『ドクター・スリープ』から『IT』へ

2023/2/15 Wed

原作と監督と.

少し前,3本ローラーの友として『ドクター・スリープ』(2019)を観た.

ドクター・スリープ(字幕版)

映画史上に残る大傑作『シャイニング』(1980)からの39年ぶりの続編ということで,楽しみにしていたのだが,最初から最後まで「思ってたんとちゃう」という感想が拭えなかった.

心理的にグイグイ来る上質なホラー映画が,CG満載の陳腐な異能力バトルモノに変貌していた.

だがしかし.

この映画には裏事情があって,原作者のスティーブン・キングは映画の『シャイニング』を大酷評.監督のキューブリックをずっと恨んでいたらしい.

シャイニング (字幕版)

一方で,自分の原作に忠実な『ドクター・スリープ』は大満足&絶賛しているそうな.

こんな話,どこかで聞いたなぁ...って,そうや!押井守の『ビューティフル・ドリーマー』やん.

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これまた世紀の大傑作.
おっさんになって観ると,“あの頃”を思い出して泣ける.

ちなみに現在放送&配信中の令和版『うる星やつら』,Kazchariは最初の数話で早々に脱落.
メガネ(=千葉繁)がいないだけで,これだけつまらなくなるとは...(原作準拠なので仕方がない)

うる星やつら

それはさておき,『ドクター・スリープ』視聴後,おすすめに上がってきたのが同じくキング原作の『IT/イット “それ”が見えたら,終わり.』(2017)である.

IT/イット “それ”が見えたら、終わり。(字幕版)

長らく完結編の『IT/イット THE END“それ”が見えたら,終わり.』(2019)しか配信されていなかったので,視聴をパスしてきたが,これを機会にこの2本を連続で観てみることにした.

20年以上前に,あのレンガ=分厚い原作も読んだが,あまり印象に残っていない.
基本的に翻訳モノは苦手なせいもあるけど.

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で,まず『IT/イット “それ”が見えたら,終わり.』の映画レビューである.
いわゆる「CHAPTER 1」.
何を今さらのネタバレで.

時代は1990年.

言うまでもなく最初からキング節全開.
「アメリカの寂れた田舎町」「校内ヒエラルキー」「悪ガキ」「いじめ」そして「夏休みのちょっとした冒険」って...おそらく世界で最も有名なキング原作『スタンド・バイ・ミー』と舞台設定がそっくり.

スタンド・バイ・ミー (字幕版)

もちろんあっちはリアル,『IT』はファンタジーやけど.

それしても,今も昔も憎悪うずまくデリーという街は色々ひどすぎて住みたくない.
ペニー・ワイズの誘拐&子供殺しの他にも.登場人物たちが毒親を殺しまくる.
ああ,ニッポンは平和でいい国だなぁ...

ところで,ペニー・ワイズの攻撃って物理なん? 精神なん?
被害者側の妄想が現実化してしまうタイプ?
そのあたりが適当なので,モヨってしまう.

個人的にこの映画の一番の楽しみ方は全編に漂うJOJO感.

デリーの街の雰囲気もそうだが,キーとなる「井戸の家」とか,スタンドっぽいペニー・ワイズやその手下どもの攻撃とか...むっちゃ杜王町してるやん!
そう,“みんな大好き”第4部の日常に潜む恐怖を存分に描いているのだ.

なんかキャラの言動もそれっぽい(特にリッチー).
つーか,荒木飛呂彦先生も,どこかの媒体で「キングの大ファン」と公言してたはず.

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)

パクリ...ではなくリスペクト?

参考までにJOJO第四部の連載期間は1992年~1995年.
スティーブン・キングの原作が翻訳されて出版されたのは1991年.

「あぁ,こりゃ荒木先生,忙しい連載の合間を縫って,原作読んだなぁ.それでヴィジュアルイメージを第4部に落とし込んだのかー」と勝手に想像.

と,思ってたら,1990年にTVドラマ版が製作されていたらしい.
Kazchariは未視聴だが,先生はこちらを観られたのだろうか?(※個人の想像です)

そして,ラストシーンで「これが恐怖か...」とつぶやきつつ穴の底へ落ちていくペニー・ワイズ.
これもどこかで見たなぁ...って,『仮面ライダーW 運命のガイアメモリーAtoZ』の,エターナルの最後のセリフ「これが死か...」と同じやん!
さすがにこれは無関係か?

引き続き『IT/イット THE END“それ”が見えたら,終わり.』,つまり「CHAPTER 2」を鑑賞.

IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり.(字幕版)

時は(もちろん)27年後の2016年が舞台.

こっちは...全然あかん.
何これ?

CHAPTER1と同じ展開を,27歳分老けたおっさん達が騒ぎ,逃げ惑いながら,なんとなく気合と根性と思いつきでペニー・ワイズを倒しただけ.
万能感が肥大した相手に,罵詈雑言で戦うって...ネットリンチの暗喩?

前作は子供が恐怖を克服して必死に戦う(=成長)から,まだ見れたが,これはないわー.
で,とってつけたように影の薄かったスティーブンの手紙で感動させるようと...するかー!

気になったのは,40歳になった登場人物たち,誰にも自分の子供がいない.
記憶を失ったとは言え,27年前のトラウマ(子供が消える)を引きずっているから?

いずれにせよ,こっちは不要.
完全に時間の無駄だった.
原作もこんなんだっけ?