『Giro d’Italia 2020 Stage20』の感想

2020/10/25 Sun

弱ペダのパクリや!

『Giro d’Italia 2020 Stage20』は,これまで誰も見たことがない展開となった.
いや,日本のサイクリストなら既視感が…そう,まるで『弱虫ペダル』
本来エースでない二人が,しかも友人の二人が,ゴール直前でアタック,追いつく,並走,抜くの大激闘!
しかもコンマ差の同タイムで明日の個人TTに挑む!
マジかっ!

昨日のレース短縮も,選手会と主催者の言い争いもこの戦いの前には些末事
全てはこの日のために用意されていたかも.
これマジで台本ないよな.
どちらが勝っても,確実に歴史に残り,後世に語り継がれるStageとなるだろう.そう,あの「2018-Stage19」のように.

少し冷静になろう.
このStage20は本来,以下のコースが設定され,クイーンステージになる予定だった.

変更前

獲得標高5300mの極悪コース.
当初より天候(積雪)が心配されていたが,結局フランス側の自治体が新コロ感染予防のため,レースでの使用を許可せず.
次にプランBとして,2018年にフルームが駆け上った未舗装路のフィネストレ峠通過コースも検討されたが,積雪で断念.

結局,プランCとしてイタリア領のセストリエーレ峠を3回登るルートに落ち着いた.
走行距離190km,獲得標高3500mとなり,斜度も緩くなった.
難易度が大幅に下がったことで何が起こるのか?
チームの牽引力より個人の登攀力が試されるのだろうか?

スタート後,コース前半にスプリントポイントがあるため,デマールが逃げにのる.
サガンは静観.
結果,チクラミーノは確定となった.
サガン,引退とか言い出せへんかな.

一回目のセストリエーレの登攀開始.
しばらく先頭を牽いていたアスタナの選手(誰?)にINEOSのベン・スイフトがさかんに話しかける.
あれは何やったんやろ?「いつまで牽く?」とか訊いてた?

残り60kmでいよいよINEOSが動く.
2018年と同じ,アシスト総動員で集団を崩壊させ,各チームのエースを置き去りにする作戦か?
プッチョ⇒トップガンナ⇒カストロビエホ⇒スイフト,そしてローハン・デニスが満を持してV-Max発動! Ready!
ゲイガンハートを引っ張る引っ張る.
そして太陽戦隊ケルデルマンが遅れ始める.もちろんニバリフルサンも!

INEOSの2名に追随するのは現状2位のヒンドレーのみ.
Stage18(もしくはインターハイ1年目)の再現か!

ここで解説の土井ちゃんが興味深い分析をしていた.
太陽戦隊(SUNWEB)のエースは本来ケルデルマンであり,しかもマリア・ローザ候補.
ヒンドレーはあくまでアシスト.
通常であれば,ヒンドレーはケルデルマンの元に降りて,牽く必要があった.
しかしStage18では,ヒンドレーはそのままINEOSの二人について行った.
チームオーダーはどうなっていたのか?
Stage18のゴール後のインタビューにて,ケルデルマンが,ヒンドレーが先に行ってしまったことについて尋ねられると「I don’t know」と答えていたのが印象的.

そう,ケルデルマンは来年BORAへの移籍が既に決まっている.
ロードレース界には,移籍予定の選手に冷たいという不文律があるそうな(あぁフルーム).
土井ちゃん曰く,今のSUNWEBの監督さんは超ドライ.
ゆえに,今回,その不文律が発動したのかもしれぬと.

Stage20(インターハイ2年目)に戻る.
つーことでケルデルマンは見捨てられ,タイムを失い,マリア・ローザも失う.
そして先頭の3人.
ローハン・デニスのV-Maxはさらに強化され,逃げ集団をガシガシ吸収.
セストリエーレの周回も残り一周.
タイムボーナスは足をためていたヒンドレーがGetするものの(この時点で4秒差),3人のままゴールを目指す.

残り3.5kmになって,ヒンドレーが何度もアタック!
死にそうな顔になっていたゲイガンハートもその度追いつく! このあたり,ホンマに弱ペダ!
互いの身体がくっつきそうな並走.

きっと互いに「ティオーっ!」「ジェーイっ!」と叫びあっていたに違いない.

そして残り150mでゲイガンハートが最期の踏み! そしてゴール!
1位と2位のボーナスタイム差は4秒! そう,ツール史上初の最終ステージ前同タイムとなった!
さすがにKazchariも画面観ながら叫びましたよ! なんじゃ,この面白さは!

こここでまた,土井ちゃんの解説.
ヒンドレーの心理状況について.

Stage18では,ずっとゲイガンハートに付き位置で,ゴール直前でアタック,そしてステージ優勝を果たしたのだが,これは男気として納得いかない,いやはっきり言うと”ズルイ”勝ち方である.
エースが後方にいるからという大義名分もあり,チーム戦略的には正しい行動であったにせよ,本人的にも,一アスリートとしてモヤモヤの残るレースだったようで,ゴール後のインタビューでも全く笑顔がなかったらしい.

しかし,今日は違う.

Stage18同様の戦略でもよかったはず.
ましてや個人TT能力ではゲイガンハートに劣る.
最終的にマリア・ローザを狙うのであれば,どの様に言われようが,勝ちにいくべきだっただろう.

しかし,ヒンドレーはそうしなかった.
正々堂々と勝負した.
正に漢(顔は中性的だが)

同タイムではあるが,TT-Stageのコンマ以下のタイム差によって,マリア・ローザはヒンドレーがGet.
ミラノでの最後のTT,マジックが炸裂するか?
それとも,これまたエースではなかった男,ゲイガンハートの初優勝か?(Stage優勝は1000%トップガンナ

『Giro d’Italia 2020 Stage19』の感想

2020/10/24 Sat

残り50kmを残してレース終了.

『Giro d’Italia 2020 Stage19』は今大会最後の平坦ステージ.
チクラミーノ争いの最終決戦と思われたが…肝心の二人がやりあう気を失っていたので,そうはならなかった.

昨夜は家事をしながらいつも通り19:25にGCNレースパスを起動.
あれ? 映らない?
開始時刻を確認しても間違ってない.
他のレースはちゃんと配信されている.
GCNのTwitterで確認すると「天候が悪いのと選手の健康問題を考えてコースが短縮されます.それにともなって配信時間が20:30に変更」されるとの投稿.
まぁ,大方の選手にとって,それほど重要なステージでもないし,選手側から申し入れでもあったかと想像.

20:30になってZwiftしながら再接続.
これまでのステージのプレビュー画像が流れていた.
MCのぞみさんと別府さん登場.
曰く「悪天候で橋が落ちてしまいコース変更.もともと最長ステージ(253km)だったのがさらに5km伸びて258kmになると主催者から報告があったことにより,選手がブチ切れ(?).交渉の結果,スタート地点を移動して約半分の距離124kmに変更になった(らしい)」とのこと.

距離だけでなく雨と前日の激闘.
選手の主張(休ませろ!)はもっともである.
このあたりはさすが屋外全天候型スポーツやな.
明日の山岳に備えてのアクティブ・レスト日になったようだ.

レース終了後の映像によると,予定していたスタート地点から8km程度は走ったもよう.
そこで一旦中断し,選手はバスに乗り込み120kmほど移動しリスタートというのが事の次第.

さて,この状況をサガン擁するBORAはどう生かすのか?
逃げ14人をBORAが追う展開となった.
しばらくは2分内のタイム差を保つが,FDJはもちろんのこと他のチームがまるで協力しない(協力する理由もない)ので,ゴールまで残り50kmの地点でBORAが牽きを終了.
メイン集団の今日のレースはここで終わった.
後はトイレやら食事やらおしゃべりやらのリラックスムード
これでチクラミーノ争いはほぼ決した.

そして,Stage20がやってくる.
バイオリズムを整えて(ようするに昼寝して),最後まで結果を見届けたい.

最終的に11分以上のタイム差ができた先頭集団.
残り20km手前でCCCのチェルニーが独走態勢へ.これまたおっさん顔って37歳か.
それを追う5人は例によって牽制やらなんやらで結局,チェルニーに逃げ切られてしまう.

それにしてもゴールの観客,超密
そうか,ここって確かミラノの近くやったよな.

ミラノというか,ヨーロッパの都市部の話題としてロータリーの多さが上がっていた.
我が地元,旭川にもロータリーが存在する.

旭川常盤ロータリー

この記事にもあるが,移住組のKazchariもここを通るのは苦手だ.

地元ルールが謎.

グローバルなルールでは,回っているクルマが優先なのだが,なぜか旭川のロータリーは進入したいクルマが優先になるらしい.
ぐるぐる回りたければ,より円の中心側を走る必要がある(この時点でルールがおかしい).
確かにスピードを緩めたもしくは加速した時,何度かクラクションを鳴らされた経験がある.
絶対スピードが低めなので,あまり事故の話は聞いたことはないけど.

免許の更新時にも「ここは正式なロータリーではないので,道交法とは少し違います」みたいなことを言われた記憶がある.

どないせぇっちゅうねん.

ということで,できるだけ避けるようにしています(チャリはNo problem).

OLYMPUS TG-5

『Giro d’Italia 2020 Stage18』の感想

2020/10/23 Fri

世紀の大混戦へ.

『Giro d’Italia 2020 Stage18』は「通れるかどうかわからん」と直前までいわれ続けたステルビオ峠越えの山岳決戦の日
幸い天候に恵まれ予定通りのルートでスタート.
さらに,かねてからの噂通り,コース変更によってStage20の難度が(一応)下がったので,このStage18が「チマコッピ」「クイーンステージ」の両方を兼ねることになった.

とんでもない絶景のステルビオ.
旅行パンフなんかでよく使われる上から下からのつづら折れ.
この北側から登るのは久しぶりらしく,“頭のおかしい”ヒルクライム映像がたっぷりと楽しめる.
標高2758m,気温は3℃,もちろん雪の壁である.
スタート地点(といっても既に標高800mらしいが)との風景の違いが面白い.
イタリア北部って落葉樹が少ないのか,樹木は森林限界までほとんど緑のままやな.
日本のような美しい紅葉は見られない.

前日のStage17が「面白くない」だの「やる気あんのか」だのと,そのレース展開を阪神ファン並みにディスっていたのだが,このStage18は正真正銘めちゃくちゃ面白かった!

優勝はサンウェブのヒンドレー
若手の山岳アシストがINEOSの攻撃に対し最後まで残った.

戦略的に正しい方法(ようするに牽かない)にて,ゲイガンハートをゴール前スプリントで下す.
エース(ケルデルマン)を救うのか,自分がゴールを採るのかの葛藤.
チーム監督の指示がどういうモノだったかはわからないが,このあたりの心理戦がロードレースの醍醐味やね.
激坂での防寒ジャケットの着方は要練習,と両手離しすらできないKazchariが申しております.

そして,マリア・ローザのアルメイダはステルビオでついに失速.
Stgae15でもそうだったが,集団から遅れてもズルズルと後退せず,必死の形相でなんとか食らいつく走りは素直に感動する.
今後絶対に“もっと”強くなる選手とみた.
マリア・ローザを失ったとはいえ,アルメイダの最大の武器はそのTT能力.
残念ながら距離は短い(15km)ものの,最終日に何かが起こる?(優勝はトップガンナやろうけど

そのアルメイダからマリア・ローザを奪ったのが太陽戦隊ケルデルマン
後方から追ってきたビルバオやフルサンに抜かれた後,全く反応できなかったところから実況解説陣も思わず絶叫!
こりゃ大幅にタイム失うと思いきや,ペース走法に切り替え,ゴール時には総合一位のポジションをGetしていた.
「TTには自信がある」と言っているので,Stage20の山岳決戦後のタイムが楽しみ.
そう,敵はINEOS!

さて,そのINEOSは意外!ゲイガンハートの大躍進!
G撤退後,まさかこの最終局面で総合ベスト3に食い込んでいると誰が予想できただろうか?
何よりもそれを支えるアシスト陣の活躍が目覚ましい.
このStage18ではローハン・デニスがV-Max発動
TTスペシャリストとは最強のルーラーでもある.

そしてINEOSにはもう一人,世界最速のTTマシンもいる.
おまけに二人とも山で簡単にヘタレないことは証明済.
Stage20のちょっと緩めの山岳コースでは,往年のINEOS軍団総攻撃が見られるはず.
ところで,ゲイガンハートってTTどうやったっけ?
ちょっと調べてみたら2018のドーフィネ第三ステージのTTで優勝してるやん...ってチームTTかい!

終わってみれば1位から3位までなんと15秒差
残るステージは平坦-山岳-TTとバラエティに富んでいる.

Stage19はド平坦なので,「サガンvsデマール最後の闘い」が見どころになると思うが,もしかして総合勢が何かを仕掛けたら,それはそれで観ている方は超楽しい.

『Giro d’Italia 2020 Stage17』の感想

2020/10/22 Thu

デヘント,怒りのドロミテ.

『Giro d’Italia 2020 Stage17』は最終山岳決戦初日.
そのコースプロフィールも,どことな~く,あの伝説の大逆転勝利『2018-Stgae19』に少し似ているような似ていないような.

Giro d’Italia 2018 Stage19

おりしもクイーンステージとされる土曜日のStgae20が,降雪による道路封鎖およびフランス側自治体の走行不許可によって,より簡易なコースに変更される可能性が高くなった.
つまり,総合勢が勝負をかけるなら今日と明日しかない状況.
ゆえに,ここで絶対に何かが起こる!…と思われた.

しかし...
もうね,戦略だとか三週目で疲れているだとか,あちこちで都市のロックダウンが続いており,レースという娯楽へのモチベーションが下がっているとか,選手個々人は真剣に走っているとかなんとか,様々な理由があることを考慮しても…全然面白くない展開だった.

いずれの峠でも誰も動かず.
ゴール前残りわずかの距離で,少しだけアタック.
タイム差がつきようもなく,みんなで同タイムゴール

実況や解説もこの総合勢の動きを盛り上げることは難しかったのか,話題の中心はもっぱら“逃げ”に乗り,かつ先頭を引き続けるデヘント先生に集中.
今の心理状況分析やらこれまでの語録などのデヘント祭りだった.

レース自体は,その逃げグループに乗っていたNTTのオコナーが優勝.
ちょうど前日のレースで最後にまくられて2位になった選手.
リベンジおめでとうございます.
ずっと前を牽いていたデヘント先生のおかげですよね...
とは言え,他の選手もイネオスのローハン・デニスを除き,ほとんど牽いたりアタックする場面もなかったので,オコナーだけの話ではない気もするが.

牽いても牽かなくてもデヘント先生に怒られる,そんな雰囲気の先頭集団でした(ただの妄想です).
正直,ここはデヘント先生が勝っていれば盛り上がっていたのは間違いない.

雪景色のドロミテという背景は美しいものの,SHOW,ドラマとしてはイマイチなStageだった.
今夜のStage18に期待するでぇ.頼むでホンマ.

デヘント先生の怒りは(勝手な事ばかり言う)観戦者への怒りかも.
※ 先生自身は怒りのコメントは出していません.

『Giro d’Italia 2020 Stage16』の感想

2020/10/21 Wed

牽かない理由.追わない理由.

『Giro d’Italia 2020 Stage16』は休日明けの調整日的位置づけ?
続く山岳に備えて,総合勢に動きのあまりない日に...思われた.
周回コースの残り一周までは.

いやぁ,アルメイダすごいわ.根性あるわ.こういうのって好感度上がるよな.
解説のオマタさん曰く「攻撃は最大の防御」という言葉がドンピシャのゴール前激坂スプリントでした.
結果,2位の太陽戦隊ケルデルマン2秒差をつける好走.

ステージ優勝は逃げ28名から抜け出したバーレーンのトラトニック
失礼だがおっさん顔におっさん体型.
とても速そうには見えない.
残り40kmで独走態勢になるものの,周回残り一周の三級山岳でNTTのオコナーに追いつかれた.
そのオコナーの登攀能力に「こりゃオコナーの勝ちやな」と誰もが思ったはず.
ところが! ラスト1kmから始まる勾配20%を含む激坂区間で,トラトニックが逆にオコナーを抜き返し,見事に勝利!
なかなか珍しい展開だった.
トラトニックもポキらないメンタルの選手.
おっ,何気に最近売り出し中のスロベニア人やん.

その他の話題.

オフシーズンが近づき,選手の移籍使用機材変更の話がたくさん出てきている.
後者の話が面白い.

ミッチェルトン:スコット ⇒ ビアンキ
サンウェブ:サーベロ ⇒ スコット
ユンボ:ビアンキ ⇒ サーベロ

これに伴い,「ミッチェルトンはチーム名をどうする問題」やら「ユンボはバイクのカラーを何色にする問題」が発生.
どうなるのか楽しみだ.

でも,使用機材の変更ってどういうメリットがあるんやろ?
特に今シーズン大躍進のサンウェブは,サーベロとの相性が非常に良かったと思うのだが.
イネオス(スカイ)とくれば,「ピナレロ!」というように,すぐに相方がイメージできる方が,広告として成功では?(ただし強いチームに限る)

この日はブエルタもスタート!
さすがに視聴契約は結んでいない.
結果は各種サイトで追いかけていくつもりやけど.
いきなりログリッチェ優勝って…これ全ステージ“赤”着て終えるつもり?

フルームは11分遅れ!(11秒ではない)
ロードレースは残酷だ.
あれだけ強かった選手が…

『Giro d’Italia 2020 Stage15』の感想

2020/10/19 Mon

これはひょっとして...

『Giro d’Italia 2020 Stage15』はようやくジロらしい185kmの山岳ステージ
山4つの頂上ゴール.
割と地味なレースが続いたが,今度こそ総合が動き,エキサイティングな展開になることが予測された.

優勝はINEOSのタオ・ゲオゲガンハートもといティオ・ゲオガンハート.どっち?
外国人の名前は日本人にとって発音や表記が難しい.
サイクルフォトグラファー辻啓さんの提案で,関係者間でのカナ表記統一化が進められているとのこと.
GCNの放送ではどちらの発音でも呼ばれているけど.
特に「人間の癖はなかなか抜けないなぁ」の,「エレガント・クイックステップ」.

さて,ゲオガンハート,頭部の形が独特(上に長い?)なせいか,ヘルメットをかぶっていてもオデコ丸見え.
常時「ヘルメットの良くないかぶり方」みたいになっている.
体格はフルームっぽい細身.ただし大腿はあそこまで太くない.

ゲオガンハートは今日の優勝で総合大ステップアップ.
前日まで総合13位だったのが,Stgae15を終えて,3位とは1秒差の第4位につけている.
ゴール前に変なガッツポーズをして足を止めていなければ,3位になっていたのでは?
いずれにせよ,三週目の凶悪山岳群でもこの調子を維持できれば,総合優勝もなくはない.
なんだかんだでINEOS恐るべし.

昨日のTTでもいいタイムを出したのに,“トップガンナ”のせいでイマイチ目立たなかったローハン・デニスアルメイダ
当ブログでも,少々揶揄してしまいすいませんでした.今日の走りは素晴らしかったです.

まず,逃げにのり,デヘント先生からもリードを奪ったものの.最後の登りでは残念ながら集団に追いつかれたローハン・デニス.
ゲオガンハートのための,まさかの前待ち作戦か?と思いきや,さすがに後退してしまった.
それでも,Gがいなくなった後も,INEOSはホンマに手ごわい.
毎回メンバーを逃げに送り込んでくる.そして勝つ

その後の「太陽戦隊(サンウェブ)ケルデルマンとヒンドリー」の強烈な引きによって,ビルバオ,フルサン,ニバリ,マイカ,コンラッドが次々に遅れていく.
二人とも結構涼しい顔で登っていく.
ヒルシといい,今年の太陽戦隊はどうなっているのだ.
ジャージを赤から白に戻して正解だったのか?

そんな中,いつ失速するかハラハラのアルメイダ.
総合一位の意地にかけて,必死に追いすがる.
頼みのクイックステップのアシスト陣はすでに全滅
たった一人の闘いである.

苦悶の表情.
上体揺れまくり.
ダンシングしまくり.
脚は回っているものの,じわじわと距離が開いていく.

心がポキ泉して,ズルズルと後退し,先に失速したニバリらに吸収されるのも時間の問題と思いきや…なっなんと!それでも踏みとどまるマリア・ローザ!

これは非常に燃える展開.
やはりグランツールはこうでないと.

よくスポーツ漫画なんかで,「最後は根性がモノをいう」的なセリフがあるけど,眉唾ではなく,このアルメイダの走りを見ていると素直に信じたくなる.

これぞマリア・ローザ・マジック.感動しました.
Kazchariなんぞはヒルクライムレースでトップ集団に置いていかれそうになったら,即効ポキるけどな.

なんだかんだで太陽戦隊にはタイムを詰められたものの,アルメイダはマリア・ローザを死守.
2位のケルデルマンとの差は15秒.

本人およびアシスト陣の調子次第でどうなるのか,先が全く読めない.
そして,何より第三週の山岳の天気が心配.

視聴者としてはステルヴィオトゥールマレー決戦が見たいぞ!
そして,タイム差数秒のまま,最終第21ステージでのTT!
これは盛り上がるで~

土井ちゃんのコメントで気になったこと.
昨日のコースは山岳ということもあり気温がかなり低かった.
選手は半袖ジャージでも,観客はダウンジャケット着用などの完全防備.
「ヒートテックも着てるんですかね~」という木下さんの問に対し,土井ちゃんが「オーストラリアにもユニクロがあって,国内通販で買えますよ.僕も愛用してます.日本でも冬のシーズンに突入するので冬のウェアに関する動画も作る予定です」みたいなことを話していた.

あかんやん.

このままやと,サイクリング初心者がヒートテックでライドしてエライことになる.
近所に買い物程度ならともかく「ヒートテックの“単独着用”はサイクリングや登山には向かない」と説明しとかないと.

ヒートテックを山岳ガイドが使わない理由

ちなみにKazchariは秋冬ウェア着用時,一番下にこれ着てます.

ファイントラック(finetrack) ドライレイヤーベーシックロングスリーブ男性用 FUM0421

上に何着ても(それこそヒートテック着ても)汗冷えしないのでめっちゃおすすめ.

『Giro d’Italia 2020 Stage14』の感想と北見出張

2020/10/18 Sun

「さすガンナ」by 土井ちゃん.

『Giro d’Italia 2020 Stage14』は大会2回目の個人TT.
Stage1のような極端なレイアウトではないが,それでも十分変則的.
登って,平坦,登ってゴール.
特に最初の坂は最大斜度19%という,ホンマにTTバイクで登んの?

一方プライベートでは,土曜日に旭川から北見へ出張.
Stage14はホテルのwifiを使っての観戦となった.

3人での出張やったけど”密”をさけるため,個人で夕食をとることにした.
そやけどあれやね,北見市内のホテルに泊まったんやけど,周りの飲食店が焼肉屋だらけ.
ほぼ8割は焼肉屋.
あまり腹が減っていなかったのと,一人焼肉はコスト的にもアレなので,ラーメン屋に入った.
ここが…大ハズレ.
やっぱ,北見名物の肉食えばよかったと反省.

そんなことはさておき個人TT.
大方の予想通り「トップガンナ」の圧勝.
ベタな表現だが正に”異次元の走り”.
もうね,走る姿がマン・マシン一体というか,人力エンジンとして完全に調和しているというか,長い脚がコンロッドのようだとか,アムロのRX-78というか,ヒデヨシのカタナというか,拓海のハチロクというか要するに無敵
誰も勝てる気がしない.
激坂だろうがなんだろうが,500W越えでガン(ナ)ガン(ナ)踏んでいく.
超絶美しい造形のゴールド・ピナレロと完璧な体格と身体パフォーマンス.
もはや走る芸術やな.
本人はヒゲ面にもかかわらずお茶目な弟キャラっぽいが.

他の選手?
うーん,ローハン・デニス”も”がんばりました.
アルメイダ”も”持ちこたえました.
それくらいかな.

Stage1同様,ガンナに全部もっていかれた日.
今年のジロは最終日もTT.
そこまで大会が継続できれば,ガンナ4勝目も確実でしょう.

さて明けて日曜日.
北見での仕事は10時頃には終了.
そこから旭川まで事務の人の運転で帰ってきたのだが,”今日走らへんのやったら,いつ走るねん”的な好天.
紅葉もキレイだ.
急かしたわけではないが,帰宅後は午後からそそくさとライドに出かけた.
詳細は次回.

それしても…自分の運転でも,同乗するにしても…クルマってホンマ退屈.
体感時間が長くて長くて…

当然だが,同じ距離を移動するのであれば,チャリの方が所要時間は圧倒的.
しかし,クルマの運転は基本的にほんのわずかな足首の屈伸運動の繰り返し(しかも片足)だけ.
一方のチャリは全身運動かつ,道路の高低差やら路面状況を常に意識しながら走る必要がある.
ようするにメリハリがある.
まぁ,移動そのものを手段ととらえるか,目的ととらえるかの違いやな.

ブラックサイクリスト的に北見は十分日帰り圏内.
仕事で行くのは御免被るが.

『Giro d’Italia 2020 Stage13』の感想

2020/10/17 Sat

思ってたんのと違う.

『Giro d’Italia 2020 Stage13』はこれまた平坦ステージ…なのだが,後半の4級山岳2連チャンがまさかの波乱を生むとは…
延々と続く山を登り続けるより,たった2つの低い山でこれほどまでに集団が破壊されるとは…

戦前の予想では例によって“サガン向けコース”.
これは冗談ではなく,Stage10のサガンの走りをみると「これは勝つ」と誰もが思っていたはず.
さらにFDJのアシストが「デマールが4勝しただけでチームとしては大成功.マリア・チクラミーノはその結果に過ぎない.別にその獲得にこだわってないヨン(テヘ)」的なコメント.
これで益々,サガンの勝ちと思った時期がKazchariにも(実況や解説者にも)ありました.

「あれは嘘だ」 by メイトリックス

中間スプリント地点でもするするとデマールが上がってきて,しっかりポイントGet.
逃げ集団通過後なので,高得点ではないがサガンにはしっかり差をつけた.

あれ?

さらに,最後の4級山岳を越えてからの必死の追走.

あれ?

どう見ても本気やん.

さて,レースの方は山岳での「BORAスプリンター引き離し作戦」が不発.
肝心のサガンがついて来れない.
平坦ステージにも関わらず総合勢の争いになってしまった.

優勝はUAEのウリッシ.
2勝目.
ニバリを抜いてジロ8勝目らしい.
VIVA L’ITALIA!

驚きは2位のアルメイダ.
すぐにマリア・ローザを手放すのではないかと言われ続けいたが,依然着用中.
今回もボーナスタイムGet!

今回のジロはバランスが悪いというか,エゲツない山岳が3週目に詰め込まれている.
さすがにそこでアルメイダは失速すると言われてはいるが,

(1)コロナでいつ大会そのものが中止になるかわからない.
(2)三週目の難関山岳も,天候のおかげでキャンセルもしくは短縮される可能性が大.
(3)明日の個人TTでアルメイダがさらにタイムを稼ぐ可能性もある.

ツールに続き,新人の総合優勝者誕生か?
(1)や(2)だと,本人不本意かもしれないけど.

『Giro d’Italia 2020 Stage12』の感想

2020/10/16 Fri

レインウェアはいつ着ますか?

『Giro d’Italia 2020 Stage12』パンターニの生まれ故郷,チェゼナテイコを出発し,丘陵コースをぐるっとまわって,同地点に戻るという204kmのコース.
この辺りに在住するライダーの“日々の散歩”に使われてそうなルート.
とはいえ,獲得標高3840mは剛脚オンリー.
Kazchariの家からは旭岳⇒十勝岳⇒美瑛の丘をつなげて走ったらそんなもんか.しんどいわ.
山中の道は細くて割れも目立つ.
その風景も含めなんとなく北海道の田舎道っぽい.

ほぼ同じコースを走る「グランフォンド・ノヴェコッリ」という大会が毎年開催されているらしい.
将来,走ってみた...いような,みたくないような...
エントリー開始数分で締め切られるような人気イベントとのこと.

丘陵と言えば“サガン向けコース”
デマールとのポイント差を詰めるにはうってつけなのだが,今日は“逃げ”にのらず.
さすがのサガンも勝負を避けるキツさかも.

コースプロフィールのせいだけではなく,むしろ天候の悪化によって超過酷なレースとなった.
雨+風+低温.
スタート時から多くの選手がアームウォーマー,山間部に入ってからはレインジャケットもしくはジレを着用.
ゼッケンが見えなくなくなるため,実況者&視聴者泣かせである.
そろそろ走っている選手に,リアルタイムでゼッケン番号が浮かび上がるシステムが開発されないものだろうか(もちろんon-off可で).

寒さのため手を振りながら走る選手たち.
消耗戦の中,優勝したのはINEOSのナルバエス
見事な逃げ切り優勝.
ゴールライン直前ではジレのジッパーを“下げて”「グレナディア」の宣伝も忘れない.

残り数キロまで一緒に逃げていたバーレーンのパデュンが,メカトラで遅れなかったら,やばかったかもしれんが(手嶋先輩みたいに待たないのね).
とはいえ,さすが全員がエースのINEOS.
優勝こそガンナ2勝とこのステージだけだが,メンバーそれぞれが良い順位につけている.
総合狙いをやめると,やはり個人の強さが際立ちますな.
そんなINEOS仕様のDOGMA-F12,土井ちゃん見積もりでは220諭吉らしい.欲しい!
高いが安い!(いや落ち着け)

このナルバエスも若い.
最近続く若い選手の台頭理由はいろいろあるが,土井ちゃんが懸念しているのが使い捨てにならないかということ.
昔はいくら調子が良くても,今後に備えて途中でストップさせることもあったらしい.
「若いからイケイケドンドン」ではまるでブラック企業.
ベルナルポガチャルが今後いつまで活躍できるかが一つの指針になるのだろうか.

土井ちゃん解説回では機材紹介の割合が多くなる.

メカトラ時のバイク交換で,選手やメカニックが無造作にバイクを横倒しするのにハラハラ.
もちろんフレームへのダメージも心配だが,ディスクローターディレーラーの歪み,そしてサドル破損...
いくらイラ立っていたり,焦っているとは言え,投げ捨てるのは論外(ピノ…).
その点,フルームは丁寧に扱うよな.こういう所で好感度アップ.

機材と言えばウェアも機材.
すっかり別人のようになったウイギンスも「レインウェアの選択が勝利を分ける」というようなコメント.
土井ちゃん補足.
やはり空気抵抗を考え,身体にフィットかつゴアテックスが良いとのこと.
ナルバエスのウェアをやたら褒めてたけど,あれってジレやんなぁ.
ちゃんと袖まで覆ってピタッとした物を作っているメーカーってどこやろ?

レインギアの選定はブルベ民の永遠の課題.
ちなみにKazchariは自転車業界のユニクロこと,dhb製を愛用.

dhb – Aeron Storm FLT 防水ジャケット

悪くはないが,長時間雨にさらされると,さすがに雨の染み込みと汗のムレがひどくなる.
お金があったら(&セールにのっかったら)これが欲しい.

Gore Wear – C7 Windstopper Pro ジャケット

16000諭吉越えなので関税かかるやん.
これまた高いが安い!

ブルベ界隈ではこのmontbel製が“雨天時の制服”として認識されている.

モンベル サイクルレインジャケット

こいつも高いが安い!
今年はブルベがなかったので雨天走行をほとんどしなかった.
来シーズンはレインウェアにお世話になる機会も増えるだろう.いや,増えてほしい.

実況の木下さん,時折ヲタクっぽいネタを土井ちゃんに降るが,結構スルーされている.めげないで続けて下さい.

『Giro d’Italia 2020 Stage11』の感想

2020/10/15 Thu

NIKENってこけるんや.

『Giro d’Italia 2020 Stage11』は町から町への海岸沿い移動ステージ182km.

平坦=難易度カテゴリー1に毎回騙されるジロだが,逃げと集団がずっと同じタイム差で進行し,残り10km付近で捕まえ,各チームのスプリンターガチンコ勝負という,今大会にしては珍しい“普通の”ステージ.

優勝はまたしてもデマール
4勝目である.
ゴール直前,デマールを追うサガンは前の選手を避けるために一瞬でコース変更.
その動きにほれぼれするが,もしその時,後方から誰かが来てたら,また斜行失格になったかもしれんかったなぁ.

それにしてもデマール強い.強すぎる.
FDJのトレインも完璧.
クイックステップのそれを彷彿とさせるが,Sベネとやりあってもデマールが勝ちそうな気がする.ユアンですら負けそう.
絶好調時のキッテルグライペルカベンディッシュと戦わせたいものだ.
近い将来,過去の選手のデータを入力してヴァーチャルで勝負させることが可能に...って『パワプロ』か!(売れなさそう)

平坦よりの丘陵ステージでサガンがポイント稼ぐ⇒ド平坦でデマール勝って取り戻すの繰り返しになる?
ド平坦の方が獲得ポイントが大きいので,やはりデマール有利か.

このStage,個人的に最大の注目点はズバリYAMAHAのNIKEN!
なんと,コフィディスのビビアーニがロータリーのコーナーで,大会モーターサイクル,NIKENに後方からぶつけられて転倒してしまう.

今大会,スプリンターとして全く精彩を欠くビビアーニ.まさかモーターバイク事故にまで遭うとは...
カメラが映した事故直後の現場では,NIKENまで横倒しになっていた.

NIKENは3輪.
コーナーの安定性抜群.
キャッチコピーに「雨でも膝スリできる」とある.
ちなみにNIKEN=二剣が由来らしい.

去年のジロから見かけるようになった.
プロサイクリストであっても山岳では時速20km/h以下に落ちることもある.
曲がりくねった急坂を,低速でモーターサイクルを操るのはなかなか難しい.
NIKENはこういった場面で重宝されているようだ.

サイドカーと異なり,通常の2輪同様にリーンして曲がる仕組みなのだが,一見,絶対にこけなさそうに見える.
しかし,あらためて実車を見てみると,きっちりサイドスタンドも装着されている.

そうか,自立しないんやこいつ.

試乗経験者からは「足つき性が悪い(身長180cmでつま先立ちとか)ので立ちごけしそう」という声もある.

つまりこけなさそうに見えるけど,実はこけるのがNIKEN.

国際放送で転倒場面を世界中に発信されてしまったYAMAHAさん,Kazchariのように勝手に誤解していた一般人に「こけないとは言ってない」とか言ってそう.

このStage11はイタリアの超級クライマー,マルコ・パンターニの実家と終焉の地を通る.
パンターニについてコメントを求められた別府さん,あまり詳しくないといいつつ,失格処分となってしまったドーピング疑惑(ヘマトクリット値異常)について言及していた.
毎回そうなのだが,レース実況で過去のドーピング問題が話題になると,解説者がお茶を濁すのがお約束.

ドーピングと言えば,幻のツール7連勝,ランス・アームストロング.
一時代を築いた彼の姿を見て,ロードレースファンになった,競技を始めた,TREKを買った人が何万人もいたと推測する.
ランスの話題になった時も,たいていうやむやのまま終わる.
誰もがロードレースの黒歴史についてあまり語りたがらない.
「ドーピングはしていたと思ってたけど,その走りに感動した俺たちの気持ちに嘘はない」という心理状態なのだろうなと思う.

Kazchariは2013年からツール他を観ているので,特別な感慨はない.
チャリ素人ながらランスの名前は知っていたし,著書『ただマイヨジョーヌのためでなく』も読んだ.
告白後も書籍『偽りのサイクル』『シークレット・レース』を読み,映画『疑惑のチャンピオン』も観た.

ただマイヨ・ジョーヌのためでなく (講談社文庫)

偽りのサイクル 堕ちた英雄ランス・アームストロング (日本語) 単行本

シークレット・レース (小学館文庫) (日本語) 文庫

2009年の復帰さえなければ,そのまま伝説の名選手で今も堂々と話題にされていたのだろうか.
最近,この映画がAmazon Prime Videoにアップされていた.

ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実

トップライダーと呼ばれていた選手はほぼ全員が有罪.
そしてUCIもグル.

そして,ランスが嘘を告白してからまだ10年も経っていない.