『ファースト・マン』を観た

2019/11/28

ファースト・マン (字幕版)

(以下,内容に触れます)

ZwiftしながらAmazon Prime videoで『ファースト・マン』を観た.

月面に最初に降り立った人類,ニール・アームストロングの伝記を基にした映画である.監督は究極のパワハラ映画『セッション』,昨今のミュージカル映画(アニメを除く)では最大のヒットとなった『ラ・ラ・ランド』で一躍有名となったデイミアン・チャゼル.

セッション(字幕版)

ラ・ラ・ランド(字幕版)

とは言え,Kazchari,実は『ラ・ラ・ランド』は途中で挫折した(観るのをやめた).なんだかなぁ...登場人物の思考,行動が不快にしか思えないというか...映画館なら最後まで耐えたかもしれんが,これまたAma-Priだったので.
一方で『セッション』は良かった.スポ根映画の定石をことごとくブチ壊し,最後のあの表情!圧巻でした.

そんな監督の最新作が『ファースト・マン』.上記2作とも全く違った雰囲気.宇宙物にありがちな壮大・荘厳なBGMや,何らかの救助ミッションが成功して,大歓声の中,コントロールルームでみんなが抱き合うといったシーンは一切ない.クライマックスになりがちな地球帰還時の着水もない.それどころか,宇宙空間に浮かぶ船を“外から”撮ったシーンすらもほとんどなく,基本的に超狭苦しい(拷問か)コクピットの小さな窓から見える青から白,黒へ変わりゆく景色,アナクロなメーター類,凄まじい振動と爆音など宇宙飛行士目線の中心に描かれる.ここがまず新鮮.
ストーリーも重苦しいシーンの連続.笑っている人がいない.そしてやたらに死ぬ.
エンタメ性皆無.そりゃヒットしないわな.

この映画の前に,Eテレの地球ドラマチックで「アポロ11号~人類が月に降り立った日~」を観たばかりだった.乗組員3人のうち,司令船操縦士で月に降りなかったマイケル・コリンズ(今もご存命)のインタビューなど興味深い内容だった.
コリンズさん,探査船着陸中は地球と月の間でたった一人.曰く「最も孤独な人類」と言われていたそうで,番組の取材でも「アームストロングとオルドリンが月から戻ってこなかったら,二人を見捨てて地球に帰還していましたか?」という質問に「YES」と答えている.その他,当時の社会情勢や着陸時の苦労(マニュアル着地した)など,『ファースト・マン』とかぶるシーンがたくさんある.
他にも岡田斗司夫のYouTubeチャンネルのアポロ特集など,事前情報をたっぷり仕入れた上での鑑賞でした.おかげで事実とフィクションがごっちゃになってしまったけど.

いずれにせよ,この映画の本筋は“前人未到のミッションをやり遂げた科学の勝利”“人類の不屈の魂賛歌”ではなく,極めて個人的な人間ドラマ,特に夫婦関係にある.
戦場を始め,死が常に身近にあるような仕事を転々とした半生に加え,自分ではなく幼い娘が脳腫瘍でなくなるという悲劇から,安心・安全な人生,他者との関係に安らぎを求めるような人生から一歩引いているような態度をとっているように思える主人公.そんなアームストロング役を演じるのはライアン・ゴズリング,台詞がほとんどなく,顔の表情や話し方だけで複雑な感情を全て表現している.そういや『ブレードランナー2049』でも,表現方法は違えど,根底は同様の役作りだったなぁ.あちらはレプリカントだが.
奥さん役のクレラ・フォイも上手い.常にイライラしている.何を考えているのかよくわからない夫を,理解したいけどしたくない.そんな心情がよく伝わる.

ブレードランナー 2049 (字幕版)

Kazchariもヨメを日本に置いたまま2年間ジャマイカに赴任した.出発前そして帰国後,一時期この映画の夫婦と似たような状況だったような気がする.この微妙な夫婦関係を描いた映画,ヨメに薦めたいような薦めたくないような...ちなみにアームストロング夫婦,アポロ計画の数年後,38年間の結婚生活にピリオドを打っているそうな.

これまで月に降り立った人類は12人.最初の2人の他はあまり知られていない.そして1972年のアポロ17号の着陸以降,47年間月には誰も行ってない.トランプさんは計画再開を宣言しているが,果たして...

この世界のようになるのか?

MOONLIGHT MILE 1stシーズン -Lift off-

こっちの計画も再開熱望.

てなわけで,ロマン度外視の真面目な宇宙物『ファースト・マン』.オススメです.

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