2025/2/7 Fri
As you sow, so you reap.
3本ローラーの友として選んだ昨夜の映画は...M・ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』(2008)である.
シャマランと言えば,大傑作『シックス・センス』(1999)が有名.
公開時には劇場で鑑賞した.
映画冒頭で,主演のブルース・ウィリスによる「この映画にはある秘密があります。まだ映画を見ていない人には、決して話さないで下さい」というキャプションが表示される.
こんなん言われたら,勘ぐりながら鑑賞するやん.おかげで途中で「もしかして」と気づく人が多かった.
その有名なネタはともかく,スプラッタではない心理的な恐怖演出や画がなかなか良い.ちょいジャパニーズ・ホラー風味.
そして,この作品の公開後「実は〇〇〇でした」系の映画がしばらく続いた気がする.
で,この大ヒットにより,一気にメジャーにのし上がったシャマラン監督.
頻繁に新作を公開するが...なぜだか,Kazchariは全然観ていない.
賛否両論が多く,ストーリーのさわりを聞いても「不条理かつ超常現象的なナニカが起こり,よくわからんような解決策が示されて終了」というイメージが邪魔をして劇場に足を運ぶに至らなかった.
そういや,少し前に配信で『オールド』観たな.
うん.確かにイメージのまんまの展開だった.
それはさておき『ハプニング』に話を戻す.
ネタバレ...っつーか,これってミステリのようでミステリではない.
劇中で明言されたわけではないが犯人(原因)は植物なのだ.
以下,あらすじ.
古い映画だが一応ネタバレ注意.
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ニューヨークのセントラルパークから,それは始まった.
突如,人々の動きが停止または後ろ歩きをするようになり,ヘアアクセサリで自分の首を刺したり,ビルから飛び降りたり,拳銃で頭を撃ったりと何らかの方法で次々に自タヒを決行する.
この異常現象は米国北東部から始まり,徐々に拡大.
主人公のエリオットは,妻と友人,その娘の4人で避難する.
ただし友人とは途中で別れる.
友人は娘をエリオットに託し,自分の妻がいる別の町へ向かうが,案の定,ナニカに感染して自タヒしてしまう.
エリオットは途中,米兵他,他の町から逃げて来た人々と合流.
クルマを捨てて西へ逃げるが,種子販売業者の言葉や状況から分析し,どうやら植物が突如何らかの有害化学物質を散布し,それを吸った人は自己破滅願望に歯止めがかからず自タヒしてしまうと推測.
さらに,数が多いほど,植物は敵意を感じるらしく,それを避けるべく少人数(5人ほど)での移動を提案する.
途中で知り合った学生2名と計5人で避難し,民家数軒にたどりつく.
それぞれが象徴的.
一軒目は全てが作り物のモデルハウス.大勢の人がやってきて”感染”⇒自タヒ.
二軒目は立てこもる住民の家.無理に押し入ろうとした学生2名が射殺されてしまう.
三軒目は電気も通ってない田舎の一軒家.一人暮らしの老婆が住んでおり,口は悪いものの食事と部屋を提供される.
最後の老婆が曲者で,かなりボケてます.
翌朝,エリオットの姿を見ると激高して家の外へ.
突如”感染”し,窓ガラスに頭をつっこんで自タヒ.
妻と友人の娘の姿を探すエリオット.
伝声管がつながる離れにいることがわかる.
だが今は感染の可能性があるので,互いに外に出て合流できない.
タヒを覚悟したエリオットと妻,友人の娘は,過去のちょっとした浮気(?)の懺悔をし,どうせタヒぬならと最後は一緒にと,思い切って外に出る.
抱き合う二人だが何も起きない.いつのまにかこの厄災は終了していたのだ.
数カ月後,和解したエリオット夫妻.妊娠が発覚し喜ぶ二人だが,アメリカでは再び厄災が再開しようとしていた...
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ちょっと異質なパニック映画.
まぁ,いわゆるシャマラン構文.
自然災害が原因のパニック映画の場合,主人公一人の力でどうにかなることは,まずない.
家族など身の回りの人間だけを救うのが精一杯.
物語終盤では災害・厄災が収束し,さぁこれから復興だ!というプロットで終了することが多い.
『ハプニング』はバッドエンドだけど.
こういう映画って表層のストーリーを追うだけではなく,何を象徴しているのかの視点で考える必要がある.
やはり3軒の家がキーなのか?
モデルハウス ⇒ 虚構
銃の家 ⇒ 恐怖
ババアの家 ⇒ 狂気
タヒに至る要因? イメージ? 現代社会への風刺?
何か違うなぁ.わからん.
パニック物にしてはめずらしく,この映画では人間同士争わない.
ゆえに極限状態における「人間って醜い」「一番怖いのは人間」というありがちな場面はない.
むしろ,主人公の二人は,この大規模な厄災中も,過去のちょっとした行き違いについて,悶々と悩んでいる.
人類が滅ぶかどうかの瀬戸際でも,人の悩みは個人的な人間関係に尽きるということか.
実はベタなエコロジー物で「植物との共生関係を考えなおせ」がテーマだったりして.
もちろん,植物=異文化のメタファで,今の多様性社会を先取りしていたのか.
食べる・食べられるだけの関係ではない! 多種多様な方法で連鎖する「自然のネットワーク」の神秘
まぁ,色々解釈できるプロットはともかく,画作りそのものは結構好みである.
自然なヒトの画角というか,遠景から,極自然に何事もなかったかのように自決するヒトを眺めている場面が多い.
オーバーアクションではなく,淡々とした自タヒの演出は,独特の不気味さがある.
この映画の公開から十数年後,世界中が謎のウイルスに覆われ,人の意識や行動様式が根本的に変化する厄災が実際に起こってしまう.
そう,少し予知的な作品でもあるのだ.