さかのぼって『メカニック』を観た.

2021/1/13 Wed

ステイサムは同級生.

メカニック (吹替版)

「Amazon Prime Video」の検索・表示システムがアレなので,続編と気づかず,先に観てしまった『メカニック:ワールドミッション』
ツッコミどころ満載でなかなか楽しかったので,前作の無印『メカニック』も観ることにした.
劇場公開は2010年とある.

結論.

意外にシリアスな展開で,娯楽要素を増やしシリアス感が減った続編とは別物感あり.
あえて言うなら『ランボー』と『ランボー2』の関係に近い.
つまり別映画として観ても何も問題なし.

以下,ネタバレ全開でストーリーと感想(ほぼ実況).

この世界では,証拠を残さず事故死や病死に見せかける暗殺者を「メカニック」と呼んでいる...

まず,主人公アーサー(ステイサム)のプロ技を見せつけるシーンからスタートする.
プールで泳ぐ麻薬王を溺死に見せかけて殺害.
ターゲットが泳ぎ始めるまで水中でボンベ咥えて待機?
いやいや続編でもあったやん,ターゲットの行動把握シーン.
だから問題ない.

どこから侵入したかは不問.
おっ,プールで殺しって,続編にも引き継がれているなぁ.
実行後,アリバイ(?)作りのため,死体の手を持って泳いでいるように見せかけるのはさすがに無理がある.

ザル警備な屋敷から逃亡し,橋から飛び降りて川に着水.
ボートの縁をつかんで逃走.なぜ?
そもそもボートの人は仲間ではない?

街中のカフェで殺しの元「師匠(キーファー・サザーランド)」に会う.
師匠は車椅子に乗っている.自走しているので高齢というよりもアクシデントによる脊損?
息子のスティーブの話になる.
(カタギの)仕事を紹介したりしているが,人生うまくいっていないようだ.

ステイサムに新たな仕事の依頼が.
そのターゲットはなんと「師匠」だった.
「師匠」は組織の敵対勢力に買収されて情報を流し,味方のメカニックが5人ほど殺されたらしい.
「雇い主」からは裏切り者の「師匠」を消せとの指令が.
ここでステイサムはなぜか疑ったりしない.
他人を疑い出したらキリがない業界だから?

早速ミッションスタート.
「師匠」に狙われているから逃げろと電話連絡,逃走路を指示する.
車椅子で階段を降りるなど無茶な指示でたどりついた駐車場には,銃を構えたステイサムが.
ここで「師匠」は全てを察するが,特に言い訳もしない.
ステイサムもさほど躊躇せず引き金を引く.

先にネタバレすると,「師匠」も「雇い主」にはめられていたわけだが,何の弁解もなかったのは「師匠」にもやましい点があったから?
それとも,もう人生に飽き飽きしてて,「弟子」のステイサムに殺されることを本望に感じていたから?(ラストの展開からすると後者っぽい)
いずれにせよ,視聴者(Kazchari)側に違和感の残る演出(まぁこの手の映画あるあるですね).
この時に「師匠」特注の“白い拳銃”をステイサムが受け継ぐことになるのだが,一応これも伏線.

数日後「師匠」の墓前にて,例のダメ息子のスティーブがたたずんでいる.
ステイサム,声をかける.
不肖の息子である自覚はあり,親父に迷惑をかけ続けたことを悔やんでいる.
「クルマ強盗(ということになっている)に復讐してやる」と息巻いている.
何とも複雑な心境のステイサム.
スティーブをほっておけない的な感情が少し芽生えつつある.

さて,スティーブは宣言通り,自らを囮にしてクルマ強盗に襲わせようとする.
親父を殺した犯人...というよりクルマ強盗を消していけばいつかは犯人に...という無茶な論法.
意外に度胸のあるスティーブ,エサに引っかかった強盗をボコボコにし,もう少しで殺しかける.
そこへステイサムが登場し,強盗を逃がす.

ステイサム,そこまで覚悟しているならとスティーブを自分の弟子にし,暗殺のテクニックを伝授することを決意する.
たぶん,このまま無茶な行動をさせて,警察に御用になったり,返討ちに会って殺させなくないという心情が働いたのであろう...って,殺し屋の論理ですね.

修業開始.

この手の映画って,ここのパートが重要だと思うのだが,少々雑.
基本的に射撃練習シーンばかりで,体術,変装術,暗殺アイテムの扱いなどのワクワクシーンがほぼ皆無.

一応,実施研修にて,目の前でスマートな殺しを見せるが,えっ? それだけ?

いよいよスティーブの初仕事.
「子犬を飼え」「同じカフェに3週間通え」などの謎指示をすんなり受けいれるスティーブ.
もちろんこれには意味があった.
今回は「身長2m,体重135kgのチワワと若い男好きな他組織のおっさんメカニックを事故にみせかけて殺せ」とハードル高めのミッション.
ターゲットに一般人と思わせ,声をかけさせるための子犬とカフェ通いだったのだが,遠回り過ぎるやろ.
しかも,組織に黙って新人の弟子に任せるって,ステイサムのプロ意識はどういう基準?

スティーブが“若い男”なのかどうかはさておき,とりあえず,この巨漢ゲイに目をつけられることには成功.
計画ではバーで飲み物に薬を入れての毒殺だったはずが,スティーブくん,どうもそれが卑怯に思えたらしく,憧れのステイサム先生同様のスマート絞殺にチャレンジ.
ここで「やめとけ.中二病か」と叫ぶで.

第一撃は見事に失敗し反撃をくらい乱闘へ.
あーおしゃれな部屋がぁー,家具がぁー.
身近の刃物や鈍器で反撃し,ボロボロになりながらもなんとか倒す.
仕上げに口の中に毒物をアンプルごとつっこんで終了.

※続編も同様だが,このシリーズ,基本的に暗殺が暗殺になっていません.

この弟子一人にはまかせておけんと思ったのか,次のミッションは二人でチームプレイ.
ここはアクションシーンを求める視聴者へのサービスパートやな.

今度は怪しい宗教指導者がターゲット.
いつものごとくザル警備の中を部屋に侵入,壁に潜伏.
どうやら説法前に麻薬(ケタミン)を使ってトランス状態になることが習慣化していたようで,正直いつ死んでもおかしくない状態.
ただし,ケタミンは暗殺のために用意したアドレナリンを中和してしまう(たぶん)ので計画が狂ってしまった.
ミッション中止を提言するスティーブンに,ステイサムはファイバースコープをノドにつっこみ窒息死を図る.

※このシリーズ,基本的に暗殺が暗殺になっていません.

脱出のタイミングを計るため,再び壁の中に隠れる二人.
異変に気付いた部下たちが部屋に乱入.
スティーブのミスで,ネジが壁の外に転がり,存在がバレてしまう.

ここからは銃撃&格闘戦.
主人公補正でステイサムとスティーブには弾が当たりません.
それにしても,この二人は覆面もせず,顔出しすぎ.
この世界では顔写真一枚あったら,すぐに検索されて身元がバレる設定やのにな.

なんやかんやでロープダイビングでビルから逃走.
別々の飛行機でアジトへの帰還を提案するステイサム.
何を今さら感.

さて,空港にてステイサムは「師匠」の裏切りによって死んだはずのメカニックを見かける.
不審を抱いて後をつける.
まぁ,だいたいこのあたりで真相に気づいてきたかも.
バスの中での質問から乱闘へ.
スーツケースの仕込み刃をかわし,バス内の備品を使って反撃.
もちろんその力量差からステイサム圧勝!
バスから放り出された敵はクルマに轢かれて死す.
大騒ぎの空港から悠然と立ち去る.

※このシリーズ,基本的に暗(以下,略)

自宅へ向かうボートが置いてある桟橋に着くと,舟番のおじさんがいない(わかりやすい描写).
そこへクルマでどやどやと乗り付けるザコ.
暗殺のプロ集団設定はどこに...
お約束通り,ちょちょいのちょいとステイサムに返り討ちにあう.
これまたお約束で,電話をかけると「雇い主」が出,ステイサムに脅され返されてしまう(死亡フラグ).

一方,先にアジトに着いていたジェームスはリビングにて,これまたザコ手下どもに囲まれている.
ステイサムから電話で隠し銃のありかを教えてもらうとザコどもを一掃(レベルあがりました!).

「殺られる前に「雇い主」を殺る」というステイサムに装備の準備を頼まれるジェームス.
クルマのガレージで,何と親父(師匠)の“白い拳銃”を偶然見つけてしまい,ステイサムを疑い始める.
どうしてそんな所に置いといたー!

記憶していた指輪のデザインから「雇い主」のボディガードの自宅を突き止め,その妻子をネタに.「雇い主」の居所を教えろと強迫するステイサム,
娘の手をミキサーにかけようとするシーン,今作のステイサムならやりかねん(やってないけど),と思わせるのは上手い.

ここからのクルマの中での,ステイサムとジェームスの会話が良い.
これから重要なミッションとなるが,二人の息が合っていないと成功しそうにない.
遠回しに遠回しに探りを入れるスティーブ.
バレていることに気付いているが,気付いていないフリをしているステイサム.
どちらかダイレクトに告白してしまえば,車中で殺し合いになりかねない.
ここは俳優の演技力が試される名場面ですな.

そこでKazchariは想像した.

ラストバトルで「雇い主」がジェームスに真相を話してステイサムを裏切らせようとするシーンがあって,でもここに至るまでの二人の思い出がよみがえっての葛藤,ステイサムも「お前ならオレを撃ってもいい」とかなんとか言って,スティーブが「撃てませ~ん」とかバナージるシーンを...

いやいや,全くそんなベタにならなくて良かった.

そんな妄想はさておき,「雇い主」のアジト着.
ビル内での銃撃戦かと思いきや,それはさっきやったということで,今回はド派手なカーアクションへ.
ステイサムと言えば,こっち...いや,今作は確か暗殺が本業...

ゴツい護衛車両数台でどこかへ逃げようとする「雇い主」.
まず,ステイサムが乗用車を護衛車両に横からぶつけて隊列を乱す.
すかさずフィークリフト付きトラックに乗り換えて,「雇い主」のクルマを追う.

前方から,盗んだバスを運転するスティーブが突撃!
挟み撃ちにあった「雇い主」のクルマはなんやかんやで横転.
そこへ銃を構えた無傷のステイサムとスティーブ.

もちろん情けない命乞いや,先ほどの妄想にあった「そいつが親父(師匠)のカタキだぁ!⇒葛藤」みたいな展開も全くなく,「雇い主」はあっさりハチの巣(どころか撃ち過ぎ).

※ここはアメリカの都市部です.どこが暗(以下,略)

さて,ここからいよいよクライマックス.

アジトに戻るクルマの中で今後について話す2人.
ステイサムは名前を変えて潜伏生活に入るという(ブラジルに行くわけですな).
スティーブは未定.一人でメカニックとしてやっていける?
相変わらず探り合いは続く.

しかし,この時のスティーブの行動が興味深い.
まず,例の“白い拳銃”をステイサムにわざとチラ見せ.
「落とし前をつけないと先に進めない」という決意めいた言葉を呟く.

ここから,スティーブによる師匠,ステイサムへの“お試し”が始まる.
立ち寄ったガソリンスタンドにて買い物にかこつけ,クルマから降りるスティーブ.
給油口からガソリンをわざと漏れさせ,ステイサムを火だるまにする作戦.

数回「これが最後だ.必要なモノはないか」と尋ねる.
ここ,実に良い.
スティーブの「凄腕の師匠を倒したいけど,倒したくない」的な二律背反心情があふれている.

もちろん,ステイサムもこれから自分が殺されることはわかっている.
自分の師匠,つまりスティーブの親父を殺してしまったことへの呵責もある.

スティーブ,拳銃でステイサムが乗るクルマを撃ち,爆発・炎上させる.

スティーブは1人で,まだ死体が転がるアジトへ戻る.
ステイサムを殺したことを後悔しているような悲しい表情.
ここはあれですな,2代に渡る師匠殺し後の後悔を重ね合わせているわけですな.

ふと思い立ったように,隠し扉が開く秘密のレコードをターンテーブルにセット.
そして,納屋にあったクラシックカーで旅立つスティーブ.
なかなかエンジンがかからない...まっまさか...

と,無事エンジン始動.
ここで一旦視聴者を安心させてからのぉー...ドカーン!

クルマも家も大爆発.
爆発の少し前,助手席に置いてある手紙に気づくスティーブ.

そこには「これを読んでいるということは,お前はもうじき死ぬ」と書かれていた.

読んだ後,スティーブがニヤリと笑う.
その表情は明らかに「やっぱり負けたか...」と語っていた.

後日,ガソリンスタンドの防犯ビデオに燃えるクルマから脱出するステイサムが映っていた...別にこのシーンはいらんけど,『ワールドミッション』でも同じ終わり方してたな.

はい.つーことで,能天気な続編よりも一作目の方がシリアスで面白かった..
ツッコミどころ満載なのはどっちもどっちですが.

色々,調べていて知ったのだが,『メカニック』という作品そのものがリメイクだったらしい.
オリジナルの主演はなんとチャールズ・ブロンソン.
髭に帽子でマンダムなブロンソンですよ.

こちらは未見だが,キャラ造形的にも適役.
偶然知ったが,こちらはラストシーンが異なるらしい.
ということは...ゲホン,ゲホン.

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