Killing Fieldへ.
1993/4/1 Thu
このベッドには何かがいる!
昨夜は非常にかゆかった.なかなか寝付けず,すごい寝汗でTシャツベトベト.爪には自身の垢と血.自家発電器と車の騒音はうるさい…と文句を言いながらも,宿を変える気がないのは Cheapest Hotel 故なのか.
入手した情報によると,本日タケオでは自衛隊の歓送迎会が行われているらしい.そのような場所にのこのこと出かけるわけにもいくまい.カンボジア出国予定日の5日までには何とか訪問したいものである.
「Capitol」にて新しい朝食の組み合わせ,素パンとオムレツのセットを食う.そしてUS$1にて自転車を借りる.今日の用事は「Killing Field」散策である.市街地から15Kmの地点にそれはある.
整備不良でサビだらけ,ギコギコと異音の多い少々ひんまがったチャリにて,カブと自転車の群をかいくぐり,並木道をのんびりサイクリング…というわけにはいかない.ほとんどが砂地か簡易舗装の凸凹道.おまけにクソ暑い.この暑さにはやはり慣れない.
やがてLonely Planetで見覚えのある塔が見えた.門らしきものもあるが,常に開放してあるようだ.チャリを止めて塔に近づく.これがまた…何と形容してよいのか…ガラス張りの塔の中には骨,骨,骨…この地で虐殺されて埋められた人の頭蓋骨が数段に渡って“陳列”してあるのだ.いや,これが“供養”なのである.
塔のそばの地面には大きな穴がいくつもある.覗く.大腿骨なのか,長い骨が地面の底から数本飛び出している.服があちこちに見える.“中身”は土に還ってしまったのだろう.
ツールスレーンでもそうだったが,こういう場所に来ると嫌でも戦争や生命について考えてしまう.街への帰り道,思い出すのは,昨日『Capitol』に物乞いに来た両足の無い人のこと.のんきに観光旅行している自分が嫌になる.
「そういうことはなぁ,この国の問題だからほっとけ」と誰かが言う.確かに自分の問題として置き換えて悩む(ふりをする)のは,傲慢かもしれない.しかし,それでも…
「Capitol」に戻って昼食.ベトナムから来た旅行者にラオス情報を教える.その人からはサイゴンやハノイの情報を聞く.さんざんしゃべりまくった後,二人で例の70番ストリートを“見学”に行くことになった.幸いチャリもある.二人とも度胸がないというか,思慮深いので陽が落ちる前に出発.
なんてことない住宅街の角を曲がると,道の両脇に延々と並ぶは置屋の列.「店」の前では派手な衣装を着た「白塗りの化け物」(としか形容しようがない)が,チャリに乗った我々に嬌声を上げ手招きをしている.マジで恐怖を感じた.運転していた旅人も同じ様に感じたのか,いきなり激コギでダッシュ! 左右前後から襲いくる「化け物」どもを必死にふりほどき,ようやく通りを脱出した.ゾンビ映画か! おいおいマジでこんなところに毎晩来るんか,好き物旅行者諸君?(その21へ)