2022/2/18 Fri
What gets us into trouble is not what we don’t know.
It’s what we know for sure that just ain’t so.
何も知らないことが厄介なのではない.
知らないことを知っていると思い込むのが厄介なのだ.
マーク・トゥエイン
Kazchariは一応投資活動をしているが,いわゆる「ほったらかし投資」であり,金融についての知識は非常に乏しい.
「めちゃめちゃ利息の良い定額預金」程度の認識である.
トレーダーのように一日中モニターに張り付いて日々の平穏を乱すような生活はしたくないので,これで十分.
正にローリスク・ローリターンで絶賛運用中.
そんなKazchariが手を出してしまったのが,Amazon Prime Videoで配信中の映画『マネー・ショート』である.
例によって,3本ローラー練しながらの鑑賞なので,通しではなく,ブツ切れで.
元々この映画は長い.
以下,あらすじ.
実話に基づき、4人のアウトサイダーを描いた物語。大手銀行、メディア、政府が否定した世界経済の破綻を予見した男たちによる大胆な投資は、銀行のいかがわしい闇を浮かび上がらせた。そこには人間も物も、何もかも信じられない世界があった。
鑑賞後,一言...
「話の筋がさっぱりわからん」
似たようなアルファベット3文字の金融用語の乱舞に頭が混乱.
そもそも邦題が悪い.
「華麗なる大逆転」ってなんだ? そのようなスカッとさわやかな話ではないぞ.
とは言え,「意識高い系」「選ばれし者」だけに向けられているというわけではなく,エンタメ性にもちゃんと配慮している.
例えば,話の途中でいきなり登場人物が“第四の壁”を越えて,観客(我々)に話しかけてくる場面があり,難しい専門用語をたとえ話で解説してくれる.
特にカジノにおける「合成CDO(合成債権担保証券)」の説明は非常にわかりやすかった.
さらに,実在の登場人物を超一流俳優が演じているので,彼らの緊張感のあるやり取りから,この後,何かとんでもないことが起こるであろう,サスペンス風味の表現も素晴らしい.
それに,揃いも揃って変人だらけで,全員キャラが立ちまくり.
彼らを観ているだけでも面白い.
そこで,冒頭に上げたマーク・トゥエインの言葉である.
有名なソクラテスの「無知の知」と大意は同じだろう.
この言葉は誰に向けて発せられたのか?
一つはもちろん劇中の金融バブルに踊らされた人たち.
もう一つは我々,観客であろう.
この映画を「さっぱりわからん」「つまらん」「駄作」と切って捨てるのはまだマシ.
「ほほぉ,何かややこしい金融用語が飛び交ってるけど,オレは”だいたい”わかるぜぃ.きっとこんな意味に違いない.深いなぁ...(何が?)」で済ませてしまうのが一番厄介.
とは言え,わからんもんはやっぱりわからんので,ここはやはり解説サイトの力を借りよう.
鑑賞後すぐに,こんな作業をするのは『TENET』以来やな.
とりあえず,Google先生による検索上位サイトを片っ端から熟読.
億万長者も夢じゃない!? 《4000億稼いだ男たち》の実話には 「お金稼ぎのヒント」がいっぱい!
観る前にこれを知れば『マネー・ショート』がもっと面白くなる!5つの経済用語
マネー・ショート~”リーマンショック”を予期した4人のアウトローたちの葛藤
映画『マネーショート』からリーマンショックを解説~第16回インターン勉強会~
金融用語に振り回されない!どこよりも分かりやすい『マネー・ショート 華麗なる大逆転』解説
このように,解説サイトが山のようにある.
全く便利な世の中だ.
『2001年宇宙の旅』が今,公開されたとしたら,どれほどサイトが乱立するのやら.
つーことで一通り閲覧しました.
なるほど.
ようするに,住宅ローン債権が破綻した場合の保険に対して空売りを仕掛けていたわけだな.
金融用語や構成の全てを理解したとは言わないが,誰が何のために動いていたのかが見えてきた.
ただ,最終的に大金を稼いだ主人公たち.
リーマン後のアメリカ社会を見て,誰も彼もが複雑な顔で苦痛に満ちており,決して大喜びしていない.
Win-Looseのゼロサム・ゲームにおける勝利は(まともな感性を持っていれば)むなしいだけのかもしれない.
それに結局は誰も逮捕されず,不公正な仕組みはなおも残っている.
あれ? これって某国の某事件と一緒のような...
いずれにせよ,以前の記事にも書いたけど,今後の教育に金融リテラシーを取り入れるべきなのは間違いない.
公的機関が行わないのなら,各家庭の責務となろう.
そうでないとダマされる.
いや,逆に知らない方が幸せという考えもある.
実際,リーマンショックの際,先進国の中で最も被害を受けなかったのは,投資よりも預金率が圧倒的に高い日本(の庶民)だけだったという話もある.
皮肉にも,冒頭文の「知らないことが厄介ではない」を具現化したのかもしれない.
余談だが,この映画,時折変な日本推しの場面がある.
ラスベガスの日本食レストランでの鉄板焼や歌謡曲(徳永英明らしい)など.
2006年頃はまだ日本が,アメリカの金融市場に影響力を持っていた証なのだろうか.
つーことで,映画『マネー・ショート』,各サイトにて金融用語について一通り予習してからの鑑賞をオススメです!