キメツとテノゲカ

2024/10/9 Wed

外科医が最も必要とされる場所

昼間,息子の通う小学校から電話があった.
授業中に突然腰が痛くなり,座ってられなくなったとのこと.
なんだかよくわからんが,仕事を抜けて迎えに行き,そのまま受診することにした.

学校に着くと,痛みでうなっているとかはなく,普通に会話し歩いている.
息子曰く,座ったり前かがみになると痛むらしい.

筋肉痛? それともまさかの内臓系?
うちの息子,週2,3回(ハードな)ラグビー練習してるしなぁ.
思いあたることだらけ.

とりあえず行きつけの小児科に連れて行く.
受付で症状を話すと「すいませんが,整形外科に行ってください」とまぁ門前...いや,仕方がない対応.
次に,Kazchariも通院歴がある某整形外科病院へ向かう.

レントゲンを撮ったり,簡単な問診の末,「おそらく筋肉痛でしょう.鎮痛剤と湿布出しときますね」で終了.とりあえず安心(そうか?).

で,会計のために待合室で座っていると,ふとテレビ下の本棚を見るとコミックの単行本が並んでいるのを発見.なぜか2作品のみ.

1つは言わずと知れた『鬼滅の刃』全巻.

鬼滅の刃 1 (ジャンプコミックス)

うちにもあるのに手に取る息子.
まぁ,何回読んでも面白いわな.

その隣に並んでいたのが白背表紙の見知らぬタイトル.
カタカナ四文字だ.

「テノゲカ」とある.
うん? まさかの「手の外科」のこと?

テノゲカ (1) (少年サンデーコミックス)

「手の外科」とは,整形外科の中でも主に肘から先の治療を専門とする領域.
言うまでもなく手の機能は複雑で繊細.
解剖学的にも小さな筋肉,靭帯,神経,血管が入り乱れていて,損傷時の手術には最高難度なテクニックが必要な分野である.
マイクロサージェリー,つまりルーペを装着しながらの微細な血管や神経の縫合シーンを,ドラマで見たことがある人も多いだろう.

こんな感じのヤツである.

Spark 眼鏡式ヘッドルーペ 2.8倍歯外科手術手作業専用

最近はこうした医療系コミックも細分化してて,外科や精神科などのわかりやすい分野以外にもフォーカスをあてる作品が増えてきたな.
たとえば産婦人科医の『コウノドリ』とか.

コウノドリ(1) (モーニングコミックス)

一応,Kazchariもこの「手の外科」分野のリハビリに関わってきた身.
興味深く手に取る.

ふむふむ.
第一話は交通事故による右手前腕切断の再接合か.
監修がしっかりしているのか,解説が丁寧
これは勉強になるなぁ.

主人公(手塚一心)は”手”の天才外科医という設定なのだが,その理由付けに無理があるようなないような...

第一話のラスト,一心のテクに嫉妬した先輩医師たちが院長(主人公の養父)に,「なぜあいつだけガー」「我々の面子ガー」とクレーム直訴.

そこで院長が問う.

「整形外科医がもっとも必要とされている場所はどこだかわかるかね?」

答えは...戦場.

なんと,一心は18歳でフランスに渡り,医師?として数々の戦場に従軍し,傷病兵の治療をロクな設備もない過酷な環境で行ってきたのだったぁ!(お,おぉ...)
それを聞いた先輩医師たちは黙るしかない.

医師とセラピストでは立場が全然異なるとは言え,青年海外協力隊員だった頃,赴任先のジャマイカにて「ロクな設備ないし,医者もおらん」と文句ばかり言ってたKazchariも反省(ウソ).

と,一話まで読んだところで会計に呼ばれたので,以降どのように話が展開されるのか知らない.
もちろん主人公の過去が徐々に明らかになっていくのだろう.

単語のみだが,本編中に「作業療法」が出てくる.
となればリハビリ場面も描写されていると期待.
そう,手の外科のリハと言えば作業療法士の出番なのだ(理想はハンドセラピスト)

イマイチ知名度が低い我が職種.
このコミックが大ヒットして,アニメ化やドラマ化されば,一気にメジャーに...ならんか.

その昔(1996年)『君と出逢ってから』というドラマの脇役で段田安則さんが作業療法士を演じていたことがあったが,何の話題にもならんかったという前例もあるし.

こうした内容のコミックが,整形外科の待合室に置いてあるのも面白いが(先生の私物?),よくよく考えれば『鬼滅』と並んでいるのが実にシュール.
なんせあちらは鬼,鬼殺隊問わず,手やら足やらがバシバシ切り飛ばされる漫画である.このギャップよ!

それにしても,こんなコミックがあったとはな.
全く知らなかった.
GEOでレンタルしているようなので借りに行くか(買えよ)