映像作品の戦犯?

2024/1/12 Fri

総合芸術の罠

アニメ制作会社「SUNRISE BEYOND」が消滅というニュースが飛び込んできた.

バンダイナムコフィルムワークスがSUNRISE BEYONDを吸収合併、事業を継承

一般的に知られた企業ではないのでYahooなどではトップニュースにはならない.
古くからのアニヲタなら,この会社の前身であるXEBECの名の方がピンとくるだろう.
『機動戦艦ナデシコ』『蒼穹のファフナー』を制作した会社だ.

その「SUNRISE BEYOND」が,この度なくなる原因となってしまった作品が『境界戦機』である.2021年放送のロボアニメ.

境界戦機

これがまぁ見事なまでに〇〇アニメ

大国に分割統治された日本を解放するため,主人公がレジスタンスとなって戦う...という,一部『コードギアス』に似たプロットだが,何しろ緊迫感がなかった.

まず不思議なのが,支配=奴隷国家なのに,国民は極めて平和な日常を送っている描写の数々.
町もほとんど破壊されておらず,コンビニやレストランも通常営業,ホームセンターの商品も潤沢.
途中で温泉にも入ってなかったっけ?
レジスタンスだけが「カイホウダー」「クツジョクダー」と大騒ぎ.

致命的なのは主人公とマスコットキャラの魅力の無さ.
シリアスな設定と相いれない,うざいゆるキャラ風AI.
戦う動機がよくわからない優柔不断な主人公は二期開始早々,いつの間にか闇落ちしてて,しかもその原因の説明をやたらにひっぱるから,グタグダ展開が延々と続く.確かこのあたりで視聴を切ったはず.

その後も,2023年になって,いきなり15分程度の続編なのかサイドストーリーなのかよくわからない映像配信があったり(これもつまらんかった)と,謎のコンテンツ展開.

まさに迷走.

割と褒められるのがメカデザインだが,少なくともKazchariは好みではなかった.
とりわけ主役メカの関節形状.
工業的には正しいなのかどうかしらんが,あれでカッコよいポージングは無理なのでは?

HG 境界戦機 メイレスケンブ 1/72スケール 色分け済みプラモデル

財団Bが提供するロボアニメは『ガンダム』以降,プラモの販促を兼ねている.
つーことで,『境界』も主役メカだけでなく,それこそ『ダグラム』並みに輸送ヘリやらトレーラー,はてはヒロイン・フィギュアまで商品展開していたが,模型店ではどれも駄々余り.
「棚の守護神」「ワゴンセールの常連」となっていた.

ガンプラ品薄(転売)問題の時期とも重なっていたこともあり,「生産レーンをガンプラに回せ!」という声も多かったそうな(真偽不明).

本編がおもしろくないと,商品が売れるはずはずがない.
むしろ「30MMシリーズ」のデザインラインで登場させた方が良かったのでは?

BANDAI SPIRITS(バンダイ スピリッツ) 30MM bEXM-33T ヴォルパノヴァ (タンク Ver.)

どうしてこうなった?

ささやかれるのが「SUNRISE BEYOND」社長,O氏のやらかしである.
この方,サンライズ制作のロボアニメにかなり関わっている.
主な作品は以下の通り(抜粋).

- ガンダムSEED(制作進行)
- ガンダムSEED DESTINY(制作進行)
- ゼーガペイン(制作デスク)
- ガンダム00(制作デスク)

うん.ここまではまだ良い.

- ガンダムAGE(プロデューサー)
- ガンダムビルドファイターズ(プロデューサー)
- ガンダムビルドファイターズトライ(プロデューサー)
- ガンダム鉄血のオルフェンズ(プロデューサー)
- ガンダムビルドダイバース(プロデューサー)
- 境界戦機(エグゼクティブプロデューサー)

なかなか味わい深いラインナップである.
ようするにプロデューサーになってから,アニヲタから”戦犯”扱いされるようになったわけやな.

まず『AGE』がダメダメ.
これはレベル5のあの社長のせいとも言えるが.

もろにガンプラ販促アニメである『ビルド』系は観ていないのでよくわからん.

そして『オルフェンズ』
よく言われるように第一期(~25話)までは面白かった.
二期はギリギリ対MA戦までかなぁ.
鈍器で殴りまくるバルバドスだけがやたらかっこいい.
終盤は全く納得いかーん.

そして「SUNRISE BEYOND」の社長=エグゼクティブになった後に作ったのが『境界』ですか...

Wikによるとこの方,東大法学部出身.
別に(逆)差別するわけではないが,この仕事で良かったのか?

つーことで,これらの作品の失敗の根源,つまり戦犯はこのO氏とされているわけだが,以前からプロデューサーの質ってそんなに注目あびてたっけ?
プロデューサーと言えば,サムネのようないつもセーターを肩かけで巻いて,シャツの袖をまくっているチャラいおっさん...いつからこんなイメージがついた?

一昔前,80年や90年代だと,注目を浴びる,つまりその作品の質に責任を持っていたのは総監督と作画監督だったような気がする.
つまり「富野作品」「押井作品」,作画なら「安彦回」「湖川回」などという判断.
例外的に『ヤマト』だけは西崎プロデューサーが前面に出てたか.

やがて脚本家と声優が注目されるようになり,失敗作の場合はプロデューサーまでが問題に.

ジブリの鈴木プロデューサーが前面に出,業界アニメ『SHIROBAKO』や朝ドラの『なつぞら』で制作現場の裏側が暴かれる.

SHIROBAKO

ファースト・ガンダムの頃は,いかにしてトミノ御大がスポンサーを騙...いやごまかして,自分のやりたいことを実現していったという話もよく話題になる.

資本が巨大化すると”絶対に失敗できない圧”によって,クリエイターよりも上層部の権限が強くなるのかね.
で,その権限を持つ人のセンスがアレだと,こうなるわけやな.

「制作委員会方式はあかん」と岡田斗司夫もよく言っているな.

まぁ,制作委員会方式でも面白いモノもあるしな.
即断は禁物.

世の中には『境界戦機』が大好きという人もいるかもしれん.
『死霊の盆踊り』『デビルマン』『ピンチランナー』『北京原人』にすら熱狂的なファンが...あっ,比べたら失礼か(どっちに?)

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