は,顔つきからして海洋アジア,マレー系の顔立ちをしている.ようするに”濃い”.
しかし,一般に台湾人として想像するのは大陸系の漢民族フェイス.

そこで,現代の台湾の人口比率について検索してみた.

【実は多民族国家】台湾人の内訳とインバウンド集客時における注意点。

先住民族の割合は,今ではわずか2%に過ぎないらしい.
ということは,ほとんどの台湾人にとって『セデック・バレ』に描かれた先住民族への差別や抑圧は他人事なのだろうか?

まとめると,第一部は傑作.
むしろ,運動会襲撃後,ぼんやりと空を見上げるモーナ・ルダオの顔のアップで終わっても良かったほど.
第二部は少々蛇足感(2時間越えやけど)あり.ただし様々な方面に決着をつけたのは確か.終わり方がひっぱるひっぱる.

いずれにせよ『セデック・バレ』,おススメです.

ちなみにKazchari家は,2014年に家族4人で台湾旅行したことがある.
当時は旭川-台北の定期便が飛んでいたのだ.
台湾の人たちは子供に,やたらやさしかったなぁ.ビックリした.

OLYMPUS OM-D E-M5 / 2014年1月12日撮影 日本語だらけ...
OLYMPUS OM-D E-M5 / 2014年1月13日撮影

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