2020/6/2 Tue
うちの息子(7歳)は母親(うちでは「おかーちゃん」と呼ぶ)大好きっ子である.
息子は自宅出産で生まれた.その後も母親,つまりうちのヨメさんとその部屋で一緒に寝ている.
小学校入学を機にロフトベッドを購入.それからは一応別の布団で寝るようになったが,時々は同じ布団で寝ているようだ.
特に辛い時,悲しい出来事があった時に.
父親から見ていると,娘より息子の方が自立が遅いように思える.
本人のせいだけではなく結局は母親が拒絶しないからと思われるが.
「エディプスコンプレックス」という心理学用語がある.
Kazchariは高校生の頃,筒井康隆を愛読していた.
実はこの大作家,高校の大先輩なのである(同校卒業生にはゼンジー北京,嘉門達夫,槇原敬之などがいる.最高だ).
代表作(というと怒られそうだが)にいわゆる七瀬三部作(「家族八景」「七瀬ふたたび」「エディプスの恋人」)がある.
主人公の七瀬はテレパス.人の心が読める.そのオンオフを「カギをかける,あける」と表現している.
その能力ゆえ一か所で生活することがむずかしく,家政婦をしながら様々な家をめぐる生活をしている.
第一作ではそれぞれの家族模様が描かれる.
何しろ30年以上前に読んだきりなので,ところどころあいまい.
最も印象に残っているのは「家族八景」収録の「水蜜桃」というエピソードである.
七瀬が奉公先の主人に襲われそうになる.
そこで普段は他人に隠しているテレパス能力を駆使して,男を精神的に追い詰め...てな話.
続編の「七瀬ふたたび」は敵対勢力が現れてSF超能力合戦.
まるで『エイリアン』の1と2みたいな立ち位置やね.
最後の「エディプスの恋人」は正直よくわからなかった.
やたらスケールが大きくなったことは漠然と覚えているが,詳細はあやしい.
今,読むとわかるかもしれない.この小説のタイトルから「エディプスコンプレックス」という言葉を知った.
いずれにせよ,この3部作は高校時代に一番印象に残った読書だったことは確かである.
詳細は実際に読んでもらうとして,おもしろいのは保証する.
家族関係の話が,能力バトル物,さらには宇宙の意志など,とまぁ話がどんどん大きくなっていく.
うん? ここにも『ボトムズ』の元ネタが.
さて「エディプスコンプレックス」である.
エディプスコンプレックスとは、母親を手に入れようと思い、また父親に対して強い対抗心を抱くという、幼児期においておこる現実の状況に対するアンビバレントな心理の抑圧のことをいう。 フロイトは、この心理状況の中にみられる母親に対する近親相姦的欲望をギリシア悲劇の一つ『オイディプース』(エディプス王)になぞらえ、エディプスコンプレックスと呼んだ(『オイディプス』は知らなかったとはいえ、父王を殺し自分の母親と結婚(親子婚)したという物語である)。(Wikipediaより)
さらに,以下の解釈が続く.
まず子供は母親を手に入れ、父親のような位置に付こうとする。男児においては母親が異性であり、ゆえに愛情対象である。子供は父親のような男性になろうとして(同一化)強くなろうとする。子供はじきに父親を排除したいと思う。しかし父親は子供にとって絶対的な存在であるので、そのうち父親の怖さに気付く。最初は漠然とした不安や憎しみしか抱いてないが、子供が実際に母親ばかりにくっついていると、父親は「お前のペニスを切り取るぞ」と脅すのだという。
ただしこの言葉は実際に言われるとは限らず、大抵の子供はこの脅しを無意識的な去勢不安として感じるようになる。こうして子供はジレンマに陥る。母親を求めれば「去勢される」し、父親の元に跪いて父親に愛される母親の立場に収まるのならば、子供は「去勢されている」と感じるのであり、どちらにしろペニスを保持するための葛藤にさいなまれるのである。
この際に子供は自分のペニスを保持するために、近親相姦をする欲求を諦め、また父親と対立することも諦めて、両親とは別の方向へ歩き出す。こうしてエディプスコンプレックスは克服されて、子供はペニスを保持しながらも社会に飛び立つ。その後の時期は潜伏期と呼ばれ、幼児的な欲求(性的な欲求)を無意識化に抑圧して、ほとんど表出しなくなるのである。(Wikipediaより)
火種は既にあった.
ある日の夕食.Kazchari家はお好み焼き.
できあがったお好み焼を見た息子,「ねぇ取って~」と嘆願.「自分で取れ」と家族から総つっこみ.ふてくされ第一段階.
「箸で無理やったらコテで取れ」と再度つっこみ.一度失敗して「できない」とふてくされ第二段階.誰かが入れてくれるのを待っている.
Kazchariとヨメさんがニュース番組の話題で盛り上がってるのが気にくわないのか,「ねぇビデオの仮面ライダーにしていい?」といきなり言い出す.
さすがにキレたKazchariが怒る.さすがに息子しゅんとなり,じっと下を向いたまま一点凝視.誰が声をかけても反応なし.ふてくされ第三段階.
そのうちヨメさんもイライラしだす.息子,自分の部屋に逃げ込む.
しばらくしてヨメさんが様子を見に行くと,部屋の隅で膝を抱えて泣いていたらしい.
以下,ヨメさんの聞き取り情報.やや意訳されている.
「最大の”ライバル”である父親(Kazchari)にかなわないのが悔しい.こないだ自転車で坂を登り切った時,あんなにほめてくれたのに,宿題が遅かったり,ご飯が進まない時に「情けない」「かっこ悪い」だの言われても,言い返せない自分に腹が立つ」
そうな.
ほぉ,とりあえずウチの息子はKazchariをライバル視していることがわかった.まさにエディコン.
確かにKazchariとヨメさんの会話への割り込みは頻繁にみられる.
ここまでエディプってくれるとは,ホンマにフロイト的正常発達やな.観察していておもしろいぞ.
全てをエロに結び付けるフロイトの分析は何かと評判が悪い.
しかし,男の子に関しては結構当たっているのでは?
Kazchariは意地が悪いので,無意識に息子のプライドをへし折る言動が多い.
理不尽に厳し過ぎるのは問題だが,ほめて育てる至上主義には反対の立場.
「何かを得たければ対価を払え,行動で示せ,結果を出せ」という考え方である.
さんざんな言われようでも,なかなかめげないうちの息子,結構見込みがあると思うのだ.
全ての答えは未来にならないとわからない.戦え!息子よ!