ベートーヴェンはロックらしい

2020/7/3 Fri

確かに当時の価値観からすると

ヨメさんは業務上,車での移動時間が長い.
その間ラジオをよく聴いている.
ある日,NHKのクラシック音楽番組内で「ベートーヴェンはロックだ!」という視点からの放送があり,すこぶる面白かったそうな.

Kazchari自身はその番組を聴いていないので詳細は不明.

想像するに「これまで貴族にパトロンになってもらい,耳さわりの良い宮廷音楽(BGMもしくは練習曲)を依頼されていた,それまでの音楽家と違って,ベートーヴェンは貴族に媚びず,自分が理想とする音楽を作り続けたみたいな話」だと思われる(たぶん).

ようするに,曲調がロックっぽい(先進的)ということだけではなく,体制・権力批判的な態度も含めて“ロック”という趣旨だったと思われる.

で,そのロックなベートーヴェンの曲,ベスト3を紹介するという流れだった模様.
その3曲,確かにロックだ.色んな意味で.

【第1位:交響曲第7番第4楽章】

これは大ブームとなったドラマ『のだめカンタービレ』で何度も演奏されていましたな(これとブラームスの第1も).
曲名は知らなくても聴いたことがあるという人は多いはず.
そもそも日本におけるクラシック音楽の知名度は,副題がついているかどうかに左右される.この「第7」なんて正にそう.
リズム重視のこの曲は第1楽章からとにかくノリが良く,クラシックというジャンルに興味がない人も,まず“のれる”でしょう.
ワグナーなんかは「舞踏の賛歌」「バッカス(酒神)の乱舞」とか評している.
ちなみに無名つながりで言えば,次の交響曲第8番も名曲.これまたリズム重視でノリノリなので併せてオススメ.

【第2位:交響曲第9番第4楽章】

これはまた言わずと知れた超超有名曲.年末BGMの♪フロイデシェーネルゲッテルフンケンである.
ただし,あの後半の合唱パートのみが「第九」と思い込んでいる日本人のなんと多いことか.
創作かもしれんが,ある日本企業のエライ人,コンサートにて約70分の交響曲第9番を全曲聴いた後,秘書に「いやぁ,第九は実に良かった.ところでキミ,歌の前に長々とやっていたあの音楽は何かね?」と尋ねたそうな.
第9の第1楽章から第3楽章は様々なタイプの人生を表現しているというのは有名(?)な話.

あくまでKazchariの印象だが,

第一楽章⇒理不尽な状況に立ち向かい,波乱万丈かつ悲劇的な人生
第二楽章⇒忙しくて振り返るヒマもなく,ただ走り続けた人生
第三楽章⇒ひたすら牧歌的.何もなさず,何も冒険もなく平和に過ごした人生

異論は認める.
第4楽章の冒頭では,まずそれぞれの楽章のモチーフが流れた後,それを否定,打ち消すような音がかぶさってくる.ただ,第三楽章だけは,もうためらってためらって,この暖かでのんびりした人生を全肯定し「まぁ,これでええか」と納得してしまいたくなる…「だが断るっ!これも違うっ!」っと吹っ切る様子を音楽で表現しているのがスゴイ.むしろ文学.もしくはゴダイゴの『銀河鉄道999(2番)』

そして流れる例のフレーズ.「これだ!これだ!」と音楽が喜び,ここからシラーの詩を基にした合唱が始まる.

残念ながらクリスチャンではないKazchariには,その言わんとしているところを完全に理解するのは難しい.
シラーの原詩にせよ,第九の歌詞にせよ「個人のこだわりを越えて,自己の満足だけでなく他人を愛し,神の前で一つになれ」的な,または夏目漱石の「則天去私」の心境を語っているように思う.

うーむ.あくまで西洋思想がベースであるなら,反体制的なロックとは言えないのでは...

むしろあれか,初演の時のエピソード.
既に聴覚をほとんど失っていたベートーヴェン.指揮者台に立つものの,オーケストラの団員はベートーヴェンの横に立つ弟子の方を見ながら演奏.
ベートーヴェンはひたすら自分の心の中にある音楽をベースに,妄想の楽団に向かって一心不乱に指揮しつづける
実際の演奏が終了しても,ベートーヴェンは指揮を止めないっ! 彼の“第九”はまだ終わってないのだっ! おお,確かにこれはロックだ!

【第3位:交響曲第三番「エロイカ(英雄)」】

ヨメさん情報によると,番組ではかの有名な「英雄だと思っていたナポレオンが皇帝に即位したと聞いて激怒したベートーヴェンが,ナポレオンに捧ぐと書かれた部分をペンで塗りつぶした」というエピソードを紹介していたらしい.

Kazchariは曲そのもののロック的要素を取り上げたい.

第一楽章のコーダ(いわゆるサビ)で,トランペットが高らかに鳴るのだが,どうもここのパート,現代楽器なら問題なく鳴らせるらしいのだが,作曲当時の楽器では音域が高すぎて演奏不可能らしい.ゆえに,古楽器演奏(当時の楽器で演奏)のCDでは音が途中で消えてしまうのだ.
これはベートーヴェンの作曲上のミスではなく,わざと
曲の意図を表現するには,ここは最後の最後までトランペットを鳴らすべきだ.楽器の構造上の限界なんぞ知らん!ということらしい.ロックだ.

以下の動画だと,トランペットが消えるのがよくわかる.

とまぁ,音楽に関するうんちくを垂れ流していますが,実はKazchariは楽器がひけない楽譜が読めない,ついでに救いがたい音痴である.
しかしながらクラシック音楽が好きである.
まぁ,曲そのものにも魅力を感じるが,作曲にまつわるエピソードや,作曲家本人(見事なまでに変人ぞろい)がすこぶる楽しい.

ちなみにうちのヨメさん,幼少期にピアノを習い,高校時代はブラバンに所属歌も上手いという音楽の才はあるのだが,Kazchariとは反対に知識は適当.興味の方向性が全く異なる.

え,エロイカって「英雄」のことなん?」にはずっこけた.

よせばいいのに,朝の忙しい時間に上記の解説を始めてしまった.

にらみつけられるKazchari.文字通りのヤブヘビ.
くわばらくわばら.
パパレホパパレホドリミンパ.

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