『閃光のハサウェイ』を読んでみた~第二部以降を勝手に予想

2023/2/9 Thu

やってみせろよ!

先日,『閃光のハサウェイ』(閃ハサ)のTVエディション全4話の放送が終了した.

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ 【4K ULTRA HD Blu-ray】

Kazchariは本作を劇場で鑑賞済み.
Bluray販売前提あるあるの特別上映とやらで,¥1,900だったのが,なぜか悔しい.

長大な宇宙世紀エピソードの一本,さらに3部作の第一部ということで,完璧に途中から始まり途中で終わる.
まずいないと思われるが,もし一見さんがいたら面食らったやろな.
いや,いわゆるガンダム“ニワカ勢”にもキツイかもしれない.

かく言うファースト世代のKazchariも,鑑賞直後の満足度はあまり高くなかった.
理由は...何だろ,あまりに地味に思えたからだ.

現状の最新作『Gレコ』ほどではないが,富野節全開の電波セリフが飛び交うやり取り.
感情を抑えに抑えた登場人物たち.
丁寧だが画面が暗すぎて,何が起きているのかわからない戦闘.

言うなれば,これまでにない大人なガンダム.
ダニエル・クレイグの『007』っぽく,ハリウッドというより欧風テイスト.

印象に残るのは,ストーリーよりも,ダバオ市街戦での,降り注ぐ火花,仲間に拾ってもらうため街と海岸沿いをさまようハサウェイなどのヴィジュアル.
美しく,実に上品.

ただし,陣羽織もしくは被り物デザインのクスィーとペーネロペーはどうにも好きになれない.

その後,早々にAmazon Prime Videoで配信が開始.
2回観た.

そこで気づいた.
このアニメ.スルメ的に噛めば噛むほど味が出る.
まるで複数回鑑賞を念頭に置いて作られているようだ.

そこで,その前日譚にあたる劇場版『逆襲のシャア』(逆シャア)を再鑑賞.

U.C.ガンダムBlu-rayライブラリーズ 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア

そのボツシナリオを小説化した富野御大の小説『ベルトーチカ・チルドレン』(ベルチカ)を読了.

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン (角川スニーカー文庫)

さらには,さびしうろあき氏作画のコミック版『ベルチカ』(全巻)『閃ハサ』(1巻)も読んだ.

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン(1) (角川コミックス・エース)

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(1) (角川コミックス・エース)

そして,今回のTVエディションの放送である.
細かなカットや追加シーンもあるにはあるが,「これは」といった大変化はない.
歓迎したいのは,個人宅の小さい画面での視聴を考慮したのか,夜の場面が明るくなったこと.
特に第四話クライマックスの戦闘シーンで,その恩恵が大きい.

いずれにせよ,今ではすっかりお気に入りのガンダム作品になった.
2作目の公開が実に待ち遠しい.今度も¥1,900払います.

さて,その2作目は公開日未定.
タイトルも『サン・オブ・ブライト』という仮称である.

スタッフによると主戦場となるオーストラリアのロケハンが難しいため,製作が遅れているそう.
すげーな,実写映画みたいやな...って,ジブリ映画も押井映画も現地ロケハンは入念に行うらしい.

そして,大まかなあらすじは知っていたが未読だった角川スニーカー文庫の『閃ハサ』の原作(上中下)を読んでみることにした.

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上) 機動戦士ガンダム閃光のハサウェイ (角川スニーカー文庫)

まず上巻.

もうびっくりするくらい映画と変わらない.
セリフもほぼ同じ.

小説なので,キャラの心情も文字起こしされているのだが,アニメではそれらを表情やしぐさ,それに声優の演技でカバーしている.
素晴らしい.
最近の説明過多の実写邦画も見習うべき.
監督や脚本家がいかに原作を読み込んでいるのかがわかる.

小説には美樹本晴彦氏のイラストも収録されている.
ハサウェイはまんま(当然)だが,ケネスはアニメよりおっさん,逆にギギは幼い.
ふたりともアニメ版の方がイメージに合う.

で,中巻.

そもそも3部作の真ん中は作りが難しいとされる.
唯一無二の成功例は『スターウォーズ 帝国の逆襲』だろう.
ちなみにKazchariの劇場版SWランキングは順に「Ⅴ>Ⅲ>Ⅳ>Ⅱ>Ⅵ>Ⅰ>Ⅶ>Ⅸ>(越えられない壁)>Ⅷ」である.

中巻ではオエンベリにおける反地球連邦ゲリラの虐殺事件が中心に描かれる.
ただし,ハサウェイ達が到着したのは事後.
映画的には,連邦側(キンバリー隊)によるエグい所業の描写がありそう.

ハサウェイがからんでいないので,ペーネロペーによるヴァリアント撃沈はナレーションのみ.

ギギは香港での快適な(?)愛人暮らしを捨て,ケネスの部隊に合流し,ニュータイプ能力っつーか,持ち前の洞察力で隊を勝利に導いて女神化.
エアーズ・ロック見学中に,ギギはマフティー側へ.
ハサウェイと再会して中巻は終了.

映画的にはここで主題歌inか.

これだと,90分保たせるのは大変かもしれない.
監督も「第二部は原作と最も話が変わる」と語っている.
他にも「富野要素を省いたけど,やっぱり追加した」「まだ絵コンテもできていない」などの発言もあり迷走中.
こりゃ今年の公開は無理やな.

で,勝手に第二部以降の追加要素を考えてみた.

1)新メカ投入⇒ガンプラ化

ただでさえ登場MSの少ない本作品.
財団Bが黙っていないだろう.

そこでMSVの大量投入が期待できる.
『UC』のMS大運動会の再来やな.

そして主役2機への追加装備かフォームチェンジ,もしくはMG販売?

さらに,後の時代におけるMS小型化につながるナニカの事情.
アナハイムの衰退からサナリィの攻勢も.

2)ブライト家の事情

ブライトの出演は確実.
小説にもミライとの会話もあるけど,プラスαが欲しい,
いくらなんでもレストラン経営は唐突では?
そして『ベルチカ』後のハサウェイの軍隊生活.
やがて,反連邦テロリストになっていく様をじっくりと描くのではないか.

ちなみにコミック版冒頭にマンサンとかクワック・サルヴァーとの会話シーンおよび,クスィー受領前(月に上がる前)のダバオでの戦闘が追加されている.
第二部でも使えそう.

3)ケリア他,マフティー仲間との交流

第一部の最後にぽんと出てきた短髪赤毛のケリアさん.
その髪型の理由(コミック版にある)と恋人になったエピソード.
ギギのメイスさん煽りよりも重要.
他のメンバーとの交流も欲しい.タンカー2隻で対地球連邦テロとか...

で,いよいよ(下)こと第三巻へ.

ここは第二部の展開次第でガラリと変わるかも.
もしかして生存ルートあり?
さすがにないと思うけど,劇場版『Z』の例もあるしな(Kazchariは否定派).

下巻冒頭の夜,ハサウェイは据え膳食わずに,ギギと小難しい話を展開.

ギギとキンバレー隊の解放と逃亡のくだりはあまり面白くない(盛り上げにくい).

で,いよいよ見せ場のアデレード決戦.
次々に殺られるマフティーのメッサー,
エメラルダは死に,ガウマンは生き延びるが,映画ではどうなる?

ペーネロペーとの最終決戦.
ビームバリアという謎兵器の射程に追い込まれるクスィー.
画的に地味になりかねん.

墜落し,レーンに無理やりコクピットを開けられる.
そこには全身にやけどを負ったハサウェイ.
拿捕されてしまう.

そして...ここからはドラマ的に最大の見せ場.

看護師との交流.
ケネスとの会話.
間に合わないギギ.
何も知らないブライト.

さすがにここは変えないで欲しい.

ハサウェイとブライトが親子だったことは,軍の正当性,士気向上のために利用される.
この小説のスゴイところは,最後の最後までブライト自身の言葉が一切書かれていないところ.
さすがの富野さんも書けなかったのか?
超難題だが,アニメではどうする?

そして,ラスト,身の危険を感じニホンへ向かうケネスとついていくギギ.
ここでギギの上巻での発言が回収される.上手い!

つーことで,原作小説を元にした第二部以降の勝手な予想でした.

それにしても,ニホンのアニメ,ホンマに画がキレイになったなぁ.
CGにしてもかつてほどの違和感はほぼ消失.
その分,内容が問われる時代とも言える(ああ『アバ2』...).

マフティーの主張は「地球環境保全のために,全ての人類は宇宙に出るべき」である.
そのため,地球在住の特権を得ようとする支配層を粛清するというテロ行為に出る.

さらに,この違いが大きいと思われるのが『逆シャア』と『ベルチカ』でのハサウェイの「罪」である.
クエスを撃ったのは映画だと(アムロの恋人の)チェーン,小説だとハサウェイ自身.
『閃ハサ』の前日譚は『ベルチカ』.
ゆえに何度もうなされるし,幻覚もみる.

ハサウェイは既に壊れている.
これは処刑を告げられた際の達観にもつながっている.
生への執着は非常に薄い(叫びそう...という表現はあるが).

劇場版の『閃ハサ』は,ダバオの風景,特に海の描写が恐ろしいくらい美しい.
タクシーの運ちゃんも言っていたが,この風景を見せられて,地球汚染と言われても...とハサウェイ(や視聴者)の信念を乱す目的もある?

「地球はそれほどヤワではない.人間がヤワなだけ」という不都合な真実.

一方で宇宙世紀105年ではコロニーの老朽化が問題になっているらしい.
人工物には限界がある.

地球に残るも,宇宙に行くも地獄.
人類は滅びるしかないのか?
水星(『水魔』)もしくは木星(『クロスボーン』)に移住?
順当に火星(『鉄血』)か?

『ガンダム』とはまだまだ長い付き合いになりそうだ.楽しませてくれる.

んが,実は『イデオン』の方が好きという事実は認めなければなるまいが.